| 雲雀さんとの交流のため(随分下心満載だけど)お隣の雲雀さん宅へ、なるべく好印象を持たせよう、と笑顔を貼り続けて一週間。これもなにも、雲雀恭弥育成計画の為。 何もかもがバッチグー! そう思っていたのに。 第5話 襲来。野球ボーイそろそろ一人暮らしにも慣れてくる頃で、中学校にも今は通っている。予想通りといっていいものか、やっぱり私は並中の2年生。なんて中途半端な! と叫びたかった咬み殺す!(おおっとこの口癖は封印だった) 部活にも何も入っていないものだから、休日はとことんやる事がない。雲雀さんとの素敵イベントを開催したくてたまらなかったけれど、ベタベタしすぎは嫌われるってお母さんいってたよ! 引いて引いてちょっと押す。これ何事の鉄則。らしい。 寝ぼけ眼をぐしぐしとこすって、カーテンを勢いよく開ける。シャー! という音。キラキラ太陽にいい朝だぜ……といいたいところだけど、残念ながら今はお昼の12時だ。ずっと布団の中でもぞもぞしていたはずなのに、ぐーぐーとなる音は不思議でたまらない。しょうがないなと開けた冷蔵庫も、延々と氷を製造するのみだ。ぶーん。なり響く音が妙にむかつく(かみころ……おっと) 「買い出しに、行くか」 そして私は、お財布を掴んで、扉を開けたのだった。 安ければ、なんでも買い込むのは悪い癖だと思う。ちゃんとした主婦の方ならば、きちんとタイムサービスのチラシなんかをチェックして、その日その日に買い出しをしたりとか……するんだろうか、うちは共働きだったからよく分からないんだけど。 まぁ取りあえず、ギシギシと重い両手の感覚に、「ぎゃああ」と独り言をぽつり。延々と続く、アスファルトの道と、空き地の端っこで、ぎゃーぎゃー騒ぐちびっこ達に、一瞬殺意がわいた(その元気を私に別けろ!) 「ラブイベント、発生しないかなぁ……」 するなら私、頑張ってフラグたてるのに いってて無駄にさみしくなった。よっしゃさっさと帰ろうわたし!(…そういえば) 今、ふと思ったんだけど、うちのお隣さんは雲雀さんだ。ちびちびだ。 だったら、他のリボーンキャラも、ちびちびに、なってるもんなんだろうか。(たとえばツナとか山本とか獄寺とか!) 獄寺は遠い異国の地にいるのだから無理があるにしても、他の二人は、バリバリオッケーなんじゃないか? (おおっと、なんだかやる気が湧いてきたぞ!?) らんらん気分でスキップを始める私には、気づく事が出来なかったのだ。 「うわ、あぶないー!!」 聞こえる声に、何がだろう、と振り返った。遠くの空き地のちびっこ達が、全員固まったようなポーズでこっちを見ている。どうやらバットを持った少年が大声で叫んだらしい。くる。駆ける。「よけろー!!」 (なにが?) 次の瞬間、手に持った買い物袋は見事に宙を飛び、私の頭の中に、がッツン! といった衝撃が襲ったのだ。(あ、やべ) さようなら、人生 「………いやいやいや、そんな簡単に死んでたまるかっての」 呟いた台詞は、案外言葉にならなかった。かすれたような声に、頭に貼り付けられたタオル。一瞬、自分の家で寝そべって見ていた夢なのか、とか思ったけれど、日本家屋のような茶色い天井に、自分のほんの少し横に置かれた見慣れた買い物袋に「あー、げんじつ」と一言。 随分ぬるくなったタオルを、額からとって、腰を上げた。新しい私の家はしっかりとしたフローリングで、こんな綺麗な畳じゃないし、ちょっと前まで住んでた私の家はこんなに大きくない(おっといってて悲しくなってきたゾ!) 「ここは、いったい」 「おっと嬢ちゃん目が覚めたか」 額にタオルを巻いたおっちゃんが、ぴょこっと引き戸から顔を出した。手に持った洗面器を見て、なるほど水を換えにいってらしたのか。なんちゃって。 「あのーえーと」 状況の理解は随分困難だった。いい人そうな笑みを浮かべるおっちゃんが人さらいだと思いたくないし(私をさらったところでなんの利益もないし)(だったらお隣のボウヤをさらった方がいい!)(もちろん観賞用に)最後の最後、随分大きな衝撃を頭に受けたような気がする。 後頭部へと手を伸ばしてみると、ほんの少し、そこがふくらんでいて、「うあ、いた」「おいおい、触んねぇ方がいいよ」 おっちゃんが冷たいタオルをくっつけてくれた。 「わりいなぁ、嬢ちゃん、うちの息子がさ、嬢ちゃんにボールをぶつけちまったんだ」 野球ボールな、とにかっと笑うおっちゃんを見て、そういえば、最後にみたお子様達は、野球らしき事をしてた気がする、なんて。 もんもんと私が考え出そうとしていたとき、おっちゃんが「おーい、嬢ちゃんは大丈夫そうだぞ、さっさと来な」 と誰ともなしに声を掛けた。 なんの事だろう、とおっちゃんが目線を流した引き戸を、一緒に見てみると、小さな黒髪の男の子が、眉毛を垂れ気味に、こっちをじっと見てくる(うわお、こ、これは雲雀さんに負けず劣らず…っ!) 来いよ、といったおっちゃんの言葉に、その子は口をパクパクとさせて、おずおずと体を出した。ちょこちょこちょこ。音が出るような歩き方に、私の隣に、まるで正座するように座って、「なぁ、いたくないか?」 痛いに決まってる。とは、流石にいえなかった。全身でごめんなさい、といってくる少年に、「ゼーンゼン! 私丈夫が取り柄だし!」 ごめん、と聞こえた声に、「だからさ、大丈夫だって」 「頭の事だから、俺にはよく分かんねぇけど、病院に行った方がいいかもしんねぇなぁ」 おっちゃんが考え顔で、そう呟くと、少年はびくり、と体を震わせて、また泣きそうな顔を、一つ。頭がずきずきと痛くなる。ここで泣かれちゃ、私の良心が、無駄に傷つくんだよね!(ぶっちゃけ私は1ミクロンたりとも悪くないと思うけどさ!) はー、と小さく少年に聞こえないように、ため息をついて、「少年、こっち向きな」 少年の額を、ぴちっと、叩いた。 「これでおあいこね」 そんな訳ない、けれども幼気な少年を苛める趣味は、私にはない。 大きく開かれた目の後に、「返事は?」 への字に曲げた口をもうちょっと、その子は広げて、「、うん」 小さく笑ったそれは、へにょん、と崩れそうな笑い方で、思わず頭をぐしぐし。またその子が、にかっ、と笑った。太陽みたいな子ってのは、この子みたいな事を言うんじゃないかなって。 「嬢ちゃん、ホントに悪ぃなあ、後で寿司詰めてやるから、ちょっと待ってな」 「い、いやホントおかまいなしで」 「そんな訳にもいかねぇよ」 その少年も、こくこくっと、何度も頷いて、「なぁ、姉ちゃん」「なぁに」「名前、なんてーの?」 そういや聞いてなかった、とおっちゃんはパチンっと自分の額を叩いた。 そういや、いってなかった、と私もパチンと叩こうとして、やめた(さっきぶつけた場所だってのに) 「。、」 私の服を、少年はぎゅ、と掴んで、「、姉ちゃん!」 ぐらりと、来た。随分強烈だった。ウハアアアア!!! と叫びたくなるのを我慢して、「君は?」 「おれ武、山本武!」 あれ? ← ■ → 2008.01.29 |