Dona Dona

きっとでたぶん

食堂へ行った。


基本的に、研究室にいる人たちは、食堂へ行かない。行っている暇がないくらいに忙しいらしくて、直接デリバリーか美味しくなさそうな錠剤や、ちゅるちゅる啜るウィダーイン。どこにでもあるのかウィダーイン。
けれども缶詰状態じゃあつまらないだろう、とリーバーはんちょが気をつかったのか、よぼよぼな身体を押して、「食堂へ行こうか」と日光に数日当たっていない観葉植物のように言い放った。
私は頭を下げた。いや勘弁してください、それより寝てください。リーバーはんちょ死んじゃいます。

「私、ひとりで、いけまる、ますよ?」

本当か? ともの凄く疑いの目を掛けられながらも、よぼよぼリーバーはんちょに負けるはずもなく、半分脳みそのとろけた彼は、じゃあ行ってきなさい、とパタパタと静かに手を振った。ひつちょさんはぐーすか寝てた。






バッタリだった。笑えるくらいにバッタリだった。

彼はいつも通りなオレンジなにんじん頭をぱっと揺らせて、幸せそうににこーっと微笑んだ。「ー、どこにいたんさ? 俺もーさがしまくっちまったんだけど!」

食堂へと向かう道の中で、こっちかなぁ、こっちかなぁ、誰かいないかなぁ、聞こうかなぁ、と思っていた矢先だった。

そんな優しい言葉と一緒にかけられた台詞に、私は思わずぽろっときそうになってしまった。
ラビさんのお腹へと突進するように頭突きをくらわせて「ぐふっ」と彼が苦しそうな声を上げたのだけれども、聞こえないふりをして、ぎゅうう、と思いっきり背中へと手を伸ばした。

「いやいやいやいやちょっとさんいやいやさん!」

何故だか慌てたようなラビさんの台詞も一緒に聞こえないふりをして、回した手のひらに力を込めると、彼は諦めたように短くため息をつき、私の背中へと、ぎゅーっと手を回した。「ほんとにさー、どこにいたんだよ。ジェリーもさ、みんな知らんっていうし。ほんとにもーこのこはー」

まさに、こうだったらいいなぁ、と想像していた台詞を、彼はすらりといってのけて、えええとビックリする反面、もの凄く嬉しかった。もしかしたら、私はサトラレというやつなのかもしれない。考えがだだもれだったのかもしれない。

うー、とラビさんのお腹にぐりぐりと頭を動かすと、はいはい、と頭を撫でられた。暫く動かされていた手のひらに気持ちよくなって、思わずうとうととしてしまったときに、「」 ラビさんに、ふいと声を掛けられる。

ぱっと手のひらを放されて、彼は私とラビさんの身長差をなくすように、ほんの少し頭を下げた。同じ目線になるのはどこかへんな気分がして、思わずへらりと笑ってしまう。

「あのさぁ」

どこかいいづらそうに視線をきょろきょろとさせていたラビさんの頭へと、ちょいと手を伸ばした。あんまりにも簡単に手に届く範囲で、よしよし、と案外柔らかい頭を撫でると「コラコラ」と台詞は怒っていたけれども、柔らかく笑いながら彼が呟く。指と指の間に、つんつんとした毛がひっかかって、ほんの少しこそばしかった。「うーん、、俺さぁ」「はい?」「多分のこと好きかも」

今度はラビさんが、私の頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜる。私はケラケラと笑って、「はい、私も、ラビさんすき」 暖かい気分になれるのだ。会いたいな、と思ったのだ。

えへへ、とにこにこ笑っていると、彼はきょとんとした顔をして、「うん? あれ、ちゃんと分かってる?」「はい?」 首を傾げれば、彼はうーん、と唸って、くしゃくしゃにした私の髪の毛を、少しづつ直していく。「まぁいいか」

ラビさんは、ほんの少し手のひらを躊躇させるように揺らせて、ぐー、と妙なうなり声を上げたのかと思えば、「とお!」とかけ声つきで私の手のひらを掴んだ。

「食堂、一緒にいこうな」
「はい!」



多分、私は初めて、本当に、今現在、とっても。



しあわせだなー、と感じた。






その日、私は元の世界へと戻った。


BACK HOME NEXT


なんだこのアホっ子は。誰が書いた。私か。

2008.12.23



background by Sky Ruins  design by Be Just Simple