それから、彼らはどうなったのか?
こうして幸せに暮らしたとさ 
あれから暫くの月日が流れた。自分の主人に、「ガイ、お前仲がいいメイドがいなかったっけ?」と首を傾げられたとき、「おお、よく覚えてるなぁ」と彼の頭をぐしぐし撫でた。
一体彼はどうしているだろうか。
案外、元気にやっているかもしれない。
きっとそうだ。そう思わないと、自分には何もできないのだから、そう思うことにした。
ガイラルディア・ガラン・ガルディオス
まさか再びこの名前を名乗れるときが来るとは思わなかった。ぶひ、ぶひぶひ。かわいいジェイド達を引き連れて、のそのそ散歩をしていると、なじみの軍人に出会った。お互い大変だなあ、と苦笑し合っていると、軍人が、ふいと視線を外したのだ。
一体どうしたんだろう、と首を傾げると、彼はほんの少し照れた顔をして、「いやね、随分美人な人だなあって思いまして」とほっぺたをひっかいた。
美人だと? ガイはちょっぴり期待する気持ちで、軍人の視線を探した。その中に一つ、見覚えのある姿を見つけたのだ。ガイは勢いよく軍人の肩を引っ掴んだ。彼は目を丸くして、「すまない、ジェイド達を頼む!」「え、ええ、ちょ、ちょ、ガイラルディア様!?」
「待ってくれ!」
叫んだあとに、そういうべきではないと気づいた。はっと気づいた彼女、いや彼は、長い髪を振り乱して、さっとスカートもひるがえす。けれどもどうせ、動き辛い女の恰好だ。ガイが負ける訳がない。ぎゅっと彼女の腕をつかんだ。「は、放してください、人を呼びますよ」「こらこら、何を言うんだ」 ほんのちょっと苦笑する。
「久しぶりだな、。何年振りだ?」
「人違いです。どなたですか」
「そんな訳ないさ。俺がしっかり触れる女は君だけだよ。まあ男な訳だしね」
そういって、ニコッとガイが笑うと、彼は綺麗な顔を崩して「おっまえまだダメなのかぁ!?」と素っ頓狂に呆れた声を上げたのだ。「そうさ、まだダメだ。ちょっとはマシになったけどね」 ひょいっと肩をすくめるガイを見て、彼はげらげらげらっと笑ったのだった。
「お前、かわんないなぁ」
「お前もね」
ちょっとくらい、怒るかなぁって思ったよ。
ある日は、いつもみたいに紅茶を飲みながら肩をすくめた。もちろん、ちょっとぐらい責める気持ちはあったけれど、元来それを表に出すような性格じゃあなかったし、それに、「それが男の友情ってもんさ」 いつかどこかでばったりと。そしたら昔のまんま笑って肩でも組んでやったらい。「ちがいねぇー」
は男から逃げていた。男避けのための女装というのは、間違っていなかった訳である。目くらましのために名前も変えていた。けれどもやっぱり、あっちの方が一枚上手だったということだ。
国を越えたは、今でも名と性別を変えている。さてさて、とガイはもぐもぐクッキーをついばんだ。「思うんだけどな」「おうともよ」「うちに来たらいいんじゃないか?」
うちは高賃金だし対応もいいし、住み込みだし。家主もフレンドリーだ。
家主って? と眉を顰めるを見て、ガイはぷぷっと噴出した。
「俺、貴族になったんだ」
「へえー。ぽいなぁ」
「なんだ驚かないのか」
「そんな感じはしてたよ。案外上品だしな」
つまらないなぁ、とガイは少しだけ口をとがらせ、「うちならな、マルクトの結構いい家だし、国を越えてやってきてちょっかい出すバカはいないと思うぞ」
は、いやは。ぱちっと瞳を瞬いた。
それから。
