「あれだけ、忠告したというのに」



そうジェイドは冷えたような声色で、に言葉を吐いた。が、一体どんな表情をしていたのかわからない。ただ倒れ込む彼女の体を、俺は受け止めることもできなくて、ただ無意味にも腕を突き出しただけだった。

、なのか!? ど、どうしたんだ……!!?」

おそらく彼女の髪の色に驚いたのだろう。ルークが声を上げながら、ジェイドに支えられる彼女に駆け寄る。「すでに意識はありません。無茶をしましたね」 そうだ。無茶をさせた。だからこそ、はナタリアに任せ、背中の傷を誤魔化し剣を振るった。やめてくれと何度も叫んだ。キムラスカの陣営は抜けた。あとはオラクルのみだ。それぐらいなら、俺がなんとかしてみせると。

ただおそらく、彼女は最後には、声すらもよく聞こえていなかった。そして、ケセドニアにつくや否や、歩けるはずもないくせに、もたれかかっていたはずのナタリアからふらりと離れ、一歩を踏み出した。そしてジェイドに抱きとめられた。

     忠告、とは、どういうことだ……」

口に出した自身の声が、ひどく乾いていた。彼女を抱きかかえたままのジェイドを睨む。これではただの八つ当たりだ。そう理解して、顔を拭った。彼女に手を出すことができない自身に苛立っているだけだ。

幾度か深く息を繰り返して、顔を上げる。ジェイドはを軽く持ち上げた。ゆらりと意識のない彼女の腕が宙で揺れている。「あんたは、何を知ってるんだ。教えてくれ……」 今のの姿を見て、一目で彼女だと気づく人間がいるのだろうか。髪の色も、今は閉じられている目も、そしてよくよく見れば、肌の色も違う。あまり日に焼けず、白い肌は、どこか黄色い。も、同じような色をしていた。

「今はすべきことがあるはずです。私達がここにいる理由、そしてそちらがこの場にいる理由も確認しなければならない」
「だけどな……!」
「落ち着きなさい。ルークではなく、あなたにこう言うときがくるとは。道中で結構でしたら、いくらでもお伝えしますよ」
「ガイ、あなたの怪我もまだ塞がっていませんわ。ティア、あなたの譜歌で癒やして差し上げて」
「そんなに深い傷を?」

わかったわ、とティアは頷き、歌うように短く詠唱する。「ティアは、わたくしとは系統が違いますから。別々の治癒術を使用することで、楽になるはずですわ」 彼女の言うとおりだった。ひどく呼吸が落ち着いた。ジェイドの言葉はわかっている。それでも、揺さぶられるままの思考を握りしめた。

「……この子、ほんとに? あ、ほんとだ。顔はだ」
「けれども、これは……」

アニスとイオンまでもが不思議気にジェイドに抱えられたままの彼女の顔を覗き込んでいる。「ジェイド、俺が持つよ」 ルークの言葉に息を吐き出した。少し、落ち着いた。安堵したような俺を見て、「ああ、考えが足りませんでしたね」 とわざとらしくジェイドは口元を上げたものだから、視線をそらした。

「先程も告げましたが。私達には、まだすべきことがあります。そちらを終えまして、アルビオールに向かうまでの最中でしたら、私が把握していることは、いくらでもお伝えしますよ。まあ本来でしたら、自身から伝えるべき話だとは思いますがね」

特に、あなたには秘密にして欲しい、とは言われましたが、守るべき通りもありませんしね、と眼鏡を押し上げる男を見て、眉根を寄せた。




***





ゆっくりと、瞳を開けた。幾度か瞬いて、気だるい体を感じた。どこか見覚えのある天井だった。いや、天井というよりも、屋根のような。目の前に広がるガラス張りの空を見て、ぼんやりと瞬きを繰り返しながら、ぼやぼやする頭をゆっくりと起こす。「ここ、は……?」「さん、目が冷めたんですね!」

