「おう、

トコトコトコ。今日も何事もなく、のんびりと、ああ今日はいい天気。
…なんて思いながら、廊下を歩いてたはずなのに。



 第2話  私と山本くんの学校事情



「や、ややや、やまもとひゅ、いたっ」
口かんだ!

おいおい大丈夫かよ、と私の頭に伸ばされた手を即座に叩き落として(そのとき山本くんがちょっと悲しそうな顔をした)辺りをきょろきょろと見渡して、誰もいない事を確認。
「ちょっと来て下さい!」と、腕をひっぱって、校舎の階段下へと移動した。(そのとき山本くんが「なんだちゅーするのか?」とかいって来たけど無視だ!)

「山本くん」
「ん? ちゅーか?」
「しません!」

まぁまぁ、といってまた私の頭へと手を伸ばした山本くん。やめろっての、の勢いでばしこん! と弾こうとする前に、彼の手が、私の頬へと伸びた。え、何ですかコレ、顔固定? じー、と見つめてきた視線に、あれあれ、ちゅーですか、ちゅーですか!

おもわずぎゅ、と目を瞑ったら、「冗談だって」って声がして、ちゅっ、ておでこ辺りに、

「って、ななななな何してるんですか!」
「え、ちゅー」
「ちゅーちゅーいわないでください!」
「いいじゃん、口にしてないんだから」
「そういう問題じゃありません」

ああもうホントにこの人のテンションについて行けない。はー、って一回息をついたら、「幸せ逃げるぜ?」といわれた。アナタの所為なんですけどね!
はー。もう一回、改めてため息をついて、彼をちらりと見てみる。……うん、悪びれもなにもない顔だ。

「あのですね、山本くん。学校じゃ声を掛けないでくださいって何回いえばいいんですか」
「いったっけ、そんな事」
「いいました。ものすごくいいました」
「別に声を掛けるくらいいいじゃん」
「私は、学校じゃ至極平穏に生きていたいんです」
山本くんのファンに見られたらどうするんですか!

それくらい大丈夫だって! といいながらにかっと爽やかに笑うこの男に殺意を持ちそうになりました。それくらいじゃないのは、小学校時代に十分理解しているのですよ。

「じゃあせめて、ではなく、と呼んでください」
「ん? いやだ」

「やだ」
!」
「やーだ」

まぁまぁ、いいじゃんなぁ? とぐしぐし私の頭を撫でながら、山本くんはいう。ついでに耳へと口元を寄せて「ちゅーしてくれたら、考えてみてもいいぜ」
ひあっ! とまた真っ赤になった私に、くっくっく! と笑みをこらえきれない、みたいな彼に、ちょこっと、イラついてしまったのだ。

がしっ! と山本くんの(私より幾分か高い)顔を両手で掴んで、そのままぐっと体重を掛ける。「うわ」って声が聞こえた。私が背伸びした。ちゅ、って、音が、した。

目の前には、ぱしん、と額に手を当てている、山本くん(ざまーみてくださいな!)

「もう、学校じゃ話しかけないで下さいね」

それだけいって、だだだっと私は駆け抜けた。


そんで小さく彼は呟く「……口じゃないと、オッケーできねぇな」


「おう!」
「ひえっ学校じゃ、ってあれ程…っ」
「次、口にしてくれよ。…っていうか俺がしていい?」
「死んじまえこのばかたれー!」






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2007.07.21