Dona Dona

不幸の法則 2

赤髪のひとは、やっぱり訳も分からずべらべらと異国の言葉を喋っていた。



ぱっと再び私が目が覚めたのは、ふかふかなベッド、なんて訳でもなく、とてもとても硬いフローリングとも言えないような、薄汚れた床の上だった。何故床、何故床なんですか! と叫んだ後に飛び起きて暴れる一歩手前だったとき、その赤髪の男の人は私のお腹の上にどどんと座った。「ぐふっ」 何故座る、何故座る!?

成人男性(しかも外国人らしく体格がガッチリしている人!)が乗せられた事で、私のお腹は壊滅寸前だった。いつの間にか気づけば景色は変わっていました。赤髪さんに出会っちゃいました。そしてただ今何故かお腹に、(お下品にいえばう○こ座りポーズで)座られちゃってます。その上葉巻まで取り出してぷはーっ! と白い煙が頭上を通っているっているのに、落ち着ける程私は冷静じゃない。

「おーりーろー!」

綺麗に背中でくくって、お気に入りのウサちゃんエプロンだったけれど、そんな事気にしない。体勢を変えようと何度も体を左に揺すったり、右に揺すったりしているせいか、お腹のウサちゃんはのびのびだ。ごめんよウサちゃん。


赤髪のお兄さん(オッサン?)はタバコを吸ったまま、喉を軽く唸らせて、また意味の分からない言葉を吐いた。意味が分からないものだから勝手に英語か何かかな、と考えたけれど、もしかしたらフランス語とか、ロシア語とか、イタリア語とか、別のものかもしれない。それでも私には理解できない言語って事で変わらないのだけれど。

逃げるように体を揺する私をお兄さんはおかしそうに大声でグハハ! と笑った。いやいやどけってばさ!
振り上げられた足は、簡単にお兄さんに押さえられるし、何がどうなってんだろうかとぐるぐると混乱してきた。
ってキャッチセールスとかすぐ捕まりそうだよね気をつけてー』と気のない台詞を漏らしていた友人の言葉を思い出して、もしかしてコレが今時のチャッチセールスなのか、そうなのかー!


もう半分泣き出しそうになっていた状況に、お兄さんが、私のウサちゃんを指さして、何か呟いた。

「Apron?」

え、何ウサギさんがどうかしましたか?
こくん、と首を横へと倒してみると、半分かぶった仮面から見える反対側の眉毛をめんどくさそうに折り曲げて、ゆっくりとお兄さんはもう一度喋った。

「Apron?」
「えぷろん?」

今度はハッキリ聞こえた。
暫く呆然としてしまった後に、私は勢いよく頷いて、なんだかもの凄く嬉しい気分になってしまった。だってさっきから何も通じなかったっていうのに、単語だけでも通じたのだ。頷いた。もの凄く。

そんな私を見て、お兄さんは軽く頷くと、立ち上がり、扉の向こうへと消える。やっとこさ起きあがった自分の体を見てみれば、所かしこに埃が付いてしまっている。さっきのお兄さんも土足だったことから、ここでは土足が基本なのだろうか。私の足に、いつも通りピッタリとくっついた上履きを見て、「………うう、この部屋、ばっちい」


呟いた言葉が聞こえたのかと思う程、大きな音を立てて、ドアが開いた。
部屋中の埃がばさばさと大きく舞って、ドアの隙間から照らされた光に、埃がまたまた。ば、ばっちい!

腰半分起こしたままだった私を、お兄さんは片手で持ち上げた。
そしていった。

「Cook a meal!」

すみません、やっぱり何いってるか分かりません。

手渡された食材とナイフに、なんだこれ、お兄さんをぶっさせって意味なのかとナイフをギラリと光に反射してみた後、いやいやそんな訳ないですよねと長細いトマトのようなものを掴んでみた。
もしかしてアレだろうか、これご飯作れっておわれてるのだろうか、私。

………うん、いやまぁ、いいか。



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2008.07.11





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