特にいつもと変化のない一日だったはずだ。
リビングにちょこんと座った恭弥くんがいるはずのドアを、手を伸ばして開けた。
それだけだったはずなのに。


第7話  ファイブな奇跡




すっ、と背筋のいい男の人が、なんの違和感も持たずに、長い足を、くいっと組み合わせて、ほおづえをついてた。真っ白なその手のひらと、切れ目な瞳に一瞬きゅん! とかしてしまった自分いやいやいや!(ここここいつはだれだ!) 泥棒か!

微妙に半分だけ開けたドアの体勢のまま、じっとどっかのモアイ像みたいに固まった私。ごくり、と唾を飲んで、一歩下がってみた。ずるり。
足をフローリングにすべりながら移動したはずなのに、素足だったせいか、きゅきゅきゅきゅきゅ、とどこかマヌケな音が、耳を通り過ぎた。

パチリ。目が、合った。(だだだだだ、誰だおまえ!)




微笑んだ。その人が。どこか柔らかい声と雰囲気に、思わずまたごくり、と唾を飲んでしまう。「遅かったね」 いやいや何が。「は、はぁ?」「ちゃんと準備出来た?」
わ、分からないなんの事だか。頭の中で、ちょいんちょいん、と見事なはてなマークが踊って、首を傾げてみると、「しょうがないな、は」とまた、優しく微笑まれてしまった。いやいやいや、何ですかそのしょうがないって!「こっちにおいで」 素敵な素敵な指先を、くいっと私の方へと向けて、おいで、おいで。

ごくり。本日何回目かになってしまった唾を、また飲み込んだ。ギギギ、とドアを開けて、ゆっくり、ゆっくりと、近づいて、「」いったいなんですか。「ねぇ」長い長い指が、私の髪を、さらりと撫でて、「あい」うえお?




爆発音が、耳に響く。それと一緒にもくもくと視界を覆う煙に、こほっ、と小さく咳き込んでしまった。
換気扇の向こうへといなくなった煙の中、ソファにちょこんと座っていたのは、あの綺麗な男に人ではなく、「姉ちゃん?」「……恭弥くん?」



ああこれは!(じゅ、十年バズーカ……っ!)ガッテム! と頭を抱えたときに、10年後の恭弥くんはあんなんなのかっていうか10年後も私はいるのか、もっというと10年後の私、気づかれない程変化ないんですかー!!

美味しい美味しくない以前に、涙が出そうですコンチクショウ!
(うっは恭弥くんったら格好いいんだからもう!)



  


2008.03.05