ほっとしたような声を出す赤い服を着た金髪の少女を見つめて、「ナタリアさん……?」 それにしてはちょこっと身長が縮んだような。「違います! ノエルですよ!」「…………ノエルさん!?」 やっとこさ覚醒した。

周囲を見返せば、なるほど確かにアルビオールの中だ。ノエルさん以外は誰もいない。いつもなら操縦席にいるはずの彼女が、座席で寝こけていた私の面倒を見ていてくれていたらしい。「あ、あの、すみません、いえ、ありがとうございます!」 勢いよく立ち上がって、頭を下げた。そんな私を見上げて、ノエルさんはしばらく唖然として、「あは、お元気そうですね。よかった」

そう言って、やんわり笑った。




そして私は、ノエルさんから現状を確認した。エンゲーブに向かったルークさんたちだったけれど、やはりそこも戦時下に巻き込まれようとしていた。エンゲーブは生産に特化した村だ。そこにいるのは戦えないものたちばかりで、私達と同じ目的地であるケセドニアに避難することを、ルークさんは提案した。つまりは戦闘地帯の横断である。ルークさんたちは住民を護衛しながら、ルグニカ平野を駆け抜けた。戦えない、たくさんの人達を引き連れての大移動だ。さぞ、困難だったことだろう。そして奇しくも、私達は同じような行動をとっていたというわけだ。

ノエルさんは、ルークさんたちより一足先にこのアルビオールに乗って、動くことも難しい人たち、つまりは老人や子供を避難させてくれた。本当にありがたい。そしてルークさんたちと再会したのだ。

     そして私達の目的であったはずのアルマンダイン伯爵は、まったく話を聞き入れてくれなかった。

それどころか、すでにキムラスカの陣営に手を回していたモースは、ナタリアさんをキムラスカ王家の血筋ではなく、国を謀る大罪人とまで告げたという。曰く、敬虔な教団の信者から、彼は懺悔を受けていた。王妃のお側役と自分のの間にできた生まれたばかりの女児を、本物の王女とすり替えたという。彼らにとっては偽りの王女であるナタリアさんの話を、アルマンダイン伯爵は聞く耳もなかった。

イオン様も何かお考えがあってかダアトに戻り、アニスさんは導師守護役を解任された。その上タイミングの悪いことにも、ケセドニアの崩落の兆しもあったそうだ。ルークさん、そしてガイさんたちは、急ぎパッセージリングを起動させに向かった。このルグニカ平野をセントビナーと同じように、セフィロトツリーを噴射させてゆっくりとクリフォトに降下するためだ。



「……そんなこと、本当にできるんでしょうか……?」

一体私はどれほどの間眠っていたんだろう。呆然として呟いた。でもノエルさんにだってわからないはずだ。「ごめんなさい、ただ、本当に、驚いて……」 ナタリアさんの心情を考えた。やっとの思いで平原を越えたというのに、偽りかどうかはさておき、今まで信じていたはずの事実をひっくり返されたのだ。

「ナタリアさんは、気丈に振る舞ってらっしゃったと思います。ただ少し、気落ちしていらっしゃるようにも見えましたけど……」
「そう、ですよね」
「あとはガイさんが、さんのこと、すごく心配していましたよ。近づけないのに、つかず、離れず、みたいな」
「それは……」

ひどく申し訳なかった。結局、限界を越えてしまったのだ。責任感のある彼のことだ。気に病んでいないといいけれど。「そうです、ガイさんの怪我です! ティアさんに治してもらいましたよね!?」 ノエルさんの両手を掴む勢いで体を乗り出した。一人の治療術士では難しい怪我も、補佐がいれば話は別だ。その上ティアさんは譜歌を使う。ナタリアさんとは違うアプローチ方法ができるはずだ。

