いってらっしゃいませ、とご主人様を見送って。
ご飯の買い出しに行かなければならないな、と思った。


第17話  凄いヤツもいたもんだ




うふふふん、とお財布片手に廊下をルンルンスキップ。こないだはどっかのサザエさんの如く、お財布を忘れ、ご主人様にヘルプコールを出したなんて情けない話があるけれど、今回は違うのです、学習です、しっかりと学習いたしました。

バッチリと確認したお買い物セット。イエイ、とビシリとした一人ポーズはとっても寂しく、ふーっと出したため息は冷たい煉瓦造りの廊下へと吸い込まれる。


目の前にあるエレベーターのボタンをぽちりと押して、チーン、と響く音をしっかり確認。
横にスライドしながら開く扉の中へと一歩足を踏み入れようとしたその時だった。

「あ、すみません」

何だかんだいって気配やらなんやらに敏感な方(だと思う)自分。
後ろから近づく気配に「どうぞ」といった意味合いで場所を空けたものの。


………目の前を通り過ぎるのは、一匹の、犬


「……シュタイン?」

それは微妙に認めたくない事実ですが。



一瞬こっちにちらりと顔を向けて、ぱたりと尻尾を振った彼は、まさに。


「シュシュシュシュシュ、シュタイーン!!?」



うぃーん、がちゃん。ごごごごごー


自分の心の叫びなんてなんのその。自分とシュタインを切り裂く鉄の壁は、しっかりぴっちりと閉まってしまい、硬い機械音が流れたと思うと、そのままゆっくり下へと下降しつつ、どんどんシュタインが小さくなっていく様はなんとも、なんとも


「わんこって、エレベーター乗れたんですね」



ぼけーっとした頭が出した素直な感想。
うわぁ、凄いなぁ。
…ではなく。



取り敢えず、オリンピック選手もビックリな速さで駆け出す自分は何してんでしょうか、と思った。





  


2007.01.16