「ガイラルディア、お前メイドを取ったんだって? やあーっとお前はその気になったか! 可愛くない方のジェイドも興味があるってんでな、連れてきてやったぞー!」
「はっはっは。まさかまさか。私がそんなバカらしいことに興味を持つ訳がないじゃないですかー。陛下のあんぽんたーん」
「いつか不敬罪でグサッとしてやる」
「その前にあなたをグサッとしますがね」
「……人の屋敷の前で不穏な会話をせんでください……」
すまんすまん、と笑うピオニーに苦笑いをして、「おーい、ー」とガイは男の名を呼んだ。「へいへい旦那、なんですかーい」 ひょいっとやって来たのは長い髪を一つにくくった、小奇麗な男の執事だ。あれまぁ、とピオニーは首を傾げる。「新しいのはメイドって聞いたんだが、勘違いだったか?」 そういうピオニーへ、ガイはなんとも言えない表情で頷いた。
執事にしてはぞんざいな口調で案内された部屋で、ジェイドとピオニーは息をついた。お茶を持ってくる、というだけ言って去って行った彼を思い出し、ピオニーはちょっぴり眉をひそめる。別に腹が立ったとか、そういう訳ではないのだが。「……ガイラルディア、お前執事にバカにされてるのか?」「い、いやそういう訳じゃありませんよ」 じゃあどういう訳だ。
可愛くないジェイドはただ静かに背筋を伸ばし、座っていた。
カチャッと開いた扉に、ピオニーは一瞬体を硬くさせたもの、やってきたのは別の人間だ。丁度さっきの執事と同じくらいの髪の長さで、ふんわりとしたメイド服を着ながら、「お茶の準備ができました」ピオニー達に柔らかく微笑む。「おお!」 これだ。これである。「綺麗どころがいるじゃないか、ガイラルディア!」
けれどもやっぱりガイは苦笑するばかりで、「、あんまりからかうんじゃないぞ」とメイドに小さく声を駆けた。メイドはくすくすっと盆を口元に寄せて微笑む。そんなところがまた可愛い。ふと、ピオニーは気づいたのだ。さきほどの執事と、ずいぶん顔が似ている気がする。ううん、と彼は首を傾げて、「ああ、兄妹か」「まあ、そんな感じで」 くすくす笑うメイドに変わって、ガイが辟易としたように答えた。
それじゃあ失礼します、とメイドが背を向けようとしたとき、今まで口をつぐんでいたジェイドが、ふと微笑んだ。「服を着たって、案外骨格は分かりますよ」
そんなジェイドの言葉を聞いて、彼女はささっと顔を青くする。
「ジェイド、一体なんだ。人間に服は不必要だということか?」
「本気でそう思うんなら今すぐケテルブルクにでも行ってすっぽんぽんになられては?」
「死ぬわ! 皇帝の威厳とともに死ぬわ!」
「はっはっは」
きゃいきゃい騒ぐ幼馴染の会話の外で、「だから言ったろ? 旦那には通じないってさ」とガイがメイドに声をかける。メイドはぶるぶるっと肩を震わせ、「ちくしょう、こなくそ、初めてばれたー!!!」 親にもばれたことがないのにー!
先ほどよりも野太い声で去っていくメイドを、ピオニーはパチパチ瞬きをして見送った。「……なんだか変わった子だなぁ」「あんま言ってやらんでください」 今多分、プライドずったずたなんで。
ガルディオス家には、きれいな双子の従者がいるらしい。
そんな噂がひっそりと流れるようになったとか。
「、きみ女装する必要なんてもうないだろう。やっぱりただの趣味だったんだなぁ」
「なんだとこのご主人様め、この高潔なる行為を趣味だとは何事か。俺みたいな美人を磨かんのは罪であるぞ!」
「はいはいわかったよ。好きなだけどうぞ。まあそれが 」
「って男なんだしな」
THE END!
