今日も彼女を見かけた。



 第4話  雲雀さんと彼女の委員会事情 1



このごろ僕はとても暇らしい。気がつけば、ちょろちょろと動く草食動物(いやあれは小動物だ)を観察している。別に僕は新しくハムスターやらウサギやらを飼いだした訳ではない。僕はただ単に、小動物を観察しているのだ。

その小動物の名前はというらしい。別に気になって調べた訳ではない。草壁が報告してきた事実を、僕は記憶の隅においているだけだ。
その小動物は、大抵保健室にいる。小動物が怪我をしているもしくは授業をサボっているという訳ではなく(そうだったら僕が咬み殺している)ただ、保険委員という役職についているからだ。


僕はガラリと、目の前の扉を開けた。
真っ白に広がる部屋の中に小動物はポツン、と座っていた。「あ、雲雀さん。こんにちは」にっこりと笑いながらいった後に、「何処か怪我でもしたんですか?」

そのシュン、とした表情が、僕に向かっているのかと思うと、ゾクゾクする。まるで大きな獲物をボロボロになるまでしてぶっ倒したような感覚だ(別に僕はボロボロになんてならないけどね)
小動物は、僕の顔を見て、「うわ、切れてるじゃないですか」といって、脱脂綿を手早く取り出した。ちょん、とつけられた消毒液よりも、小動物がペタリと貼った絆創膏の部分がじんじんする(感覚が消えないんだけど)

「はい、終わりです」

ぱたん、としめた救急箱の音が、なぜだか響く。
怪我なんて、しちゃだめですよ、と小動物がいって、しゅん、とした顔をした。ゾクゾクする。けれどもそれ以上に、僕は小動物に、そんな顔しかさせていない気がした。
何ともいえない気分が、渦巻いて、取りあえず、コクン、と頷いておいた。一瞬小さく微笑んだ小動物。急に小動物の頭を撫でたいような衝動にかられて(小動物だからね)ぐ、と口の中を咬む(僕に咬み殺されそうだ)

ガラリ、とまた扉を開けて、そのまま僕は廊下へと出る。けれどもその瞬間、ぴたりと止まる体が不思議だ(なんだよまだここに居たいのかい?)
ごまかすように、言葉をすりだして、「ありがとう」「え?」「絆創膏」

たった一言で、僕の体が軽くなる。そのままピシャリとドアを閉めた。そのまま応接室へと向かう。

(なんなんだ、本当に)
(そういえば、このごろ保健室の利用者が増えたと草壁が言っていたな)
(それも男子に)

途端に、イライラとしてきた体に、僕は正直、このごろオカシイ、と思う。
草壁は、妙にこの頃小動物の事を僕に教えてくる。
そして僕は、妙に気になって、窓の外へと視線を向かわせる(そしてその先に小動物がいるから不思議だ)


一体なんなんだ、と言葉を出したところで、戻ってくるものは何もない。
(どうせ明日も、何かしらの理由をつけて、僕は保健室に行くんだろう)




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2007.08.05