俺には、もう会うまいと決めた女の子がいる。
けれどもまた会いたいと思う女の子がいる。



 心臓よ踊り狂え!



(たじま、

頭の中でその台詞を繰り返して、はー、と息をついた。隣で「なんだよ花井トイレかよー!」とバカみたいにゲラゲラと大声を上げる、偶然にも俺の想い人(あああ! 色々とドキドキする!)と同じ名字の男がいる。(まあ当たり前の如く彼女と性別は違うし、見かけだって全然違うとまではいわないけど、結構違うし)
いつまで俺はずるずる引きずるつもりなんだと真面目に頭が痛くなるって!(「なんだよ花井ハゲなの気にしてんの?」「ハゲじゃねぇよお前これは坊主だっつの」)


ガラガラガラ。グラウンドに水をまいた後、トンボをガリガリとこすりつける。ついでにいうと、うちは人数も少ないから、マネも参加してる。大変そうだ、と思っても、俺には感謝ぐらいしか出来ない。

「なぁ、大変だろー、マネ」

俺の思考を知ってか知らずか(まぁ多分知らない)、いつもの調子で、にかっとした表情のまんま、トンボをグラウンドにこすりつけたまんま、田島がこっちを見て、にやっとした。「明日からの合宿、絶対大変そーだなーって思ってさ」 何がいいたいんだお前

中学からの経験で、みんな案外手慣れた感じで作業をこなす。かくいう俺もそうだ(つっても、こないだまで後輩がしてたもんだから、久しぶりだけどな)
もう少しで終わるな、と思った頃に、同じタイミングで、田島が「もうちょっとかなー」
ちらり、と目線を移動させたのは、田島の実家がある方面だ。あんまりにも近すぎたもんで、印象的を通り越して、俺の脳みそに完璧にインプットされたソレ。

(たじま、

また、未練たらたらな俺は、はー、とため息を一つ。また会えねぇかなぁ、どこに住んでんだろ、どこの高校なんだろ、どんな、子なんだろう。
「あ、来た!」



「おーい、ー!」

偶然にも、同じ名前に、俺はビクリと体を動かして、思わずトンボを、がったーん! おい田島、なにを勝手にピンポイントな名前を出してるんだ、一体なにをしたいんだ!
おいおいもういい加減にしろよ、といいたくて、俺は、丁度、振り返った。




久しぶりに見た彼女は、やっぱりかわいかったし、一つにくくった髪の毛が、ほんの少し、長くなってるような気がした。「あ」目を大きくあけた彼女。「あ」俺も同じで大きくあけてて、

バクバクバク! 無駄に速い鼓動に、口元から色々と出てしまいそうだった。「こ、こんにち、は」ほんの少し前と変わらずに、彼女が、ほんの少し微笑んで、俺に話しかける(うわやっぱかわいい)「あ、こんにち、は」 どもった俺の声に情けないを通り越して涙が出そうだったけど、それでも俺は声に出した。

なんだなんだ、そんな感じで周りに集まりだしたチームメイト達に、見るんじゃねぇよと思いっきり睨みをきかせてやりたい!


「こいつ、田島! 俺のいもーと。 明日っからの合宿で、マネ手伝うから!」



数々の問題発言の残し、俺は本気で頭が痛くなった。
(けれどもやっぱり密かに喜ぶ俺の心臓よ!)




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続きます
2008.01.27