予告




とん、かん、ころころころ………
アスファルトの地面へと転がる小さな石っころは、彼女の足にひっかかり、ころころとその奇天烈な身体を回しながら、奇天烈に道を進む。
とん、かん、ころころころ………

彼女は背に開いた大きな傷を片手で、まるで身体を抱きしめるかのように掴み、ぐいと身体を寄せた。時折口元からはき出される鉄臭い息は、自身でも気持ちが悪いらしく、喉の奥にタンのようにからまった血のかたまりをぷ、と口から吹き出した。ぐちゃりと地面についた赤い臓物にも似たそれを、足の裏で踏みつぶす。
彼女は酒にでも酔っているかのように身体をゆらりとふらつかせるが、ただ足下がおぼつかないだけであって、何に酔っている訳ではない。敢えていうのであれば血に酔っていた。

瞼の裏からは絶えず涙を流し、ハァ、とまた息をつく。


「逃げちゃだめだ」

彼女は、また同じ年頃の少女へと、手を伸ばした。白い肌によく似合う、肌色のセーターが、己の手にしたたる赤い血によって丸く汚らしい汚れを作ってしまった事に、一瞬眉をしかめたが、腕の力は変わらず、少女をじぃと見詰めた。

振り払うような少女の、もう片方の手のひらを、ぎゅうと握り、大丈夫、恐くはないよと呟きかける。


「一緒に、いきましょう。綾先輩」


光りが、爆ぜる



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アトガキ

2007.02.21 書き直し
2008.10.20 再び書き直し