不思議な子を発見した。


 第11話  私とランボくんの道ばた事情




「よーい! よーい! よーい! よーい!」

いつも通りのお買い物に、よいしょよいしょと両手でスーパーの袋を握りしめていると、公園から、まるでガラスが破裂したみたいに、ぱん! ぱん! と音が聞こえる。
道行く人たちはビックリしながら、ピタリと足を止めて、音の発信源へと目を凝らしていた。ぞうさん型の滑り台の、丁度鼻あたりに、小さな黒い何かがぴくぴくと動き、ぱん! ぱん! と空へと向かって、一丁の銃を撃っていた。

あ、あれぇ? と首を傾げて、ああそっか、競技用のリレーの銃かな? と周りの人たちも納得したように、足早に去っていく。私はその中でぽつんと残りながら、「よーい! よーい!」と叫び続ける、牛柄模様の服を着た子どものような影をじっと見ていた。
ちょっと危ないんじゃないかなぁ、と首を傾げながら。

するとその子は、飽きたようにぽいっと銃を放り投げ、くるくると砂場周りを回り始める。幾人かの子どもが、砂の城を造りながらその様子を目で追っていた。

「ランボさんはぁー、とっても強いんだぞう」

誰にいってるのかなこれ。

「つよいんだーぞーう!」

一生懸命、誰かに主張している。ちらり。横目で砂場の子ども達を見ていた。目線を投げかけられたらしい男の子は、ふう、とため息をつき、改めて自分のお城の制作へと熱中する。「うおらー!」 じれたのか、牛柄模様の少年は、ぐわっと両手で男の子を威嚇した。
くっちまうぞー! のポーズのまま、ピタリと時が止まったように見え、砂場で遊ぶ少年は、またふぅ、とため息をつき、「じゃま」 びしっと押し倒した。どげん。


そのふわふわな黒髪を、後ろから思いっきりぶちつける形となり、じわじわと少年の目に涙が溢れる。そしてそのまま、ぐずぐずと鼻をならし、ほっぽったままの銃を取りに、右手で目頭をこすりながら、とぼとぼと歩き出した。
そんな光景を、見ていて飽きない少年だなぁ、と公園の入り口でじぃっと見詰める。

少年、ランボさん、という名前なのかな、彼はべとりと牛柄の服に鼻水をこすりつけるようにしてぬぐい、止まらないのか、おもちのように、ぐねーんと白い筋が鼻から垂れた。
少し飛び跳ねるようにして、荷物を懐へと抱え込み、肩へと掛けていた小さな鞄から、ポケットティッシュをなんとなく取り出した。
どこかの広告が書かれた文字を見詰め、ええっと、と手の中でいじる。どうしよう。

そんな風に足踏みをしている隣で、ランボくん、が、ずるずると足を滑らせて私へと向かってきた。そっか、お家に帰るのか、と思いながら「あ、あのね、きみ」 ちょいと、ランボくんは視線を上げる。

ええっと、ともう一回口元をもごもごさせて、私は地面に荷物を下ろし、腰を屈めながら、彼よりもちょっとだけ高い身長になった。そして手に持ったポケットティッシュから、一枚取り出し、ついと彼の鼻もとへと向ける。「はい、ちーん」

条件反射なのか、ランボくんは、豪快にぶぶぶぶー! と鼻から息を吹き出した。二、三回同じように繰り返す。ぶぶぶぶー!

綺麗になったランボくんの顔を見て、私はにっこりと笑った。ちょっととまどったようにキョロキョロと彼は視線を動かせ、たかたかとどこかへと駆け抜ける。
私は消えた牛の尻尾を目で追って、地面へと置いた荷物を、ちょいとひっぱり、今日も元気に晩ご飯を作りましょうか! と山本宅へと足を伸ばした。


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2008.10.25