← ■
2011.08.09
<短いあとがき>
怒ったりするガイとか友人には笑いながらチョップするガイとか、にこにこしてるガイとかいろんなガイが見たい書きたい読みたいです。私の友人は、ガイが好きになることを"ガイショック"と適当に銘打ってます。会話の途中に「ガイショックが来てさぁ〜あれ本気でガイショックだったよ〜」とかあんまりにも当たり前な顔をして言われたので、てっきりそんな単語があるのかと焦りました。ただの造語でした。でもなんだかゴロがいいので私も使わせてもらってます。ガイショックはいまだに響いてガイさんうへへとにやつく自分が気持ち悪いです。皆さんも使ってみたらいかがでしょうか、ガイショック。<終わり>
あれから暫くの月日が流れた。自分の主人に、「ガイ、お前仲がいいメイドがいなかったっけ?」と首を傾げられたとき、「おお、よく覚えてるなぁ」と彼の頭をぐしぐし撫でた。
一体彼はどうしているだろうか。
きっとそうだ。そう思わないと、自分には何もできないのだから、そう思うことにした。
ガイラルディア・ガラン・ガルディオス
まさか再びこの名前を名乗れるときが来るとは思わなかった。ぶひ、ぶひぶひ。かわいいジェイド達を引き連れて、のそのそ散歩をしていると、なじみの軍人に出会った。お互い大変だなあ、と苦笑し合っていると、軍人が、ふいと視線を外したのだ。
一体どうしたんだろう、と首を傾げると、彼はほんの少し照れた顔をして、「いやね、随分美人な人だなあって思いまして」とほっぺたをひっかいた。
美人だと? ガイはちょっぴり期待する気持ちで、軍人の視線を探した。その中に一つ、見覚えのある姿を見つけたのだ。ガイは勢いよく軍人の肩を引っ掴んだ。彼は目を丸くして、「すまない、ジェイド達を頼む!」「え、ええ、ちょ、ちょ、ガイラルディア様!?」
「待ってくれ!」
叫んだあとに、そういうべきではないと気づいた。はっと気づいた彼女、いや彼は、長い髪を振り乱して、さっとスカートもひるがえす。けれどもどうせ、動き辛い女の恰好だ。ガイが負ける訳がない。ぎゅっと彼女の腕をつかんだ。「は、放してください、人を呼びますよ」「こらこら、何を言うんだ」 ほんのちょっと苦笑する。
「久しぶりだな、。何年振りだ?」
「人違いです。どなたですか」
「そんな訳ないさ。俺がしっかり触れる女は君だけだよ。まあ男な訳だしね」
そういって、ニコッとガイが笑うと、彼は綺麗な顔を崩して「おっまえまだダメなのかぁ!?」と素っ頓狂に呆れた声を上げたのだ。「そうさ、まだダメだ。ちょっとはマシになったけどね」 ひょいっと肩をすくめるガイを見て、彼はげらげらげらっと笑ったのだった。
「お前、かわんないなぁ」
「お前もね」
ちょっとくらい、怒るかなぁって思ったよ。
ある日は、いつもみたいに紅茶を飲みながら肩をすくめた。もちろん、ちょっとぐらい責める気持ちはあったけれど、元来それを表に出すような性格じゃあなかったし、それに、「それが男の友情ってもんさ」 いつかどこかでばったりと。そしたら昔のまんま笑って肩でも組んでやったらい。「ちがいねぇー」
は男から逃げていた。男避けのための女装というのは、間違っていなかった訳である。目くらましのために名前も変えていた。けれどもやっぱり、あっちの方が一枚上手だったということだ。
国を越えたは、今でも名と性別を変えている。さてさて、とガイはもぐもぐクッキーをついばんだ。「思うんだけどな」「おうともよ」「うちに来たらいいんじゃないか?」
家主って? と眉を顰めるを見て、ガイはぷぷっと噴出した。
「俺、貴族になったんだ」
「へえー。ぽいなぁ」
「なんだ驚かないのか」
「そんな感じはしてたよ。案外上品だしな」
つまらないなぁ、とガイは少しだけ口をとがらせ、「うちならな、マルクトの結構いい家だし、国を越えてやってきてちょっかい出すバカはいないと思うぞ」
は、いやは。ぱちっと瞳を瞬いた。
それから。
「ガイラルディア、お前メイドを取ったんだって? やあーっとお前はその気になったか! 可愛くない方のジェイドも興味があるってんでな、連れてきてやったぞー!」
