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「ねえ、待って」
声をかけた。てくてく、と目の前のその人は進んでいく。「待ってったら」 聞こえない。そんなこと知っていた。大きく息を吸い込んで、吐き出す。「まっ……」 さっきよりも大声で。「…………」 そんなことをしても、なんの意味もない。知ってるから口ごもった。てく、てく、てく。その人は一歩一歩、進んでいく。
真っ暗な夜だった。ざわざわと葉がこすれる音ばかりが聞こえて、ほう、ほう、と鳥の鳴き声が木霊する。彼の隣に並んだ。僅かに顔を上げると、まっすぐに前を向いて、さくさくと落ち葉の間を踏み続ける彼の姿が見えた。は、と吐き出す息は、わずかに白くてほどけるように消えていく。「テッド」 ほう、ほう、と声が聞こえる。
ずっと一緒にいた
「なんでそんな寝汚いの」
ちょっと理解ができないな、とこっちに背中を向けながら、ぴらぴらページがめくれる音がする。「なんでと……きかれれば……」 考えてみた。「眠い、ので?」「きみ、人間じゃないんだからそういう欲求の対象外だろ」「そんなことも」 あるかも?
よくわからない。ベッドの中で転がって、ぱんぱん、と両手を叩いてみた。音がする。「なにしてるの?」「手がある」「だったらさっさと起き上がって」 パンツくらい履きなよ、と投げ捨てられた。
ぱしん、と顔にひっついて、そのまま落っこちた下着を持って、よっこいせと足を通す。「うぼ」 後頭部をベッドに打ち付けた。「ソウル」「んんー」「なんか、うなされてたけど」「うーん」
「いやな夢みた」
自分がいるのに、いない夢だった。
ほう、ほう、と鳥の鳴き声が聞こえた気がした。ふうん、と
が笑うように頷いた。
「紋章って夢も見るんだ」
「見るよう」
「まあ動物でも見るっていうし」
「動物ちがう!」
「じゃあ裸で寝るのいい加減やめたら」
「だってが着せてくれないもん」
脱がせるばっかりなんだもん、と怒ったら、やっぱり無視して本を読んでた。