第14話  私とラーメン少女の遭遇事情



「あ、こんにちはー、さん!」

女の子に声をかけられた。



彼女はきゅっとした瞳のかわいらしい少女で、楽々軒と書かれたラーメンを入れるらしい銀色の四角い箱に、真っ白な服に身をつつんで、にこにことこっちに手を振った。私も思わず反射的に手を振ったあと、(あ、あれ、この子誰だっけ!?)と頭の中で大混乱だ。
思い出せない。けれども、彼女は私のことを知っている。どういうことだ! ごめんなさい! と心の中で何度も謝っていると、「うひぃいん!」とぼろぼろ鼻水と涙をこぼしたランボくんがちょこちょこ歩きでラーメン少女の横を通り抜け、私の足に、がっとしがみついた。

うひぃいん、うひぃいん、と彼の泣き声が響き渡り、ラーメン少女は「いけない麺がのびちゃう!」と左手の腕時計を可愛らしくのぞき、「慌ただしくってごめんなさい、さんそれでは!」 とぱたぱた走り去る。

そんな様子を私はぽかんと見つけ、「あ、はいさいようならー……」と同じくぱたぱた手を振っていると、[そういえば」とふいに彼女は小さく呟き、振り返った。私の右足にくっついたランボくんがびくんと震える。「うひっ」

さん、今日は山本さんと一緒なんじゃないんですね」
「え」
「うわあ川平のおじさんに怒られちゃうー!」



二本のみつあみを揺らす少女を見送り、私はえええ、と首を傾げた。なんで山本くんなんだろう。もしかして、彼女は山本くんの知り合いなんだろうか。それにしても、今日は一緒じゃないだなんて、まるでいつも一緒にいるような言い方だ。別に、そんなに、一緒にいないと思う、たぶん。

ううん、と首をかしげ、結局誰だったんだろうなぁ、と思ったとき、ひくひくとずっとぐずっていたランボくんが、ラーメン少女の影が消えた途端、はりきったように私の足から離れ、「ガーハッハッハ!」と鼻水をたらしながら胸を張った。

「ランボさんに恐れをなして逃げたんだなぁー!」
ガーッハッハッハッハッハ!

鼻水をたらしながらえばっている。


私はじっとランボくんを見降ろして、「ねぇねぇランボくん」と彼の視線に合わせるように、ちょこんと腰を下ろし、背を傾けてみた。んん? といいながらこっちを見上げる牛がら少年に、「さっきの子、知ってるの?」

ランボくんはほんの少し考えるようなそぶりを見せた後、両手をぐわっと宙にうかせ、なんだかちょっとおまぬけな顔をした。そして、「カリフラワーの、おーばーけー」

おーばーけー、と彼はもう一回繰り返した。私はううん、と首をひねったあと、かしかしと頭を引っ掻く。


「…………ごめん、よく、わからない……」
「おーばーけー」

ぶらぶら両手を動かす彼を見つめながら、結局あの子は誰だったんだろうなぁ、と考えて、山本くんに訊いたら分かるかもしれないな、とランボくんのふわふわな頭を1、2回、よしよしと撫でてそう結論付けた。






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2009.08.11