「はいはい今日の体育はサッカーにするぞー」

えー、という声と、よっしゃ! という声。
いうなら俺は、「えー」の方だった。


第3話   シリアスとギャグテイストの狭間で 1




(冗談じゃねぇよ)

体育座りをしながら頭をぎゅ、と抱え込んだ。サッカーなんて冗談じゃねぇ。
たったか走る競技なんて、ただでさえかったるいのに、ボールの取り合いなんて下手すりゃ、(……触っちまう、じゃん) あああああ、と頭をぶんぶんさせていると、「、調子悪いの」と隣に座る笠井が、心配しているのかしていないのか、若干判断に困る声で尋ねてきた。
それにピーン! とひらいめいて、「そうなんや、俺今日めっちゃ調子悪いねん」と自分でも俺ナイスじゃね? と思うほど、お前もう保健室行けよ! って感じでちらりと笠井を見てみた。ついでに笠井が「先生くんが体調が悪いそうです、保健室に行ったほうが」とかいってくれりゃ万々歳なんだけど、実際は「ふーん、そう」と気のない返事でそっぽを向く(ちくしょう!)


「せんせー、俺なんかめっちゃ気分悪いから、見学しててもええですか?」

俺は他人に頼る事は諦めた。よし行け、自分で道を切り開け!
俺といったら二度目のナイス演技をしたつもりだったんだが、その無駄なほどにいい肉付きの筋肉ヤロウは「お前こないだからずっと保健室行ってたろ、ちょっとは参加しろ」「(だってこないだまでバスケだったし)……俺、実は、せい」「理とかいったら欠点つけるからな」「(チクショー!)全然! めっちゃ元気満々!」

くっそ周りの奴らがゲラゲラ笑ってるのと一緒に、俺もゲラゲラ笑ってみた。ゲラゲラゲラ! チクショウ俺は笑ってる場合じゃねぇんだっつの!(でも欠点はマズイ!)
「よーしお前ら準備しろー!」ピー! と無駄にでっかいホイッスルの音を聞かすムキムキ教師に思わず股間を蹴り上げてやろうかと思ったけどやめといた。「おい、さっさと準備しろよ」……うるさいムキムキが! 蹴り上げないだけ感謝しろ!

もうなんていうか適当にこなせばいいかと開き直って、グランドの土をグシグシ一人靴で蹴って遊んでいると、後ろの方から「ー!」って声が聞こえた。
反応のとてもいい俺は、くるん、と身をよじって、その声に向き直る。べしゃっ! って音が聞こえた。

「ちょ、なんで避けるんだよ」
「あんな、藤代くん。俺男に抱きつかれても、全然嬉しないんや。なぁ分かるこれ」

なんだよなんだよ、といいながら土を蹴り上げて、またこっちにぴょーんっと向かう犬をもう一回右足を軸にして、くるん!「何で毎回そんな避けられるんだよ」「だって、行動がワンパターンなんやもん」

それで、なんなん? とほんの少しの距離をとってちらりと藤犬にちらっと視線をよこした。すると藤犬はパタパタ尻尾を振って、「あのな!」

「俺タクと違うチームで対決すんだ! なぁ、俺と同じチームに入ろうぜ!」
「よっしゃ分かった」
「マジで!」
「笠井くーん、同じチームはいりましょー!!」
「なんでだよー!?」




よいしょ、とゼッケンを首に通して、しっかりと藤代と違うチームだって事を確認する(だって同じチームになんてなってみろ、いちいちうっせぇって)俺ウルサイのキライなんだよね。
隣で同じようにゼッケンに首を通して、几帳面に、きゅ、きゅ、と皺を伸ばしている笠井を見て取りあえず俺もマネしてみた。きゅ、きゅ。(よし作戦を考えるとすると、なるべく笠井の遠くに、ボールがこないあたりに移動しといて、端っこで地味に走っとこうよし俺オッケー!)

って変だね」

きゅ、きゅ、と伸ばしながら聞こえた声に「へぇそうなん」とぼけっと返した。ゴキゴキッと首の音をならして「はー」と息をついて、ぼけっと真っ青な空を見上げる(……あれ、)ちらりと見ると、あっちもチラリと俺を見てきた。ほんの少しつり目がちな目をぎょろっと動かして、笠井は言う。

って変だね」
「…………(俺にどう反応しろって?)」
「何変な顔してるの」
「どこが?」
「ん?」
「どこが変なん」

ああそれは、とほんの少しの前置きがあって、ぴたっと空気が止まったそのときに、「ピピー!」とおなじみの音が聞こえた。「よーし始めるぞー!」……(うっせムキムキ)
それを見て笠井は、フッと鼻で笑って(中々様になってんじゃん)ぽんっと俺の肩を触った。
引きつった体に息をのんで「誠二と敵チーム。つまんないんじゃない?」聞こえた声。

そのまましゅるりとグラウンドの真ん中へと抜けるネコを見た。触られた部分を、そっと、撫でる。(………見えなかった)(見えなかったんだ)
はっ、と息を短く吐き出して「……別に、いつも見える訳じゃねぇのに、情けねぇ」

また吐き出した息を飲み込んで、ぐるぐると腹のあたりで何かが回るような感覚に、一瞬ふらつきそうになった。(……俺は、変じゃ、ない)
ぎゅ、と噛んだ唇が、ズキリといたい。(ちがう)

(にんげんは、おれ、いやや)


「おーい、! せーれつー!」
「あいあーい! わかっとーよー!」









  



2007.10.23