ぐ、と飲み込んだ息を、はき出した。


入り乱れで、第1話   現状をまとめてみましょう




また俺は、彼女と会う事が出来なくなった。またシフトを変えたのだろうかと考えても、それを俺が知る手だてはないし、雛森に彼女と会わなかったか、と恥をしのんでこっそりと訊いてみても、ううん、と小さく首を振るだけで、大した成果も出せないでいた。

生徒会室の妙に座りの悪い椅子に腰掛けてみても、ため息しか出てこない。相変わらずプリントだらけの埃だらけの空間に、頭が痛くなった。(もしかして、バイト、辞めたんだろうか)
あり得る話だと思った。けれども想像したくない話だとも思った。
(だってそうだろう、俺はあそこへ行く事以外、彼女に会う手だてはないんだ)


あの日。最後に会ったあの日、本当に泣きそうな顔で(もしかしたら、もう泣いていたかもしれない)彼女は、ごめんなさいと俺に謝った。人違いだったのかもしれないし、聞き間違いだったのかもしれない。けれども、彼女はいなくなったのだ。

背もたれにぎしっ、と体重を掛けて、ほこりっぽい天井を仰ぐ。光の入り具合が悪いのか、薄暗いそこに、何故だか親近感が湧いてしまう(もうなんていうか、ホント駄目だよな俺)
今となっては、彼女の事を、本当に好きかどうかなんてぐるぐる頭を悩ましていた自分が懐かしい。そんでもって、その頃の俺に、こっそり耳元で囁いてやりたい「悩めるだけ、マシなんだぞ」って。
今の俺が悩もうが、彼女がいなけりゃどうしようもないじゃないか。意味がないじゃないか(本当に、ああもう)


頭の端っこから、がしがしとかきむしってやりたくなる衝動に駆られて、がんっ、と机に向かってデコを打ち付けた。散らかり放題の机に放置されたホッチキスの端っこが当たって、微妙に痛かった。


「ちょっと日番谷会長、何あそんでるんですか」


どこか間延びしたまぬけな声が聞こえて、そうだそういやコイツもいたっけかとまたため息を吐きそうになった。「遊んでねぇよ、松本、メモリ」「メモリ」「USB」
そん中に冊子の資料入れといたろと机にべったり頭をつけたまま、ちょいちょいと指を伸ばした。ほんの少しの間の後に、大きく、「     あ!」

バサバサッと落ちた冊子が、埃を立てた。


「すみませんの家に忘れて来ちゃいました!」
の家でも何でもいいから、今すぐ取ってこい!」




1000のお題 【895 意志薄弱な俺を許してくれ】




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2008.05.12