阿羅漢になれぬ者




目を、開いた。
突き刺すような太陽の光の中で、私はパタリと手と足を大の字に開きながら、砂に埋もれる。さらさらと風が吹くたびに音をたて、髪の隙間へと彼らは入り込んだ。
ざー……と、砂を流し込んだかのような波の音が聞こえ、ふいに、ずきりと傷が痛み出す。熱い。けれども暖かい。
見える事のない片方の目をしかめ、随分前に、はぐれではない魔物に、瞳をえぐり取られたのだと思い出した。


「…………様?」

何度も聞いた、抑揚のない声が聞こえた。妙に眩しい。光が目にしみる。なんでだろうと顔に当たる日を手で覆おうとした。そのときふと気づいた。「…………あ、ローブ……」 どこかへと、消えていた。それなのに、どうして私だと分かるのだろう、と思った。けれど、よくよく考えてみれば、クノンさんには、何度かローブをひっぺがされたこおがある。

駆け抜ける複数の足音に、「にいちゃん!」とナップ君が滑り込む、あれ、とちょこっと首を傾げて、「あ、やっぱりにいちゃんだ」続く子ども達に、大人。
手当を、とヤードさんが私の手を取り、「さん」と呟く。何故だか、ジャキーニもいた。見事なヒゲをゆらして、「うおおおう!」と叫ぶ。

さん」

赤い髪の彼女と、同じ色をした青年が、ゆっくりと、のぞき込んだ。
暖かいなぁ、と涙が出そうになった。
たくさん、いなくなっちゃったなぁ、とまたふいと考えた。
「……じゃ、ないんです」

震わせた喉の声に、ピタリと彼らが止まる。
声を取り返し、私はオルドレイクの召喚獣ではなくなり、そして
(管理人……)

って、いうんです…………」



ゆっくりと、目を閉じた。
せめて今だけは、ゆっくりと眠りたい。
眠りたい。
        会えるだろうか。
(……誰に。…………何に)


あの茶髪の彼はいない。元の世界に還ることが
降り積もった何かは、確実に跡を残した。古い何かを、ちょっとを残し、埋め去った。とん、と乗せた足で、また跡をつけていいのだろうかと、なんとなく、私は上を見上げる。
空は青く、亜羅漢になる事のできない私は、多分、これからずっとずっと、流されていく。
自分の出来る事を精一杯。ただそれだけの事なのに、なんでこんなに難しいんだろう。


先輩がいたら、どういってくれるのかなぁ、と
ただそれだけを考えて、眠った。

(私の名前は、って、いうんです)

聞こえる波の音は、どこか体内の鼓動と、よく似ていた。





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おつかれさまでした!
2008.10.19