理不尽大爆発な夕焼け小焼けの放課後。 ああ……情けないなぁ、なんかいきなりそんな風に思う時ってないだろうか。俺にはある。「フッ、フッ……!」 いやあ本当に情けない話なのだが、この頃毎日そんなことを考えてしまうのだ。「フッ、フッ、フッ……!」 しかしながら人生そんなもん。情けなくてなんぼ。しょうもなくてなんぼ。「フッ、フッ、フッ、フッ、フッ、フッ、フッ……!!!!」「フッフ、フッフうるせええええ!!!!!」 隣では俺の友人(らしい)小学生男子一名が、ぎゅっと拳を握りしめながら拳をつきだす。つきだす。つきだす。 「何お前なにしたいの含み笑いでもしてるんか!」 「なんだ知らんのかこれはシャドーボクシングと言うのだ」 「知っとる」 「むむ、よし、俺が指導してやろうではないか、さあ拳を握って」 「黙れ」 「レッツボクシング!」 「無視すなアアアアアア!!!」 なんでだろう。俺はなんでこんなストレスがたまる男(笹川)と二人さみしく下校をしなければならないんだろう。アンサー、友達がいないから。 考えただけでもウッ……! と涙を誘うこの事実。笑えよ。笑ってくれよ! あーあーあー、と頭をガッとひっつかみ、ぶんぶん振るうこと何回目。 なんで俺はこいつと友達してるんだろう。クエスチョン、再び。 帰納的に考えてみようじゃないか。寧ろあれだ、俺と友達になってくれるヤツが、こんなやつ(間違えた)こいつくらいしかいないのだ。そう考えれば、笹川ってなんだかすごいやつなんじゃない? とか思えなくもない。いいやすごい。 ふと脳裏に、チュンチュン激しく口ばしを突き出す、某雀くんを思い出した。あまりの突きのスピードに、俺はついていけず、「ギャアア! 痛い、やめて堪忍シテェ! ぶん殴るぞオラァ!!」 なんて無謀にも毎回拳を振るい、毎回ボコボコにされる訳ですが、笹川を見てみようじゃないか。 現在俺の隣にてシュッシュシュシュと激しく拳を突き出しておりますが、こいつが一体何をした。ぶっ飛ぶ拳が俺に向かうことはなく、寧ろ俺が拳をぶっ飛ばせること多々。しかし彼は明朗闊達にも、「ハッハッハ、その調子だー!」と嬉しそうに拳を握る。 多少暑苦しいかもしれない。多少うざいところがあるかもしれない。多少……なんか、こう、うん、ちょっとあれだよね。なんて思うところがあるかもしれない。けれども、けれどもこいつは、俺なんかと友達になってくれた、唯一の男気あふれる男なのだ! はからずしも、俺はぐっと拳を握りしめていた。そんな様子に気づいたらしい笹川は、「どうした、ボクシングか!」と相変わらずの大声で呵々と笑う。 俺は無言で拳を突き出した。なんとなく照れくさかった。だから、すっと親指を突き出し、ふっ、と笑う。「……ぼくしん、グゥー……」 親指、グゥー 笹川の冷たい目が痛々しかったです。 (まさかの常識人ぶりだよ) じゃあなー、と笹川宅前にて手を振ると、オウ! と元気よく笹川は拳を突き出した。中から聞こえる「おにいちゃん」という声に、笹川って妹がいるのか、暑苦しい女の子だったりしたらどうしよう。だなんて俺が心配する必要のないことまで心配してぶるりとしてしまった。ぶるり。ぶるぶるり。(あれ) なぜだろう、寒気が止まらない。笹川の妹(予想ヴァージョン)にてぶるぶる体をふるえる小鹿ちゃんとなってしまった俺自身に首をかしげつつ、ふと、何気なく、振り向いた。後ろを。「あ」 逃げた。「あああああああああ!!!!」 しかしながら、俺の悲鳴にかき消されることもなく、静かに静かに、背後にて声が聞こえたのだ。「咬み殺す」 決め台詞!? 振り向いたそこには、真黒い黒髪に、切れ目な瞳が素晴らしい、凶暴な鳥類だった。鳥類はまるで瞬間移動でボクはここに来たんですよー、と主張するように、俺の背後にて佇んでいたし、学校外にて遭遇することが初めて経験の俺にとって、恐ろしく混乱する出来事だった。え、なにこれ、なにこれ、意味わかんない、なにこれ。 名前に反して、生憎ながら羽ばたくことのできない彼は俊足だった。しかし逃げなければいけない。俺は逃げきらなければいけない。なぜならこの凶暴な生物を自宅に持ち帰りたくないからです! ばくばく暴れる心臓を押さえつけるように、胸を服ごと握りしめても、口から絶えず漏れる息で、俺の限界が近いことは分かっていた。 破れかぶれの作戦だった。「すずめくん!!」 ぐるん、と振り向き、いきなりのブレーキに、きょとん、と驚いたような表情をした彼に、ガァ! と勢いよくたたみかける。「なんでこんなとこにいるの!」 こんにちはレッツコミュニケーション!(あれこれ前失敗しなかったっけ) いいやあのときよりも、俺は多少はスキルが上昇しているはず。もっと! もっと自分に自信を持って! そんな叫びを心の中で繰り返す。「暇だったから」 打ち砕く。 (……暇なら人をストーキング……?) えっ、ウッソこの子……、なんて手を口元に当て、そそくさと一、二歩下がったところ、「というのは冗談で」 ウッソこの子。「たまたま見かけて群れていたから殴ろうと」 何この子!? 群れるって何だろう、っていうか理不尽すぎじゃね? という疑問を抱えつつ、俺はそっと手のひらを挙手してみせた。この頃気づいた事実なのだが、彼はこんな学校的なポーズには少々優しくなる(かもしれない) 「ちなみに、いつから」 「ぼくしん、グゥ」 「アウチ!!」 渾身のギャグ、見られてました! 「ねぇ、このぼくしんグゥってどういう意味なの、よくわからないんだけど」 「やめて! ネタの説明をさせないで! これ以上追い詰めないで!!」 「なんでいちいち、グゥって引き延ばすの、発音的に正しくないと」 「やめてって言ってるのに!?」 薄々気づいてた。この子暴君だって。 ウワアアアア、イヤアアアア。よくわからないけれども理不尽なまでに恥ずかしくなった気持ちをぎゅっと抑え込んで、あれ、俺ここまで雀くんと会話が成立したなんて初めてじゃね、と少しの光明に、ふと気付いた。そうだよ、雀くんだって、人間なんだ、コミュニケーション。これが重要だった。動物と一緒にするなんて、失礼だった。そうだよ、いける、俺いける。 「雀くん」 ふっと俺は右の手を差し出した。差し出した形は握手のポーズ、いける、そうだこれはいける。「あ! ユーフォー!」「え」 人さし指。逃走リターン! 激しく足を動かしながら、俺は感じる。(そうだよ獣と一緒にするからダメなんだよ、人間を相手にテクニックで翻弄しつつ、そして相手が狂犬いいや狂雀だと忘れずに!) 俺賢い学びました! ヘッホイ! 勝利のままに、俺が指さした方向を、ぽかんとした表情で見つめる雀くんを想像しながら振り向いた。 ぶんっ 振りかぶられた黒い影に、ウワアアア雀くん足はやーい、なんて思いつつ、気づけば赤い夕陽の中で同じく真っ赤な鼻血をどくどく流す俺がいた。ああ、鼻が……あったかい……地面が近い……。 BACK TOP NEXT 2010.01.02 1000のお題【947 破壊神降臨】 |