「え、えっと、お元気そうにしていらっしゃいましたよ?」

ノエルさんの言葉にほっと息をついた。

「よかったあ……」

両手をあわせて、へたり込んでしまった。はー、とため息をついたあとに、今更ながらに自分自身の状態を確認した。起きたときこそは気だるさを感じていたけれど、今はだいぶよくなった。髪の色が変わったところまでは把握しているのだけれど、瞳の色はわからない。うーん、と考えて、ノエルさんに尋ねることにした。「真っ黒ですね」「……やっぱりですか」 グランコクマにいた際は、まだ黒に近い緑だったはず。覚悟はしていたけれども、やっぱり、と思いながら自分の手を見た。

「…………もしかして肌の色も変わっていますか!?」
「え、えっと、そうですね……あ、でもそこは寝ていらっしゃる間に、だいぶ元に戻りましたよ!」

色素のフォニムが抜けるって、こういうこと、とさすがに驚いた。肌の次は、身長まで変わったらどうしよう。色じゃないけど、それくらいの変化ならありそうな気がする。

視界にちらちらと映る自分の髪の色が、なんだか慣れない。となって、もう16年もたったのだ。そうだ、と手を打ってタマラさんから借りた作業着を荷物の中から取り出した。ユリアシティにたどり着いたあとに、こっそり着替えて置いておいたのだ。借りたものを、さらに着てもうしわけないと思いつつ、背に腹は代えられない。

「落ち着きました……」

なんて言ったって、この服にはフードがついている。これでいつでも髪を隠せる。グランコクマでの際でも、元の色に戻るまでに数日がかかったのだ。今度はどれくらいかかるのかわからない。そもそも、戻るのかさえも不明だ。「……なんだか似合いますね!」「ど、どうもありがとうございます……?」 にこにこ笑うノエルさんの返答に困ったのだけれど、似合わないよりもマシだろう、と判断した。


そうしながらアルビオールの中に待機していたとき、ふいに空の色が変わった。いや、空が移動していた。太陽が恐ろしい速さで移り変わる。暗く、影ができたと思えば、大地の亀裂が見えた。そして僅かな振動も感じた。おそらくクリフォトに、降下しているのだ。

「ルークさんたちが、成功したんでしょうか……?」
「わかりません……でも、何かあったときには、私達だけでも脱出しろと、そう言われています」
「そ、それは!」

首を振ろうとした。ガイさんたちは、まだこの大地にいる。けれども彼女の言葉を否定することは、彼女に道連れになれと言っているようなものだ。唇を噛んで、瞳を伏せた。「大丈夫ですよ、さん。私、みなさんを信じてますから。それに、兄とアルビオールを助けて頂いたときから、みなさんの力になるって決めたんです」 万一のときがあっても、自分だけ逃げようなんて思いません、と笑った指先は震えていた。

ごめんなさい、と彼女の手に指を添えた。「待ちましょう。ガイさんたちは、絶対に帰ってきます。大丈夫です」 自分に言い聞かせるような声を出して、私とノエルさんはアルビオールで待った。そうして数刻がたったとき、船の窓から、小さな影を見つけた。金の影を見つけたとき、慌てて窓から飛び出そうとして、ノエルさんに引っ張られた。それから必死に腕を振って、彼らの名を叫んだ。



***



「本当に大丈夫なのか?」
「本当に、大丈夫です」
「本当の本当か?」
「本当の本当ですってば!」

一体何をしているのか、と呆れたような視線を感じる。
私はガイさんを想像以上に心配かけさせてしまっていたようで、離れた座席から、何度も同じ言葉を繰り返された。間に挟まれたルークさんが可哀想だ。

「ガイ、心配なのもわかるけどさあ……そんなに気になるなら、隣に座ってくれよ。俺がそっちに行くからさあ」

ルークさんの膝の上では、ミュウが踊っている。「そうしますの! でもさんが元気そうで安心ですの! ぶらっくさんですのーーー!!」「言い方……!!」 なんだか、すごく嫌……!!

