ゴウゴウ


試験に合格! 晴れて一人前! おめでとうマグナ! ありがとう、ありがとう! そしてありがとう!



とかなればよかったんだけどねー。



マグナは両手で顔を抱え込んで、体育座りをしていた。その目の前には、そしてバルレル。新たなお仲間である。バルレルは正座をするのほっぺたをぐにぐにひっぱりながら、「おらてめぇ、俺様をあがめろ。あがめろ。年上様だぞあがめろ」と空気を読まずに連呼している。ちょっとほっぺたが痛いんですけど。

っていうか、目の前のゴシュジンサマの空気が、真っ暗なんですけど。


「あのー、マグナさーん?」 はいそいそと近づき、マグナにちょいちょいと片手を振った。バルレルはてめぇおら、きいてんのかおら、聞けよと騒ぎつつ、の髪の毛をひっぱっていた。
マグナはちらりとを見つめた後、よっこらせ、と立ち上がる。そして部屋の荷物にごそごそと手をのばし、鞄の中に突っ込んでいく。「え、おーい、マグナ?」

い、いったいどうしたの? ときょとんとした瞳でマグナを見上げると、彼はほんの少し言いづらそうに、そわぁ〜と瞳を動かした。あの、マグナさん?

も、何か荷物があったら、まとめておいてね」
「あれ? 話が見えないよ? マグナさーん??」
「おらニンゲン、俺の名前はバルレル様だ、様部分が重要だ」
「なんだかんだ言って、長い間使ってたもんなぁ、ほんの少し寂しいよ」
「あれ、聞いてくれてない」
「バルレル様」
「この紙、持っていこうかな? もうネスにも叱られることもないだろうし……」
「ウソォ、哀愁漂った顔してる意味わかんない……」
「さま!」
「真面目になります、か……。懐かしいよなあ、
「お願いこっちの話をきいて!」
「てめぇこっち向きやがれ!!」

ほっぺぶにぶにー。「いてぇよ! さっきからなんなんだよお前!!」 たまらずがバルレルの首根っこを掴むと、バルレルは「ケッ」と面白くなさ気な顔をして、ふいっと顔をそらす。なんなんだ。自分から構うのはオッケーだけど、構われるのはアウトとは、どういうことだ。意味がわからん。

放せやオラァ! とバルレルが放ったパンチが見事にのホッペに激突し、「うおおおおお〜〜〜いてぇえ〜〜〜」と床でごろごろ転がるの尻を、ニヤニヤバルレルが蹴りつけているというカオスな状況に、ちらりとマグナは目を向けて、彼はぼそっ、と言葉を吐いた。「…………その、俺、この部屋から追い出されることになっちゃったんだ……」「えっ」 マジで?



マグナが、周りの召喚師達に好かれていない様子であることは、はうっすらと気づいてはいた。けれどもまさか、それが追い出されるほどだとは。
よくわからないが、外に出て、ものすごい活躍をすることが、一人前となったマグナの使命であり、命令らしいのだが、ものすごい活躍ってなんだろう。理解不能。つまりは体の良い追い出し文句らしいのだけれど、なんてこった。自身のゴシュジンサマは、まったくもって不幸であるなぁ、と頷くは、体を小さくさせながらうめいた。

「あの、この荷物はなんでしょう」

背中にずっしり、鞄を抱えつつ、「さー、旅立つぞー!」と指をさすマグナの背中に声をかける。どうやらこの旅には、ネスティも同行することになったらしく、一人に任せておけば不安100%のマグナにとっては安心確実、鬼に金棒、保証付きな訳だけれども。「…………なんで俺まで荷物持ってるの!?」「だってバルレルが持ってくんないし」「ケッ」

ケッてお前、ちょっと待てよ。
「いやいやいや、そ、そういうことを言いたいんじゃなくって、ままるで、こ、これじゃあ俺が、お前と一緒に」「旅だ! 旅行だ! 心の洗濯だ!」「言葉を選んでるけど死亡フラグがびんびん立ってる!」

一介の高校生に、一体こいつは何をさせようと言うのか。旅ってそんな。は冬はこたつの中でぬくぬくして育った現代っ子一直線である。そんな、まさか、旅だとか。「死んだらどないすんねん!?」 興奮しすぎて意味もなく関西弁になった。


そんなを見つつ、ネスティは知らぬ存ぜずを決め込んでいる模様で、腕を組んで遠い場所を見つめていた。お願いこっちをむいてください。「大丈夫だよ、。人間、結構つらい環境でも生きていけるものだから!」「根拠無く励まされた!?」

というか、何故まで旅立たねばならないのだろう。こう言っては何だが、旅を言い渡されたのはマグナとネスであるし、バルレルは公式の護衛召喚獣であるので、しょうがない。けれども自分は違う。なんていうかその違う。「俺、ただのおまけ的な人間だもん!」 叫んで悲しい気分になってきた。せめて、ラウル師範のところへお世話になるとかできないもんなの、と涙を濡らすに対して、「えー。ラウル師範にも立場があるからムリムリー」と、マグナにしては珍しく賢い感じに否定されてブルアアアア、とは意味もなく叫びたくなった。


「とにかく旅だ! さーていくぞ、がんばるぞー!」
「えい、えい、おー……」

力なく返事をするの肩を、ぽんぽん、とマグナが叩いている。そういえば。「マグナ、君は一体、どこに向かうつもりなんだ?」 どうやらと同じ疑問を持ったらしい。ネスティが彼に問いかけた。マグナは一瞬うむ、と迷うような素振りを見せた。そのときの中で、思考が光り輝いた。豆電球ぽちーん。「はいはいはーい! サイジェントが!! いいと!! おもいまーす!!」

もしかしれば、ソルがいるかもしれないのだ。そうだそうだ、今こそチャンスであったのだ。そんなをみつつ、うむ、とマグナはひとつ頷く。「よしわかっ」「あそこは旧王国との境目だ。今は随分街の様子は落ち着いたと噂は聞くが、一時期あまりいい噂を聞きはしなかった。情勢的にわざわざ向かうべき場所ではないだろう」「だそうですよ、さん!」 本格的に賢い感じで否定された。


なんだようちくしょうだめなのかよう、こなくそう、としくしく涙を流すを、「ハッ」とバルレルは鼻で笑いつつ、その隣では「いくぞー! いくぞいくぞー!」とマグナが拳をつき出し、ネスティは重い溜息をついて、首をふるふる振っていた。なんだか不安いっぱいな、しょっぱなからバラバラなパーティーであった。なんとかならんの、これ。







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2011.10.14

1000のお題 【525 旅支度】