strike.muss.death



よくわからないなんてことがよくわからないような。




雀くん♪ 雀くん♪ なんできみは、そんなに、乱暴、な、のぉー♪
俺の、胸、は、(ららら) 毎日 ド キ ド キ (らららそれは恐怖ー)
君は♪ 俺の前に 舞い降りた

だいまおう〜♪(おうー、おう−、おうー)←エコー


即座にそんな歌詞が頭に浮かんでしまうくらいに彼はいつでもどこでもバイオレンス。っていうか今の歌なに俺なに自分の歌詞センスのなさに絶望した。別にそんなのいらないけど。

今日も今日とて振り下ろされる真っ黒トンファーを、右手にて装備していた俺の上履き(現在片足靴下状態)でガシッと受け止め、ギチギチと押され押しつつ、接近しつつ。震えてきた腕を叱咤しつつ、舌打ちし、転がるように離脱するが、彼の追跡はやまずもう片方のトンファーが、ぎゅるりと宙を舞い、命中した。おもに俺のケツに。「グバオチィ!!!」 精神ダメージからか、思わず人語以外の言語を叫んでケツを押される勢い+上履きが片方(イン俺の右手)+階段前廊下がこんな状況を生み出した。


つまりは空中熱烈ダイブ


アー、アー、アー、アー、アー…………
見事顔面スライディングを遂げ、冷たい階段の踊り場にて直立姿勢、手は横ビシリのまま、床キッス。摩擦で顔がひりひりしつつ、人生ってなんだろうね。生きるってなんだろうね。と常々と語りたい小学6年生、現在冬休み(平和到来)の日々を説に祈りたくなる。

むくりと起き上がり、階段上にてこっちを見下ろす雀くんは、相変わらず無表情で、そこにくっつく、腕から伸びた黒い影(トンファー二本)を見るたびになんだか死にたくなる気分になる。人生ってなんだろうね。

「雀くん、生きるってなんだろう」
「君は本当にいいサンドバックだ」
「会話の成立ナッシング!?」

まぁ自分でもちょっと唐突かなァー? って思いましたけれどもッ!!

ことん、ことん、ことん、と一段一段階段を下りる雀くんが近づくにつれ、無表情だと思った瞳は、意外と楽しそうにらんらんと光っているように見えた。なんだかんだといいつつ、毎日ぼこられデイズを送っている俺達なのだ。悔しいことにも、男と男の拳で語っている訳なのだから、交友の深めあいでもあるかもしれないようなないようなやっぱり違うような。

近づく間にも、「君はなかなか壊れないね」と嬉しそうなのか、失礼なことを言っているのか、寧ろいやあそれほどでもと喜べばいいのかわからないようなセリフを言っている。口数増えたなぁ、雀くん。と思ったときに、ふと思ったのだ。あれ。

「雀くん、俺の名前言える?」


いきなり放り込まれたような中途半端な間がやってきて、雀くんは眉毛の根っこを寄せあわせ、「君だろう」といってきた。

「いやキミって名前じゃないし。それ二人称だし」
「君は君だ。生きるサンドバックと呼んだ方が正しいかもしれない」
「それ全然正しくないですよ!?」

うすうす気付いていた雀くんの俺認識に、がくりと肩を落とし、おいおい。と一人ごちる。

それでも、まぁ、腹が立たない自分にちょっと驚きつつ、「雀くんよい」と声をかける。せめて。まぁこれだけはね。「俺の名前はっていうの。人の名前を間違えるのはちょっと失礼なんだぜ?」 んね?

いってみいってみ、ともう一回言ってみる。「ですよ」 いいかい。雀くん。ちっちっち、と指を左右にふりつつ、雀くんでも分かりやすいように、まるで幼稚園の先生になったかのように      よし、そろそろ殴られるな俺。

思わず反射的に目をつむってしまったのだが、いつまでたっても口の中は唾の味のままで、鉄臭い味は広がらない。無意味に右手だけちっちっち、と動かしたまま、その動きも緩慢になり、こそっと目を開けてみた。自分のまつ毛の間から、トンファーをふりかぶる雀くんが出てくるかと思いきや、彼はなんともいえない表情、片目だけ、ちょっとほそめて、口元が、ちょこっとひねられて。「雀くんどうした体調が悪いのか」 俺のことを、殴らないなんて。

自分自身、どうかと思うセリフを考えつつ、彼を見ていると、雀くんは唐突に、顔を下げる勢いで、「ぶはっ」と息を吐きだした。簡単にいうと、耐えきれないとでもいうように噴き出した。結構盛大に。

思わずぽかんとその光景を見て、雀くん自身、やっちまったと思っているかのように、自分の口を右手で押さえてから、目を右へと逃して、そして手のひらの間から、僅かに見える口は相変わらずシニカルに笑い、「そうだね、名前を間違えるのは失礼だ」と俺のセリフを繰り返した。


ぶはっ、ともう一回噴き出してから、興がそがれた、とでもいうように、雀くんは俺へと背を向け、そのまま階段を下りていく。俺はといえば、ぼこられなかったことが不思議で不思議でたまらず、きょときょとと視線を横へ縦へと移動させて、「……ラッキー?」 よくわからんけど。



次の日雀くんは俺のことを殴らなかった。「やぁ」と言ったまま、静かに授業を受け、ふと授業中に、俺へと話しかけてきた。「、君はもしかしなくとも馬鹿なのか」「え、うん。割と」 答えてしまった後に、俺ないわ、これないわー! と頭を抱えたのだけれども、やっぱり殴られないままで、なんでしょうか、このオチはひょっとして初めて? このままこんな感じで終わっちゃう? と嬉しいような悲しいような……いや、普通に、嬉しいよね?




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2010.05.05
1000のお題【441 そんなに驚くことないのに】