ミュウのことだから、単純に外見のことを言っているんだろうけれど、まるで内面を指摘されているみたいで心がざわつく。「近くに座れるものなら、座ってる」 ルークさんの言葉に、ガイさんはひどく気落ちした声を出していた。いつもなら、『女性恐怖症なんだから、仕方ないだろ!?』と声を裏返しながら叫んでいるはずなのに、不思議に思いながらも、相変わらずのガイさんの追求が止まらない。どうしよう、と両手を広げて体を仰け反らせていると、「感動の再会はその程度にしてください」 こちらも相変わらずの冷えた声でため息をついた。


今現在、アルビオールは再び空を走行中だった。
無事ルグニカ平野の下降を終えたその足で、ジェイドさんが何か気になることがある、とノエルさんに指示を行い、クリフォトの空を滑空し続けている。それにしても、ケセドニアで彼を見たとき、小さな声で褒められたような、やっぱり気の所為なような。頑張りすぎた妄想だろうか。

アルビオールの速度も落ち着いたとき、ルークさんはやれやれと座席から立ち上がった。そうして、窓にへばりついた。「なんだ? あのセフィロトツリー、おかしくないか……?」 ルークさんの言葉に、次々にみんなが確認する。眩しくなったかと思ったら消えかかったり、まるで切れかけの音素灯みたい、と例えたのはアニスさんだ。彼女の隣にイオン様がいないと、なんだか不思議だ。

「やはり、ですか」

まるであたって欲しくもない予測が当たった、とでも言うように、ジェイドさんは重たいため息をついた。「パッセージリングに警告が表示されていました。なんらかの影響でセフィロトが暴走し、ツリーが機能不全に陥っているようです。最近地震が多いのも、崩落のせいだけではなかったらしい」

言葉を失った。「ま、待ってください大佐! ツリーが機能不全になったら、外殻大地は、まさか……!」 ティアさんも、最後まで告げることができなかった。

外殻大地は、セフィロトツリーによって支えられている。そのセフィロトがなくなってしまえば、外殻大地はもろとも、すでに降下しているケセドニアやセントビナーも泥の海に飲み込まれ、消えてしまう。「なんとか、できないのか……?」 呟いたルークさんの言葉が虚しく、重たい沈黙に飲み込まれた。



「あ、あの、私が……私が、“見て”みます!」

そうすれば、なんらかの策を練ることができるかもしれない。立ち上がって、彼らを見渡した。すでに私の力のことは、みんなに伝わっているらしい。今更隠す必要もない。そうじゃなければ髪の色の説明がつかない。

以前はうまく、見たいものが見ることができなかった。でも今は違う。私が心の底から願えばいいのだ。そうすれば望む未来を見ることができる。なぜだかジェイドさんがため息をついた。「、いい、座ってくれ」 ガイさんがこちらを見ることなく、腕を組んだまま、硬い声を出した。「あの、でも」「いいから」

このままセフィロトがなくなってしまえば、みんな大変なことになってしまう。ガイさんだってそうだ。そんなの、絶対に嫌だった。なんでわかってくれないんだろう、と頭ごなしに声を遮るガイさんに苛立った。

「ガイさん、聞いてください。確かに私では力不足かもしれないです。でも、でも私、それでも、精一杯、頑張りたくて、ガイさんが死んでしまったらって」
「いい加減にしてくれ!!!!!!」


聞いたこともないような大声だった。ガイさんは勢いよく立ち上がり、私の両肩を掴んだ。それからひどく苦しそうな、泣き出してしまいそうな、けれどもとても怒った顔をして、喉を震わせた。

「きみが! きみが、いなくなってしまったら、なんの意味もないだろうが……!!!」


あんまりにも驚いたから、目を見開いたまま、ぺとりとそのまま座り込んでしまった。「ごめんなさい……」 彼の顔を見ていると、呆然としたまま、自然と声が出た。握りしめられていた肩がひどく痛い。「いや、っていうかガイ、女性恐怖症……」 アニスさんがぽそりと呟く。苛立ったように視線をそらしていたガイさんが、ふと自分の手を見た。それから私を見て、「ひえ、ひあ、ひゃああああ……!」 だんだん声が遠くなる。そしてアルビオールの壁にぶつかった。


