「アルバ、君に正式に騎士の位を授けよう」


顔を上げた。「とは言っても、まさか私が王なわけではない」 口元に優しげな笑みを乗せてはいるものの、姿形にはなんの隙もない。焦げ茶色の髪は、昔よりも少し短い。「ただ、形式的なものだ」 そうだ。形式的だ。以前から声をもらっていた。それはアルバの夢だった。でも、それは形じゃない。

「君が騎士見習いではなくなる、ということだよ。形にとらわれることなく、精進してほしい」
その通りだ。

「はい、シャムロック団長」



***



「おめでとうございます、アルバさん」
「……実感はなんだけどなあ」

今までとすることは、そう大して変わらないし、と肩を落とす。「出会ったばかりのアルバさんに訊かせてあげたいですね」「ルシアンにも同じことを言われた」 パチパチ、と拍手をするのは一人ばかりだ。他の面々は、さんざんアルバの頭を叩いて、気がついたら気を利かせたように二人きりにさせられていた。部屋のテーブルには、食べかけのチキンが並んでいる。まあ多分、そのうち戻って来るだろう。

「……背が伸びたかな」
「はい?」
「昔と変わったことと言えば」

とんとん、と自分の頭を叩く。この間、ライに会った。あっちもあっちで同じようなものだ。それから呆れられた。
お前、まだなのか?

「お料理が冷めてしまいますね。どうしましょう。温かくするのが得意な子に声をかけましょうか。あ、ダメですよ。あなた達がきたら大変なことになっちゃう。問題外」 多分ブリズゴアに話している。さすがにそれはやめて欲しい。「」「待ってくださいね、アルバさん」 ちょん、と唇を合わせた。

赤い大きな瞳をこっちに向けて、がぱちぱちと瞬きを繰り返している。ので、もう一回。「あ、あの、アルバさん!」「ご、ごめん思わず」 直前で顔を押さえつけられた。
は考えた。それから口元を押さえた。考えると、なんだか涙が溢れてきた。「ご、ごめん!」 ぼろぼろ涙が溢れてくる。「ち、ちがうんです……」

「う、嬉しくて」
やっと声が絞り出せた。「好きです、アルバさん」 あんなに頭の中で言っていたのに、アルバに言うのは初めてだ。すっかりアルバは出遅れてしまった。お前、まだに好きって言ってねえのか? 正直、昔っからあからさまだったぞ、と宿屋の店主が呆れたようにため息をついていた。そんなにだろうか、と道中複雑な胸中になりながらも、アルバはひとつ、決めていた。

「一人前になったら、に告白しようと思っていたんだけど」
先を越されてしまった。



ぶんぶん、とが勢い良く首を振る。「、落ち着いて」 の体は、アルバの中にすっぽりと収まってしまう。「好きだよ、」 付き合って欲しい、と声を掛ける前にもう一回、キスをした。慣れないものだから、こつりと歯にあたってしまった。

「…………イオスさんには、言わない方がいいのかな」
「いいと、思います」
鬼のように目を光らせる、彼女の兄を思い出した。





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2015/09/23