私にはイトコがいる。二つ年下の、とても可愛い女の子だ。


第5話   いらっしゃいませ。またのお越しをお待ちしております





「………あげないっていったのに」

ぼそりと呟いた言葉は、きっと誰にも聞こえない。ちょこっと前までは「乱菊姉さん、乱菊姉さん」とちょこちょこ後ろをついて来ていたっていうのに、いつの間にやら、あの子は後ろをつく相手を変えてしまったらしい。
相変わらずほこりっぽい生徒会室の窓枠に、どっしりと胸をのせて、小さく歩く二つの影を目で追った。健気にも、校門前でちょこんと背中を預けて、お待ちの会長が現れると、尻尾をパタパタ振っているように私には見える。

「…………あげないって、いったのに」

もう一回いっても、誰も聞こえない。
なにより一番健気なのは、あの初々しい彼らの邪魔をしないようにと、ありもしない仕事を作って、こうやって見送っている自分なんじゃないかと、ほんの少し思えてきた(ホントの事なら、いじり倒したいところなんだけど)
どうせくっつくのは時間の問題なのだ。

そのことを修兵にいったとき、複雑そうな顔で、「あ、そうなんですか」といっていたのをふと思い出した。もしかしてとも思っても、勝ち目はないなと手を合わせてしまう。(いいやここで大判狂いなんて来ても、面白いかも)

けれどもいつの間に外堀を埋めたのか、「雛森さんっていい人なんだね」とにっこり笑ったあの子を思い出した。いつの間にそんな根回しのいい子になったんだろう(というのは冗談で、きっと特に意識していないんだと思う)


はぁ、と吐いたため息に、思わず笑いそうになってしまったけれど、こっそりと見守る上空から、二つの影の手のひらが、ほんの少し重なった所を見て、「ごちそうさまです」と窓を閉めた。


願わくば、奇特な出会いをした彼らが、奇特な仲を続ける事が出来ますように、なんて祈るのは、ガラじゃないのかしら?

(締め切った部屋の中は、やっぱりまだ埃臭かったけれど、ほんの少しマシになっていた)




1000のお題 【857 悟りの境地】



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2008.05.12