「はっはっは。まさかまさか。私がそんなバカらしいことに興味を持つ訳がないじゃないですかー。陛下のあんぽんたーん」
「いつか不敬罪でグサッとしてやる」
「その前にあなたをグサッとしますがね」
「……人の屋敷の前で不穏な会話をせんでください……」
すまんすまん、と笑うピオニーに苦笑いをして、「おーい、ー」とガイは男の名を呼んだ。「へいへい旦那、なんですかーい」 ひょいっとやって来たのは長い髪を一つにくくった、小奇麗な男の執事だ。あれまぁ、とピオニーは首を傾げる。「新しいのはメイドって聞いたんだが、勘違いだったか?」 そういうピオニーへ、ガイはなんとも言えない表情で頷いた。
執事にしてはぞんざいな口調で案内された部屋で、ジェイドとピオニーは息をついた。お茶を持ってくる、というだけ言って去って行った彼を思い出し、ピオニーはちょっぴり眉をひそめる。別に腹が立ったとか、そういう訳ではないのだが。「……ガイラルディア、お前執事にバカにされてるのか?」「い、いやそういう訳じゃありませんよ」 じゃあどういう訳だ。
可愛くないジェイドはただ静かに背筋を伸ばし、座っていた。
カチャッと開いた扉に、ピオニーは一瞬体を硬くさせたもの、やってきたのは別の人間だ。丁度さっきの執事と同じくらいの髪の長さで、ふんわりとしたメイド服を着ながら、「お茶の準備ができました」ピオニー達に柔らかく微笑む。「おお!」 これだ。これである。「綺麗どころがいるじゃないか、ガイラルディア!」
けれどもやっぱりガイは苦笑するばかりで、「、あんまりからかうんじゃないぞ」とメイドに小さく声を駆けた。メイドはくすくすっと盆を口元に寄せて微笑む。そんなところがまた可愛い。ふと、ピオニーは気づいたのだ。さきほどの執事と、ずいぶん顔が似ている気がする。ううん、と彼は首を傾げて、「ああ、兄妹か」「まあ、そんな感じで」 くすくす笑うメイドに変わって、ガイが辟易としたように答えた。
それじゃあ失礼します、とメイドが背を向けようとしたとき、今まで口をつぐんでいたジェイドが、ふと微笑んだ。「服を着たって、案外骨格は分かりますよ」
そんなジェイドの言葉を聞いて、彼女はささっと顔を青くする。
「ジェイド、一体なんだ。人間に服は不必要だということか?」
「本気でそう思うんなら今すぐケテルブルクにでも行ってすっぽんぽんになられては?」
「死ぬわ! 皇帝の威厳とともに死ぬわ!」
「はっはっは」
きゃいきゃい騒ぐ幼馴染の会話の外で、「だから言ったろ? 旦那には通じないってさ」とガイがメイドに声をかける。メイドはぶるぶるっと肩を震わせ、「ちくしょう、こなくそ、初めてばれたー!!!」 親にもばれたことがないのにー!
先ほどよりも野太い声で去っていくメイドを、ピオニーはパチパチ瞬きをして見送った。「……なんだか変わった子だなぁ」「あんま言ってやらんでください」 今多分、プライドずったずたなんで。
ガルディオス家には、きれいな双子の従者がいるらしい。
そんな噂がひっそりと流れるようになったとか。
「、きみ女装する必要なんてもうないだろう。やっぱりただの趣味だったんだなぁ」
「なんだとこのご主人様め、この高潔なる行為を趣味だとは何事か。俺みたいな美人を磨かんのは罪であるぞ!」
「はいはいわかったよ。好きなだけどうぞ。まあそれが
「って男なんだしな」
THE END!
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2011.08.09
<短いあとがき>
怒ったりするガイとか友人には笑いながらチョップするガイとか、にこにこしてるガイとかいろんなガイが見たい書きたい読みたいです。私の友人は、ガイが好きになることを"ガイショック"と適当に銘打ってます。会話の途中に「ガイショックが来てさぁ〜あれ本気でガイショックだったよ〜」とかあんまりにも当たり前な顔をして言われたので、てっきりそんな単語があるのかと焦りました。ただの造語でした。でもなんだかゴロがいいので私も使わせてもらってます。ガイショックはいまだに響いてガイさんうへへとにやつく自分が気持ち悪いです。皆さんも使ってみたらいかがでしょうか、ガイショック。<終わり>