遅いなぁ、竹巳と体を動かすと、給食袋が揺れた。


忍者発見




カラン。ちょこっと聞こえる音は、お箸箱の中身がぶつかった音だと思う。朝は、やっぱり竹巳は遅いのだ。いっつもしっかりしてるくせに、朝だけ。もしかして竹巳ったら、朝弱いんじゃないの? とちょこっと思う。
だったら嬉しいな、と思ってしまうのは、多分、いつでもどこでも、私が竹巳に負けっぱなしだからだと思う。
かけっこ勉強、なんでもかんでも。

よそ様のお家の塀にもたれかかると、背中がちょっとじゃりじゃりした。「まだかなー……」
なんとなく、ひょいっ、と上を見上げた。気のせいだろうか、コンクリートの地面に、ぽつりと黒い影が落ちたような気がしたからだ。


「え」 あんまりにも一瞬の事で、あんまり視力のよくない私は、ぐっ、と目を見開いたけれど、それが何なのか、はっきりと見えなかった。
けれども、とーんっ、電柱を伝い、窓へと何かが跳ね上がる。さっ、とかき消えた跡に、ぱくぱく、と口を動かして。「………にんじゃ?」

「た、たくみー!」

思わず叫ぶと、どこに居たのか、「なに?」とにゃんこのような目つきで、じっとこっちを見る竹巳。急ぐ様子もなく、ゆったりとした動作で、彼は歩いていた。

「え、や、あの、」
「うん」
「に」
「に?」
「えと、………うん」
「なに?」

忍者が、空を飛んでたよ! そう報告しようと思った事実を、ぐっと飲み込んで、「な、なんでもない」と首を振る。竹巳はとってもとっても不思議そうな顔をしていたけれど、こんな事、人にいってはいけないような気がするのだ。

いつだったか、お母さんが、「知らないふりをしなきゃ駄目よ」 クスクスと笑いながら呟いていた台詞を思い出して、うん、と頷く。

、変」
「変じゃないの、まったく、なーんにも見てないもん」
「何か見たの?」
「見てないったら!」

ふうん、とどうでもよさげに喉をならす竹巳の手のひらをひっぱって、「ほら、さっさと学校に行かないと、遅刻しちゃうよ!」
と思いっきり足を踏み出した。
(でも、竹巳なら、教えてあげてもいいかもしれないな)



1000のお題 【215 鳥か?飛行機か?いや、奴だ】




  

2008.09.09