「お前くさいぞ」 あまりにも見てくれが寒かったもので、のお古のパーカーに身を包んでいたソルは、「なにをいっているんだこいつ」とでもいいたげに首を横にかしげた。 その姿を見て、ソルの首筋辺りへとは鼻をひくつかせる。 「やっぱくさいって」 「そうか? これくらい普通だろ」 「普通って何処基準だよ。銭湯とか、あー、金がないのか」 普通だ。と自分の周りに鼻をくんくんとさせながら「冬なんだし、マシだろ」と平然といってのけるこの少年に、一瞬は目眩がした。 こいつはどこの金持ちのお坊ちゃんだ! と考えた事もあったが、今ではそんな事ありえないと首をぶんぶんと横に振る。「お前意外とワイルドなのいい加減にしろよ」といえば、「わいるど?」とまた首をひねっていた。日本語が通じん上に、英語も駄目なのかこいつは! 「あー、もういい。ちょっと来い」 「なんだよ」 「つべこべいうな」 ベンチに座りっぱなしのソルを無理矢理立たせて、そのまま腕をひっぱり進ませた。「なにすんだよ」と低く聞こえる声も無視して、は歩く。 ソルが持つ長い杖があまりにも悪目立ちしていたが、そこは見ないフリをした。 ずるずると一方的に引きずる形になっていたはずなのに、いつの間にかソルとは並んで歩く。「どこに行くんだよ」 ソルは聞いた。は答えた。 「俺んちだよ、バカ」 がたん! と曇った磨りガラスの向こうから、何かにぶつかるような音と一緒に、男の叫び声が聞こえた。ガラスへともたれる形であぐらをかいていたは「何してんだ、一人で風呂も入れんのか!」 「いや、ちょっと石けんで滑って」 「お約束な事をすんな」 濡れた頭のままにゅっ、と顔をのぞかせたソルに、は真っ白いバスタオルを投げつけた。「うわっぷ」ばさりと被さる形になり、立ち上がったは自分よりも少し高い身長の彼の頭をごしごしとふく。 「いてぇって、ヤメロよ」 「ええい、なんで俺がこんな事せにゃならんのだ」 「だから自分でできるっつの」 「風呂も沸かせんバカのいう事は信用できん」 「だってこんな、ロレイラルの、痛い、いたいっつの」 ほんの少し濡れて、ぺったりとくっついた髪の毛をじいっと見詰めた。何をやっているんだ、自分はと小さく心の中で呟いて、は大きめなため息を吐いた。「今日から、冬休みなんだよな」「フユヤスミ?」 バスタオルの中から顔をのぞかせて、尻を上げた声を呟いたソルを、もう一度タオルの中へと無理矢理うずくめた。 「お前、俺んち泊まるか」 休みの間だけって、母さんに頼んでやるよ。 1000のお題 【962 せっけんの匂い】 BACK TOP NEXT おそらく下は丸見えでしょうな(ちょ、お前) 2008.08.12 |