というクラスメートを観察してみた。


第2話   観察対象 2




俺のクラスはある程度、役割というものが出来ている。たとえばホームルームの時間に何かの議題があったとしよう。まず、誠二が場を盛り上げる(俺的に認めたくないけど、どうやら俺はアイツとペアだと思われているらしいけれども)正直、関わるのは面倒くさそうなので、俺は机に肘をつけて、遠い青い空を見る。
そしてふと黒板に目を通した時には、誠二のむちゃくちゃな意見が、するりと上手い具合に軌道修正され、ちゃくちゃくと物事が進んでいるのだ。

これが中学一年のときなら(俺も誠二と同じクラスだった)、むちゃくちゃなアイツの意見のせいで(しかもアイツは譲らない)長々とただただ時間をくって、途中でお開き。中学二年の今と、一年だったあのときと。一体何が違うんだろうと考えてみた。


「俺、今度のホームルーム、サッカーしたい!」
「グラウンドが使えるんやったらいいかもなぁ。けど分からんから他も決めよ」

「俺、体育祭じゃ、ぜーったいリレーのアンカー!」
「藤代くんは足が速いから、他に二つ三つ出たらどうやろか。かっこええでぇ」


ギャアギャア叫ぶ誠二の声にちょこりと混じる、ここらじゃ聞かないイントネーション。
俺は、本当に珍しくて机に肘をついて空を見上げるのを、ほんの一瞬やめてみた。

「ほらほら、笠井くんもぼけっとせんと。はよ混じらなええ競技とられてまうで」

は、表情の見えない男子だった。長ったらしい前髪を目の下まで伸ばして、ずるずると長い髪の毛は、後ろに小さく結わえていた。ただ、ぐいっと綺麗に円を描いた彼の口元が(なるほど、今コイツは笑っているのか)と分かる情報だ。

俺はこのを、とても興味深い対象として見ている。
にやにや笑いながら、場を盛り上げて、盛り上げるだけ盛り上げると、すっ、とそこからいなくなる。それがとても自然すぎて、俺のように一歩離れているヤツにしか分からないぐらい、とてもとても自然に。


(今も、ほら)


「おーい、みんなでサッカーやろうぜ!」
「お、いいねー。誠二手加減しろよ!」
「おっけー! いくらでもかかってこーい!」


見慣れたボールを片手に、くるくると教室の中を飛び回る誠二の横を、はするりと抜けて、冷たい廊下へと足音も立てずにいなくなる。(多分俺が観察してないと分からない範囲だ)
よーし、タクもいこーぜ! とぐいっと誠二に手首をひっぱられて、重い腰をずるずる動かしながら、そっと訊いた「誠二、は?」

それだけいうと、誠二はちょっと大きめな目をきょとん、とさせて、くるくると教室の中の景色を、その目の中に忙しなく映す「     ? いねぇの?」
(ほらやっぱり)

とても自然に、するりと姿を消す。俺はああ、なんでもない。と声をかけて、しょうがないなと暖かくなった椅子から腰をあげた。

いこーぜ! と周りの男子を両脇につけて、心なしかスキップまで始めそうな誠二を見て思う。
(もしかしては、こんな大人数の集まりが苦手なのだろうか)
もしかしたら、俺みたいに。

とんとん、と廊下に一歩踏みでて。


(ただ、サッカーが嫌いなだけかもしれないな)







  


2007.10.10