もう一度確認。恭弥くんが大きくなっていた。


第11話  オーティーゼットなクラス




とりあえず、彼は雲雀先輩だ。雲雀先輩と呼ばなければならない。一体なんの因果か運命かは知らないが、いつの間にかこうなってそうなってアレェ!?
ういんういん音のなるエレベーターに乗りながら、アアア恭弥くんと同空間……っ! と思わずエレベーターのボタンを破壊してしまいそうになった。いけないいけない落ち着いてさん!

相変わらずこっちへと背中を向けている彼は、真っ黒い学ランに、ピンと背筋を伸ばしていた。気のせいでもなんでもなく、やっぱり手のひらには何の鞄も持っていない。置き勉なのか、全部頭の中で覚えてますから僕なのか、それとも授業なんて参加しないよハハーン! なのか。私的には平和に一番最初がいいなぁ、と思ったんだけれど、やっぱり最後かな、うん。

チンッ! と軽い音を立てて、一階についたとき、一瞬妙な考えが頭を占めた。(………恭弥くんって、バイク通学じゃなかったっけ)
何で見たんだったかな、原作かなアニメかな、それとも同人かな、と考えてもよく思い出せない。でもでも取りあえず、徒歩ではなかったような気がする。あれ、もしかして軽自動車で登校してたっけ(いやそれはないか)

うんうん唸っている私を尻目に、さかさか恭弥くんは進む。これはおそらく空気的に一緒に登校で、つまりそうって事は、(ふふふふふたりのりー!?)
頭の中で考えた想像に、一人で鼻血出しそうになった。つまり恭弥くんの腰でもぎゅっと持って、もっと強く持ちなよとかいわれちゃったりされちゃったり(アアアアありえねー!!)
思わず鞄を玄関に叩きつけたいほど色々な思いが頭の中を駆けめぐっていくけれど、さかさか動く恭弥くんは、しっかりとマンションの自転車置き場兼バイク置き場へと向かう。どうすりゃいいんだとうろうろしている間に、恭弥くんは、しっかりと大型のバイクにまたがっていて、「ええ、と」

後ろに乗ればいいのかな、と一歩そろりと踏み出したときだった。

「じゃあね。君自転車通学でしょ」

どっどっどっ、ぶんぶんぶん。
それだけいいながら軽く手のひらをふり、目の前へと消えた恭弥くんを、思わずぽかんと見詰めた。(ああ、うん、バイクの二人乗りって危ないしね)
なんかそういう問題じゃない気がするけど、まぁいいかといつも通り、並盛ステッカーの貼られた自転車のハンドルを握った。ちりりん。
(………一緒に登校じゃなかったのか…)
うん、いや、うん、いいけどさ。





いっその事、今朝のあれは夢だったのだろうか、と学校までの道のりと、下足場から教室の今まででそう考えてしまった。
だっていきなりな訳でビックリな訳で、でも夢だったらもうちょっと都合良くできててもいいものなのに、何故か中途半端な所でリアルだった。
家に帰ればいつも通り、可愛らしい恭弥くんと武くんがいて、いつも通りウッハー! とちびっこ満喫して。
なんだか考えるだけで幸せになってきそうな気分に、ニヤニヤしながら扉をひいた。

「おはよーっす!」
さっさと家に帰りたーい!

親指グッ! な勢いで、教室の中へと足を一歩踏み入れてみると、何故だろうか、ピシリと妙な感覚に体が歪んだ。
なんだか覚えのある感覚だなぁ、と思っても、なんだったかは思い出せない。空間が反転したような、そんな状態にパチリと瞬きを繰り返して、やっぱり変わらない、いつもの教室な事に、おかしいな、と首を横に倒す。

「オース! 、なにんなとこでぼーっとしてんだよー」

明るい口調の少年に、こんな子いたっけ? と、「えー? ぼーっとなんてしてないけどー」と笑いながら、その席へと顔を向けた。黒髪に、声と同じ、やっぱりにこにこ顔で、「そーかぁ?」と、隣の少年へと首を横へと向ける。だれだっけ、この子、おかしいな、と頭の中をぐるぐるさせた。まさかまだクラスメートを覚えていないと思わなかった。その黒髪少年の席の近くに立つ、茶髪のツンツンした男の子が、「えっ」と声をどもらせながら、私を見る。
おかしいな、この子も、誰だっけ?

今更ながらに誰だっけ、と聞きづらくて、ええっと、とどもっているとき、後ろからドカン、と誰かに頭を叩かれた。「いっ」
「入り口でぼーっとしてんなボケ女!」

振り返ると銀髪のタコヘッドに、もの凄く、もの凄くアレな予感が、背筋にぞくぞくと妙な汗が流れる。「あ、獄寺くん」「おせーな、獄寺」「おはよーございます十代目! 今日はお迎えに行けなくてすんませんっした!」「……いや、別にいいよそれは」「明日こそは必ず!」「いいってば」
(………今なんか、すっごく聞こえたタァァア!)

「………どーしたんだよ、

気づけば、黒髪の少年が、私の顔をのぞき込むように立っていて、思わず「い、いやっ」と後ずさりすると、後方に立っていたタコヘッドに、がつんと背中からぶつかってしまった。「なにすんだバカ女!」と聞こえる声を無視して、まさかぁ、と思いつつ、「や、やまもと、くん?」

そこ、首ふってくれ。

「ハハハ! なんだよ、幼馴染みのくせに、いきなりくん付けなんてしてよー」
「え、あ、ごめーん、………やまもと」
「おう?」


にっかり笑った表情は、小さかったときと、まったくもって変化がない。これだけ変わらないとすれば、あああと頭が痛くなってしまいながら、幼馴染みってなんだ、という事は、「山本! 雲雀先輩は!」「ひばり? なんで?」「先輩も、ほら!」

幼馴染みってヤツでしょ! とたたみかけるように叫んでも、彼は首を横に倒すだけだ。そうか違うのか、どーなってんだ!? と教室の天井でぴかりと光る電灯に向かって、ぬああ! と拝んでしまった。
「ハハハ、どーした、気分でもわりーのか?」




  

2008.09.07