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マント一枚を羽織って、自分の後ろをてとてとと歩いている。
こめかみを擦った。あれは自分のマントだ。いきなり出てきた少女は、自分がソウルイーターだと名乗った。あまりにも強すぎる魔力のために、人の形をしてしまったのだと。
嘘だと思った。そんな話は聞いたこともない。人の中で生きることが苦しかった。自分はテッドほど強くはない。いつか右手に巣食った悪魔が殻を破り、喰ってしまうのだ。逃げた。途方もなく逃げた。人里を離れて、ただただ日々を過ごした。だからだ、やはりあれは人が恋しくなってしまった、都合のいい幻覚なのだとそう思った。とっぷり暮れた山道を歩き通して逃げた。そのつもりなのに、「、」とか細い声が聞こえてゾッとした。
あれはただ、マントが風に揺れているだけだ。狂った自分が夜の闇の中でふと人の背丈ほどもある木と語らいたくなった。それだけだ。
声を掛けてはいけない。認めてはいけない。認められるわけがない。息が荒くなるほどに走って、飛び降りた。このくだらない呪いのせいで、ちょっとやそっとでは腹も減らない。「…………う」 嗚咽が漏れた。
気のせいだと、そう思いたいのに。
冷えた風が耳の裏をかき分けていく。丸まった。そうして額を地面につけると、どこか遠い場所に消えてしまえるのではないかと錯覚した。足音が聞こえる。素足で、ぺたぺたと土の上を歩いて、肩で息を繰り返す。それはゆっくりとしゃがんだ。それから何かを戸惑うようにして、おそるおそる手を伸ばす。やわらかく、頭を撫でられた。嗚咽が聞こえた。
誰のものなのだろう。小さな手のひらが、くしゃくしゃと自分の頭を撫でている。
くしゃくしゃと。
***
擦り傷だらけのそれの足を、敢えてみないふりをした。
それはときおり歩きづらそうにして、てとてととこちらのあとをくっついてくる。あんまりにもくしゃみを繰り返すものだから、服を渡した。パッと瞳を明るくして、ぶかぶかの袖を通す。それからまた勝手にマントを翻して、嬉しげに両手を動かしている。
ため息をついた。
少し休んで、また少し歩きだす。森の中はもう飽きた。木ばかりが見下ろすものだから、こんなおかしな幻覚を見るのだ。薄くなったソウルイーターのアザにはもう気づいていたのだけれども。
腹の虫が盛大になっている。自身ではない。
「…………おなかへった」
ぽんぽこと腹を叩くそれを、奇妙に見つめた。「食べる必要って、あるわけ?」「わかんないけど、ぐるぐる言う」 だからおなかへった、と腹を撫で回す少女を見る。「もごはん、食べようよ」 このところ、自身は腹が減らない。「…………いらないよ」「うそだー」
けらけらと、彼女は笑っていた。