| 今日のご飯は何にしようかなぁ、とぶんぶんと買い物袋を振り回している最中でした。 ぶるん! と振り回した袋の中身が、かさかさ、といった。うふふ、今日は特売が多かったので、とってもホクホクなんです。財布の中身も! 幸せいっぱいな気分で、山本家へと道を(夕ご飯を作るのは私の役目ですから)スタスタ進んでいると、不意に、小さな声が聞こえた。「ヒイイイイ! やめてくださいお金なんて持ってないですからー!」………何、このありがちな声は。 思わずピタリ、と止まってしまった足が、声の聞こえる方向へ、そろそろと進み出す。泣き叫ぶような痛々しい声の持ち主は、どうやら男の子のようで、道を進むにつれて光の入りが悪い、路地裏のような場所へと向かっていく。な、なんだろう。やっぱ、あれかしら、……あれだよねぇ。 ダイレクトに声が聞こえる場所へとやってきた。ビイイン、と響く少年の声。それにいきがる(多分、私と少年よりも年上っぽい)お兄さん方3名。高校生ぐらいかな、と思うと、「おいガキ、痛い目あいたくないなら、さっさと財布出せっつってんだろ」……こっちもまたありがちだ。 (……やな場面に、出くわしちゃったなぁ) どうしよう、と一瞬考えた時だった。少年が、泣きそうな顔をしながらゴソゴソとポケットを探り始める。……え、あげちゃうの? と思ったとき、今度は「あ!」と悲痛そうな声を少年が上げた。続く言葉は「さ、財布忘れた!」(え、これどうツッコんだらいいのかな!?) 「ああ!? 嘘いってんじゃねえよ!」 「うううう嘘じゃなくて、ほほほほホントなんです!」 「おいコイツ引っぺがして確認しようぜ。その後商店街に裸で放り出してやる!」 「お、いいねぇそれ」 「ヒエーーーーー!!!!」 (ああもう!)気づいたら、足が出ていた、一歩踏み出していた、とはこの事だ。路地裏の彼らがたむろう場所へとすいすいと足が出て、「すみません」と声を掛けていた。一斉にコッチを向いた彼らを見て、今更ながらに、すみません、って声のかけ方は間違ったな。と思った。 「何だよ、俺たちになんか文句でもあるっての」 「お兄ちゃん達を相手してくれんのかな?」 「可愛い顔して、中々度胸のある子じゃん」 口々に、軽い口を開く三人組。茶色い髪で、どうやらリーダー格らしい彼が、二人に目配せしながらニヤニヤしながら近づいてくる。奥では、絡まれていた少年がとても複雑そうな顔をしているのが分かった。(そうだなぁ、助けてくれるのかな、でも危ない! ってトコかな?)多分、彼が考えているのはそんなトコだろう。 ほんの少しずつ近づいてくる茶髪のお兄さんを見て、どうしよう、とほんの少し躊躇した。片手に持つ買い物袋をぎゅ、と握りしめて、師範に教えて頂いた(?)技をこんなところで使ってもいいものか、今すぐ逃亡した方がいいんじゃないか、とか。けれどもそんあ一瞬の躊躇はすぐに何処かへとぶっ飛んで、こんなトコ見逃すなんて、キャバッローネの風上にも置けないな、と思ったからだ。 遠くにがたがた震えている男の子に目配せをした。さっさと逃げてください。って意味で。一瞬だけ、「え」といった風に彼は手を顔の前へと持ってきて、大きな瞳をきょろきょろとさせて、ぎゅ、と唇を咬んだのが分かった。そのままダダッと私と反対方向に走り出す(…それで、いい) いい感じに私に不良のお兄さん三人組がこっちへ向かっていたというのに、「うわあああああ!」と見事大きな声を上げながら逃亡した彼の所為で、「あ、コイツ逃げやがった!」とお兄さんのうちの一人(リーダーではない黒髪耳ピアスの人だ)が追いかけようとした。ああもう! と思って、その黒髪耳ピアスの人の服の端っこを引っ張る。「お兄さんは、こっちを相手してくださいね」にっこり。自分でも極上の笑みなんじゃないだろうか、と思いつつ、す、と私は自分の左わき腹へと手を伸ばした。 「………あれ」 「おい何だよ嬢ちゃん」 「…いえ、竹刀がな……あ、っそうか買い出しで今外だから竹刀なんてささってるはずないですよね…っ!!」 「はぁ?」 え、えへへ、と情けない笑みを浮かべつつ、あれどうしよ私竹刀がないとケンカなんて出来ないよあれ何考えてたんだ私あれー!? あ、あは。と笑って誤魔化して、そのまま逃亡しようかと思ったら、今後は茶髪のお兄さんに腕をつかまれた。「おいおい、獲物逃がされといて、そりゃないぜ」……こっちだって、そりゃないぜ! 「あ、あはは」 にかー 「んん?」 にへー 「………うりゃ!」 びしっ 「おら」 ぱしっ 笑って誤魔化したはずの会心の一撃は、軽々とお兄さんの右手へと捕まれている。 にぎにぎにぎ。捕まれた左手。……あ、あれ、もしかして私、……ピンチですか? (え? ピンチすぎる?)(あ、あは。ですよねー!)(……ど、どうしよう!) BACK TOP NEXT 2007.08.17 |