| お兄さんに右腕をつかまれて。 …………ど、どうしよーっ! 「あ、あの、話し合いで、か、解決とか」 震える声に叱咤して、ちろりと彼らを見つめてみると、三人合わせて「「「ああ!?」」」」 ヒイイイ! ちょ、どこのアメフト部の兄弟だよ! とか思いつつ、「あ、やっぱダメですよねー!?」………ううう、ちょびっと裏返った声が、なさけない。 掴まれた右腕と反対の手に持つスーパーの袋が、ギシギシ手の間接に食い込んだ。 「まぁ安心しなよ、俺達だって鬼じゃねぇし、カモには逃げられたけど、嬢ちゃんまで金はとらねぇよ」 「あ、そうしてもらえるととっても助かります(これ山本家のお財布なんで)」 ほー、と心底よかった! と胸をなで下ろすと、三人の視線がちろちろと私の胸もとあたりに………「でかいな」「上物だ」「アタリだな」………あ、すっごいヤな予感がするっ! 掴まれた右腕が引っ張られるようにして彼らに連れられる。やめてください! と抵抗しようとして力一杯踏ん張っても、ずるずるずる。あ、あれれ! 「お前、さっきのガキと同じ事すんのな」「ふんぬー!(だれださっきのガキって!)」 無抵抗に私の顔もと近くにぐい、と顔を寄せたお兄さんの一人(黒髪片耳ピアスの人!)に、思わず左腕にもつ買い物袋をぶつけてやろうか。と考えたけど、あいにくながら今日の購入物の中に入る卵を思い出してしまった。われてぐちゃぐちゃに飛び散る黄色と白色。あああ、もったいない!(だから、だめ) ごくりと唾を飲み込むと、クックと片耳ピアスの人は忍び笑い。なんですか。小さくかけた声に、「いや何でも」………なんか、ムカツク、と思ったときだった。 「ああお前、可愛らしい顔をしててよかったな」 ぐいっと私のあごを掴んで、マジマジと見つめられた。じゃなきゃ俺ら、相手してやってないよ。とニヤニヤいやみったらしく、そのままぐいっと顎を、持ち上げて ぞわりと。体中の毛が、ぞわりと逆立つような感覚が駆けめぐる(ちょ、ちょっと待ってくださいよ) あと、一センチ、なんてところまでいって、多分。私の中で、ぷっつん、と何かが、キレた。 すっと買い物袋の中から、茶色くて、長細くて、ごわごわしたものを取り出す。そのまま、まるで右ねじの法則をするときのようにそれを持って、ずごっ、と片耳ピアスの人の横っ腹にたたき込んだ。「…げほっ!」 たるんだ腹筋にたたき込まれたせいか、その人はずるずると目を開けたまんま地面に座り込む。 残りの二人がきょとんとした目でそれを見ていた。「………いいかげんに、してください」口に出した声は、意外と低い。 取りあえず片耳ピアスに人のお腹に踏みあげるように食らわせて、そのままの勢いでロン毛の人の方へとソレを押しつけるように、垂直へかかげた。 がっこん! 直接私の拳が彼の顎へと当たる形になって、「あれ」とマヌケな声をあげたまま、ゆるゆるとお腹をむけて、道ばたにドッターン! ソレをみて、ようやく茶髪の人は意識を取り戻したらしく(さっきまで目が点だったもの)、ふるふると人差し指をこっちへと向けて、ピクピクと口元を引きつらせながら 「ちょ、それゴボウじゃねぇか!」 あらなぁに、いいたい事はそれだけですか。とひゅんっとしなるように、彼へと“ゴボウ”を向けて 叫び声が聞こえた。え、と一瞬思考が停止した頭をふると、その声は徐徐に大きく、大きくなる 砂埃の巻辰ような勢いに、一瞬目を閉じた。次に、パチン、と開けたとき、茶色くて、ツンツンとしていて、ちょっと小さめな、さっき逃がしたはずの男の子が、ボロボロと情けなく涙をながしながら。 たらり、と汗が流れた。もちろん私も、お兄さんも。すうっと、大量に息を吸いながら、彼は走る。走る。走る。「これでも、くらえーーーーー!!!!」 彼の手が、茶髪の不良のズボンへと伸びて 見事だった。ひっぱられたズボンのバランスに、ぎょ、と目を大きくあけたお兄さんを、渾身の力でひっぱる。後ろに、ひっぱるもんだから、次に私が見たものは、ずるり、とお兄さん滑って、おでこを地面にくっつけて、見事なピンク色のパンツを、私は見て、しまった(は、派手、ですね) 「だ、だいじょうぶ、ですか!」 ぼとぼとっと未だに涙を流して八の字眉毛のまま、ずいっと彼は私へと顔を向ける。「………だいじょうぶ、です」あんまりにも必死の形相で、思わず笑ってしまいそうになったけど、それは失礼、とぶるぶると首をふる。………一瞬、返事が送れちゃったのは、否定しないけど。 私の言葉を聞いて、彼はまたボロボロボロっと地面に何滴も何滴も滴を、ただ無言で形作る(え、え、ちょっと待ってくださいどうしたの!) 「………あの、」 「う、うあああ」 「……えっと、その」 「う、うううあ」 ポリポリ。頬を軽くひっかいて、す、と彼のツンツンした頭へと、手を、伸ばして、 「ありがとう、ございます、ね」 それだけいうと、また、ぼとぼとぼと、と地面に丸い円が落ちた。 「あれ、今日なんか、ゴボウ多くね?」 トントントン、と包丁を叩いているところに、ずしりと背中に重しが乗っかる。………お、重い、です。「離れてください」と軽くいうと、「だっての背中、居心地いーんだもん」「た、体格差を考えてください…っ」 ぎゅ、と腰に回された腕を、ぺちりと叩いて、またトントントンと包丁を叩く 「で、今日ゴボウ」 「山本くん、(ゴボウ)キライですか?」 「え、いや俺()すきだけど」 「じゃあ問題ないですね(ゴボウ)すきなんでしょう」 「マジで? 問題ないのこれ」 ぎゅーっと、背中から密着するように抱きしめられて、ふーっと耳に、息が掛けられて、「問題、ないんだろ?」「……………ひっ、やあああああああ!!!!!!」 バチコーンッ 今日も、山本家の食卓に音が響く。 (……とりあえず、このゴボウはさっさと使おう………) BACK TOP NEXT 2007.10.11 |