みんな困惑したような顔をしている。ガイさん自身もそうだ。震える体を誤魔化すように幾度か深く呼吸を繰り返して、私を見て、それからもう一回、さっきと同じように自分の手のひらを見た。「す、すまない。気がついたら……。でも、君に大声を出すのも、乱暴な扱いをするのも、どうかこれで、最後にさせてくれ」 お願いだ、と呟くガイさんに首を振った。「い、いえ……」 乱暴と言うほど、大して痛いわけでもなかった。


けれどもさきほどのガイさんの言葉を思い出して、慌ててジェイドさんを睨んだ。「ジェイドさん……!」「はい、ぺろっと話しておきました」 まったくもって悪びれがない。まさか、と冷や汗が背中を流れた。そんな私を見て、ジェイドさんはこちらに伝えるかのように念を押した。

「あなたが、コンタミネーション現象を行っているということ。このまま使用を続ければ、血中のフォニムまで拡散する恐れがあるということを伝えました」

     つまり、私に生まれる前の記憶があるという話は伝えていない、という意味だ。


ほっとしたのも一瞬だ。どちらにせよ、という話だ。「そ、それは秘密にしてくださいって……!」 ジェイドさんに向けて叫んだセリフだったはずなのに、ガイさんがぽつりと呟いた。「俺には、言わないでくださいってか……」 囁くような声に首を傾げた。なんでガイさんが、そのことを、と疑問に思う前に、彼はひどく重たいため息をついていた。「あの、ガイさん……?」「いや、本当に俺はマヌケなんだなって呆れたよ」 どういうことだろう。

なんにせよ、と改めて声を出そうとしたとき、「盛り上がってるところ、大変申し訳無いのですが」 相変わらず悪びれがない声で、ジェイドさんがぱんぱん、と両手を打ってこちらを制した。


のその力ですが、今回に関してはなんの意味も持ちませんよ。どこかに必ずいる兵士を避け続けるのならともかく、私達が知りたいのは解決策です。あなたは未来をおおざっぱに覗くことができる。しかしもともと何らかの解決策がなければ、ただ大地が沈む姿のみを見ることになる。あなたのそれは、答えがあってのものなのですよ」

何もないところから、何かを生み出すものではない。
ジェイドさんの言葉に、瞳を見開いた。確かにそのとおりだ。なら、やっぱり何もできないのか、と自分に呆れた反面、先程のガイさんの顔を思い出した。とても、とても怒っていた。あんなガイさんは見たことがなかった。私は覚悟してのことだったのに、と考えることはきっとおこがましいのだろう。ただ私は彼を悲しませただけだった。


「まあ、は置いといてさ、ユリアの方の預言には、セフィロトが暴走することは詠まれてないのかな。暴走するには理由があるだろ。その中にもしかしたら対処法もあるんじゃないか?」
「どうかしら……。お祖父様はこれ以上は外殻は落ちないって言ってたから、もしあるとしても、お祖父様も知らない機密情報なんじゃないかしら」

まあ、そうだよな、と思いついたルークさんも、しょぼくれながら頭をかいている。その中で、ふと、アニスさんがまるで独り言のように、小さな声を出した。「イオン様なら、知ってるかも……」 そう言った自分の言葉を言い直した。「知っているっていうか、ローレライ教団の最高機密も、調べることができると思う。導師様なんだし……」

だったらダアトに向かおう、とすぐさまルークさんは決断した。アルビオールが走行する。

その間、私とガイさんは何も話さなかった。互いに無言で、何も言えなかった。先程よりは快適なはずのルークさんは眉を寄せていて、互いに重たい沈黙を抱きしめた。






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2019-12-19