ぴょんぴょん、とはねたオレンジ色を発見した。いつも通り、「ラビさん!」と手を振ると、彼はうっと妙な顔で唾を飲み込み、1、2歩下がる。 ん? と首を傾げれば、彼は苦笑いでもするように、口元を微妙に歪ませ、両手をぱっと顔前へと上げた。 私はそんな彼の奇天烈な様子をじぃっと見つめ合い、さっと彼の服へと手を伸ばした。 「う、うわっ」 「え」 ぱちんっと弾かれた手のひらは、特に痛くもなんともないんだけれども、彼が「あっ」とやっちまった! な表情をぽかんと見詰めた後に、手のひらへと視線を落とした。軽くはたかれただけだ。なんともない。 なのにラビさんは、「ああああ、わりー!」 と私の手のひらをぐいっと引っ張って、ぎゅう、と握る。手のひらの体温がぐつぐつと伝わり、暖かいなぁ、と思ったので、「きもち、いいです」とありのままの感想を伝えてみれば、彼は慌てたようにまた手のひらを離し、赤い頬を自分の手の甲でぐいっと隠す。 「………ラビさん?」「な、なんでもないんさ!」 自分はラビさんに嫌われてしまったんだろうか。いつもならば、隣に座っているはずのラビさんの影が、今日は白い髪の少年だ。食堂でジェリーさんから「おまけよん」と頂いたのか、みたらし団子数本を口の中に放り込みながら、彼はふごふごと発言した。 「ちふぁうとおもいまふ」 「………あの、わからない、ます」 「違うと思いますよ、僕は」 ごくり、と喉を動かしながら、また新しいみたらし団子を口の中にぽい。喉につまっちゃいますよ、と注意をしてみても、大丈夫ですよ、心配してくれてありがとう、とにっこり爽やかな笑みで流されてしまった。む、じぇんとるめん。 「僕、そういうのよくわかんないんですけどね」 「そういう?」 「はい、そういう。何ていうんですか? お年頃」 「オトトゴロ? ん、オト? なにですか?」 「え、うーん、分かんないんですか、えーと、要約しますと、adolescent...いや違うなこれ」 「あどわ?」 「すみません忘れてください」 にこっと綺麗に微笑まれた表情に、思わずうん、と頷いてしまった。 けれどもやっぱり納得いかなくて、別にラビさんが、私を嫌いになろうが、めんどくさく思おうが、彼の勝手に違いないのに、そんな感情も情けなくて、何故だかどうしても、私は嫌われたんじゃない、きっと違うと諦める事のできない気持ちも、しっかりと居座っている事が泣けてくる。 ちょっと前ならば、しっかり泣いて、落ち込んで、しょうがないなぁ、まあそんなもんさ、とにっかり笑う事が出来たはずだっていうのに、なんでだろう。 しゅん、と落ち込んで落とした視線は、私の影へと落としていた。 照明に揺らされる光が、情けなくしょんぼりとした私の身体全体が浮かび上がっていて、その隣では元気にもしゃもしゃとみたらし団子をほおばるアレンさんの姿。 「アレンさぁん」 半分泣きそうな声を出しながら、きゅう、と目を瞑ると、ぽん、と彼の手のひらが私の背中を叩いた。その衝撃でふいに視線をはじき飛ばすと、見慣れたオレンジ頭の青年が驚いたような顔をして、ちょいちょいと黒い右の眼帯をいじくっていた。「う、あ、」「」 はっと安堵したようなため息を彼が上げて、ちょこんと私の前で体育座り。 いつもよりも近くなった視線に、思わず身体をのけぞらせると、アレンさんの手のひらにガチンとぶつかってしまった。 「ひえ、ごめなさい!」「いえいえ」 彼は人の良さそうな、なんともいえないような表情でにこーっと笑い、食べ終わったみたらし団子の串を、びしっとラビさんの襟元へとつっついた。何するんさ、と怒る彼に、いーえー、と何か含んだような笑いで、さっとその場から立ち上がる。 それじゃあ、と紳士的に手のひらを振る事も忘れずに、颯爽と消えたアレンさんへと視線を逃がせば、「こーらー」と、ぽこんと頭を叩かれてしまった。 ぐーの形で、撫でるように、もう一回ぽこん。 「ラビさん、なにするですか?」 「だーって、ってば、いねーんだもん、一緒にメシ食べようとしたのにさぁ」 「だって、それは」 「だって?」 ラビさんが、何だか変だったから、避けられる前に、避けてしまっただけなのだ。 考えてみれば、何だか理不尽で、見下ろす形のラビさんからちょいと視線をはずして、「なんでも、ないです!」 そーなんかー? といいながら、くつくつと笑う彼の声が聞こえて、気のせいかほんの少し、迷うように彼の人差し指が震えたような気がしたけれど、つん、と長い指が私のほっぺたにひっついた。 「ふくれてんよ」 ふぐみたいだ、とカラカラと笑う声が聞こえる。 やっぱりなんだか、理不尽だ、と思った。 BACK HOME NEXT 2008.12.01 |