Dona Dona

一緒に食べる

もむもむといつも通りラビさんと一緒にご飯を食べていると、白い髪の少年が、「ここいいですか?」と大量のご飯を両手に持ちながら首を傾げた。
ラビさんが頷く前に私は少年のお盆の一つを取ってさかさかテーブルに並べる。次に運ばれてくるご飯を、調理場の人達と並んでサカサカと準備した。男の子が「あー」と声をあげて、「すみません」 ちょっと苦笑する。
厨房にいた白いバンダナのお兄さんの、お前休憩中じゃなかったのか、と見られた視線に、おっと気づきいそいそと席に戻った。
「相変わらずさー」と呆れたようにラビさんが呟いて、席に座った私の頭をよしよしと撫でる。これが私のお仕事ってヤツなのだ。んっと頷いた。

「よく食べんね、アレン」
「まぁ寄生型ですし」

聞こえた会話に、よく分からない単語が混じった。寄生型。きせい? きせい。私は椅子に乗せた足をぶらぶらしながら、ラビさんラビさん、とちょいちょいと彼の服の端を引っ張る。んん? と彼は首を横に倒し、上へと上げた髪の毛が、ほんの少し揺れた。「きせがた?」 ちょいちょいと白い髪の少年に、指をさすのは失礼だと思ったので、顎でぐいぐい、と示してみた。

するとラビさんが、んんー? とスパゲッティを口に含んだまま目をきょときょととさせ、ああっと気づいたらしく、口をペラペラと動かした。白い髪の少年は気にせずにもむもむと一心不乱にご飯を口の中へと詰めていく。信じられないスピードで消えていくご飯と、ラビさんの早口にうおおお、と首をぶんぶんと動かした。ラビさんは元来、早口なひとらしい。
「ラビさん、すろー、ゆっくり、すろー!」
彼はおっと気づいたらしく、私の首もと辺りの髪の毛をぐりぐりいじりながらゆっくりと言葉を交わした。

「そうさー、アレンは寄生型で、俺は装備型ー」


………………よく分からない単語が、ふえた。
なんかもうどうでもよくなってきて、う、と頷いた。小学校の先生に「さん分かってないのにすぐに頷くのはやめなさい」と怒られた経験が頭の中で過ぎていった。先生やっぱりわからんものはわからんです。

なので目の前のスープをずずず、と胃の中にかきこんで、もう一つの質問をしてみる事にした。「ラビさん、あのひと、あれんさん?」
白い髪の人は、どこから取り出したのは骨付きのお肉をがぶりと噛んで食べている。ぷっくりふくらませたお口はなんだかハムスターみたいでワクワクする。
「そうさー、あれ、名前知んねェの?」

知らない。彼はお客さんみたいなものだったのだ。ううん、とブルブル首をふると、「じゃあ自己紹介な」と私の頭をくりんと彼に向かわせた。
彼はみたらし団子を口に含んでいて、竹串が突き刺さったまま、んむ? と私を見詰める。
私も同じようにんん? と首を傾げると、ラビさんが私の頭をぽんぽん叩きながら、「アレン、この子、っていうんさー」

なんだか若奥様の幼稚園児を連れての公園デビューみたいだ。
私はまぁそんなもんかなぁ、と納得して、うんうん頷きながら、アレンさんにゆっくり手を出した。はんどしぇいく。きちんと覚えた。

です。よろしくでおねがいです」
、よろしくお願いします、さー」
「う、よろしく、おねが………? です!」
「略すなよ」

ピシリとラビさんに頂いたデコピンに、おでこをさすさす触ると、くっ、と目の前のアレンさんが喉を震わせた事が分かった。
彼はみたらし団子を一気に食べて、から、竹串を取り出して、にっこりと、とっても紳士的な笑みを浮かべる。

「アレンです、よろしくおねがいしますね」

うっ、と頷いたのもつかの間。あれん、あれん、アレン? さんは残っていたみたらし団子を、またぶほっとお口の中に放りこんだ。
見慣れた光景に、何度見ても、「胃にもたれないのかな?」と根本的な事が気になってしまう。そんな事を思うのは私だけなのか、周りの人たちはアレンさんには目もくれず、黙々と自分のご飯を食べていた。

そのときだろうか。ラビさんと、アレンさんの服が、なんとなくおそろいのように思えたのは。所々のデザインが違うものの、黒を基準とした服装と、装飾品がとっても似ている。
周りの人たちも人たちで、そろいの土色の上着を羽織っていた。

そのときになって、「アレッ?」と自分自身、ちょっと首を傾げてしまった。
何度も考えた、ここって何の施設? という思考が、またまた襲ってきたのだ。ラビさんとアレンさんが時々交わす、「アクマがさぁ」という単語が聞こえる。あくま?
ん? ん? と何度も首を傾げ、せっかくなのだラビさんに訊いてみようじゃないか! とちょいちょいと彼の上着を引っ張ったときだった。

「ふぁい、

ふごふごしたアレンさんの声にふりかえると、美味しそうな、茶色いたれがかかったみたらし団子を私に向けて、ぐいとつきだしていた。
とろとろのタレが、零れてしまいそうで、机に付いてしまう直前に、私は手のひらでそれを受け止める。思わずぺろりと舐めると、とっても甘い。「たべまふ?」

アレンさんは、ちょっとふごふごした発音で、何をいっているのか分からなかったけれど、ぐい、ぐい、と突き出されるお団子の魅力に私はどうしてもあらがいきれなくて、

がぶり。


(おお、おいしいぞ!)


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2008.11.03



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