めがね、めがねめがね


月曜日、一緒の授業。

柳くんとお話してる。お話してる。レポート書きました? もうちょっとで提出ですよね。うん、そろそろだね。私は、まだだよ。柳くんは? 実は僕もまだです。
いまだにドキドキして舌がもつれてしまいそうになるけれど、やっとこさ柳くんと会話が続くようになってきた。相変わらず柳くんの顔を見るたびにぽーっとしてしまって、話しかけられるとあわあわしてしまうときがある。でも慣れてきたと言えば慣れてきたのかもしれない。月曜3限、月曜3限。にこにこしてしまってたまらない。

そんな訳で月曜日が終わった火曜日はあと6日かー、と一人ため息をつきながらお弁当をいじいじする。他の友人さんたちは体育だという理由で一人だけのけものになってしまうのが火曜日なのだ。私も一緒に時間割を合わせたらよかったなぁ、と後悔してももう遅い。まさかこんな結果になるなんて思いもよらなかった。

はー、ともう一回盛大にため息をついてベンチの上に腰を下ろしたとき、「あれっ」と背後で聞き覚えのある声がした。上を向いてみれば、さらさら綺麗な、ピンクとも紫とも言い難い髪の毛が揺れている。「さんだ。お昼ですか?」「お、ひるっです!」 声が裏返った!


いくら慣れたとは言ってもいきなりは心臓に悪い。お弁当をおっことさなくてよかったー、と安心のため息をついてしまった。すると柳くんが、「あ、またため息だ。やなことでもありました?」「え、いやいやいや」 また、ということは私の盛大なため息を聞かれてしまっていたのだろうか。う、う、うわあ、とほっぺを叩いた後、いやいやいや、声にならない声の代わりに精一杯手のひらを振った。

「あ、一人、時間割であぶれちゃって、火曜日、ご飯一人、で……」

えへへ、と笑ってみるも、これじゃあ一人寂しい子じゃないですか、と自分の台詞に後悔して死にそうだ。案の定、柳くんはパチパチと瞬きをした後に、空を見上げた。そして片手に持っているコンビニの袋をかかげた。柳くんも今からお昼なのかもしれない。

てくてくと柳くんが歩を進めた。あ、行っちゃうのかなー、と思った時、柳くんはどすんと私の隣に腰を下ろした。そしてコンビニの袋からカツサンドを取り出してあぐっと口の中に含む。私がパチパチ瞬きをしていると、柳くんはちょっと顔を赤くして、「あ、隣いいですか?」と首を傾げた。「え、う、う、うん」もちろんいい。大丈夫。おっけいおっけい。サプライズ!

けれどもそのとき、柳くんの鞄の中でぶるぶるとケータイが震えた。柳くんはケータイを取り出してぱかっと開いた。そして「ごめんなさい、いいですか?」と首を傾げたので、私はうんうん頷く。彼はカチカチとボタンをいじると、パタンッとケータイを閉じて鞄の中に入れた。「柳くん?」「はい?」なんでもなさそうに彼は笑う。
メールをいじっている柳くんを見て、あれ? と思いだしてしまったのだ。

「柳くん、お友達と食べるんじゃないの?」
「うん? 大丈夫ですよ」

いつも一緒に他の人と食べてるのに。
おいしいですねぇ、と柳くんはコンビニのカツサンドをほおばり続ける。いいのかなぁ、と思いながら、私はお弁当をつついた。なんだかどきどきして、ご飯の味がよくわからない。なのに、なんとなく、あ、おいしいなぁ、と思って、自然とほほ笑んでしまった。


月曜日、柳くんと一緒に授業
火曜日、柳くんと一緒にお昼ごはん