このお話は、「空から降ってきた」のちょっとした続編です。 はぴらりと教科書を捲る。 使う教科書は、しっかりと三年生のものだった。彼の友人であるトウヤはリィンバウムと呼ばれる世界へと旅立ち、同じくソルと呼ばれる、(たぶん)友人も、元の世界へと還って行った。 数年前の自分ならば、「おい、頭の中身大丈夫か」と訊いていただろうに、今ではすっかりとその事実が固定されてしまっている。 堂々と授業中にトウヤが姿を消したときは随分問いつめられたが、知らぬ存ぜずを通す事で、いつの間にか周りは遠巻きへと消えた。 高校受験だといっていたはずの自分は、すっかり大学受験へと移行していて、時が経つのは早いと伸びた自分の身長を確かめながら、頭をトントンと叩いてみる。 きっと後にも先にも、一回きりだ。あんなに笑えるような体験をしたのは。実際自分は当事者ではなく、まったくの脇役だったのだが、人生で一度、あんなどっきりがあったって悪くない。 (………あいつら、元気にやってんのかねぇ) ぴらぴらぴら。もはや読んでいるとは思えないスピードで、ページが捲られる。もちろんの事、の頭の中にはまったくもって内容は入っていない。 イスへと体を預けると、ギシリとかすむような音がした。 その音とは何処か違う、キンと耳に響く不快な音が頭の中を巡り始める。 「………いたい」 なんだこれはと考えるよりも先に、体はすとん、と何処かに落ちた。が座っていたはずの椅子から体は通り抜け、床も抜けて、ついでに一階のリビングも通り抜ける。 まるで通り抜けフープでも使ったかのような感覚に、口をパクパクさせながら、真っ暗になってしまった視界の中で、むやみに何度も瞬きを繰り返した。 なんとなく、頭の中で理解している自分がいる。 (これは) 落ちた。 ドカン! と誰かに向かって思いっきり落ちた。「うわぁ!」と叫んだ主は、もちろん男だ。はじめはお姫様だっこのような格好になってしまったが、残念ながらと彼は同じほどの体型で、そのまま男はぺたんと地面に崩れ落ちてしまう。 「うわ、しょ、召喚しちゃった」 青いぴょこんぴょこんと猫っ毛な青年は、崩れ落ちたを見ながら「どうしようネスー!」と半分泣きかけな声を上げていた。 どうしようはこっちの台詞なんだけどと一瞬イラリとした気持ちを抑え込んで、 「おい兄ちゃん、ここ、リィンバウム?」 おそらく彼の非日常は終わっていない。 1000のお題 【712 嗚呼】 TOP NEXT ぐわっははは! 2008.08.12 |