| 「ったらー!」 第4話 追う。逃げる。ぶっちゃけ逃走本能 2 らんらんらん。そんな効果音が聞こえてきそうな感じ。っていうかウザイ。犬が。きゃっほう! とナチュラルに俺の隣の席に、どかっと座る犬め。そこの席は鈴木くんの席だ。どいてあげなさい。「ー!」っていうか何度も、人の名前を連呼するな黙れこのいぬっころ(………もちろん、そんな事はいわない) 「………なんなん? 藤代くん」 「うーん、あのさぁ、ずっと思ってたんだけど、俺誠二っていうんだ!」 「(知ってる黙れ)それがどないしたん、藤代くん」 何ですかお前の事を俺が名前で呼べと。ははん、と思って、にかーっと笑ってやった「藤代くん、今日数学、きみ当たるでぇ予習ちゃんとしてはる?」「え! うっそマジで!」………やっぱコイツバカだ! いつの間にか後ろの方にひゅるりと現われた笠井が「誤魔化されてる」 ぷっと笑いながらのその言葉に、コイツらって友達なんだろうかどうなんだろうかとこの頃本気で問いかけたい(まぁ、別にいいんだけどさ) 「まぁそれはいいんだけどさぁ」 「ええん、数学のせんせーねちっこいでぇ」 「なぁ」 「(無視か)…なにぃな」 「サッカーしようぜ!」 親指グッ! はは、と軽い笑いが出てきそうになった。 (藤代の肩あたりで、ふよふよと浮遊しているオネエチャンが、ぷぷっと笑った気がした)(っていうか笑ってた) 「なぁ、サッカー部に入ろうぜ!」 あれから毎回聞くその言葉に、正直もう飽き飽きしてる。はいらへんよ。そう毎回きっちり断ってるはずなのに、意味わかんねぇんだけど。なに、アイツの脳みそハムスターなみ? 小指の指先サイズなのこれ。 唯一の常識人(なのだろうか)の笠井は、今回ばかりはとピクリとも動かない表情の奥でニヤリとほくそ笑みながら事の成り行きを見守っているらしい(俺絶対笠井と相性悪いと思う) 「入ろうぜ」「遠慮しとくわ」「なぁ入ろうぜ」「勘弁してぇな」「入ろうってば」「入らん」「入ろうよー」「入らんっていうとるやろその耳ちゃんと機能しとんのかいな」 ああもうこいつマジうざい! 俺は、よっしゃ昼飯だ、と手を合わせて、いただきます。と小さく手を合わせてぱんっ! 人がざわつく食堂はあんまり好きじゃないけれども、ここ以外メシが食えないってんだからしょうがない。手早く、「おばちゃーん、きつねうどんちょーだいな」 なるべく人が少ない、端っこの席へと腰をかけて、ピンク色のトレイにのった真っ黒いおわんの中に見える、真っ黒い汁に、これは何回見てもなれないなぁ、と思った。なんでこんな黒いんだ。うどんってもっとこう、薄くね? 色合い。 ちゅるちゅる啜る味が、濃いのは、もう慣れた。 「あ、ー」 ちゅるちゅるちゅるっ 勢いよく啜ったうどんの汁が微妙にとんだ(あ) ここいい? とか聞きながら、俺は別になんの返事もしてないのに、真正面にソイツは座って、おーい、と誰かに手を振る。だれだ、笠井か。そう思ったのに、笠井含むその他二名に、またちゅるちゅるちゅる(汁がとんだ) 「………四天王」 誰だったか、そういってた、気がする。笠井、藤代、「きゃぷてーん、三上先輩、こっちこっち!」そうそう、それ。 勘弁、してくれ。呟いた声が、誰が聞いてくれるってんだ。人の良さそうな顔をした先輩は、すまないな、と声を掛けて、その場にどっかり座る。………からあげA定食か。 その隣には、どこか意地の悪そうな顔をした先輩が、「渋沢、お前が学食なんて珍しいな」と低い声(怒ってるんじゃなくて、地声だ)でいった。なんだ、学食じゃないってんなら、この渋沢さんはいつもどうしてるんだ。自分で弁当でもつくってんのか。 ………そんで、当たり前のごとく、隣には笠井(まぁ、犬よかマシだけどよ)なにこれ。挟まれたよ俺唯でさえ端っこの席なのに。 勢いよく、うどんをマジすすりした(さすがに汁がとぶのは失礼なので、そこは気をつけた)ぱんっ、ともう一回手を打って、急いで摂取したもんだから、胃の中でゴロゴロいうような感覚がして、うえっ気持ちわり、って思いながら「ごっそさん」 トレイを持って、その場を立ち去ろうとしたら、「ちょっと待てよ、ここの人たちさ、サッカー部なんだよ」………だから、なんだ、犬。 「がさ、うちの部活入ったら知り合うんだし、ほら、ちょっと話そうぜ」………意味が、わからん 「藤代くん、悪いねんけどな、俺いそいでんねん、また今度にしてくれへん?」 「えー、ちょっとぐらいいいじゃん」 ごめんなぁ、といいながら、チラリと二人の先輩(だったと思う)を見た。渋沢って方は、こら藤代、とまるでお母さんのようにしかってるし、三上って方は、どうでもよさげにカツカレーを口の中に放り込んでいる(ちなみに笠井はどこで購入したのか、サンドイッチだった) もう、行ってもいいだろうか、と取りあえず二人の先輩に、「失礼しますわ」ぺこり、と頭を下げるとき、ぱちり、と (三上って人の方と、目が合った) 垂れ目がちな目を、その人は、ぎゅ、と細めて、「ああ、お前が、」…なんだよ、一体。 軽く動いた口からは、きっと声は聞こえなかったけれど、にやっとした笑みを向けられると、なんだかこっちも苛ついてくる。なんだよ、ホント。さっさと教室へ戻ろう。なんか俺、らしくない 「あ、待てよ、 ぐいっと、腕を、制服の端っこを、藤代に掴まれた。「…っ」 「触んな!」 多分、藤代も反射的だった。すぐに放された手に、ざわつく食堂の声がよく耳に入る(やべ)開けた口からは、「あ」とマヌケな声が出る。やばい。「ご、ごめんなぁ藤代くん」取り繕え「俺な、ホンマ部活とは入られへんっていうか」取り繕え「ホンマはな、いいたぁなかったねんけど、俺な」真っ白に、じわじわと辺りの感覚が削られていく。取り繕え。 「ホンマは、奨学金っちゅうん? うちのガッコの特待生やねん。成績おとしたらあかんねん」 せやから、部活なんて入ってる余裕ないねん ← ■ → 2007.12.12 |