明日の天気は?




俺はと一緒に、縁側で座り込んでいた。
なんだかこんな言葉を使ってしまえば、我ながら一気に老け込んでしまったような気がするけれども、ちゃんと、ぴちぴち。
ぼう、と空を見上げると、さーっと青い空が広がっていた。海を映し込んだようだ、と考えて、ああ反対か、と思い出した。この間先生がいっていたのだ、海は空の色を映し込んでいるんだぞって。
ふうん、と思った言葉が、頭の中に流れた。けれどもやっぱりぼぅ、と木で出来たやんわりとした手触りの廊下を触り、少しずつ、後ろへと頭を垂らした。
ぺたり。黒い瓦の影と、空が見える。

腹にはの母さんがくれた小さなペットボトルを抱き込んで、暖かかったそれは、少しだけぬるくなっている事がわかった。寝っ転がったまま、缶を開ける。おーい、おちゃ。

気のせいだろうか。によく似た彼女は、俺へとこのペットボトルを渡すとき、どこか含み笑いのようなものを浮かべていた気がした。
『うちの子、よろしくね』

はぁ、と曖昧に頷く隣で、がぷぅ、と頬をふくらませていた。「なんだか私が竹巳よりも年下みたい」 そっちの言葉にも、俺は曖昧に笑った。


(…………まぁ、いいか)

寝っ転がったままでは少し飲みづらかったので、ふい、と腰を上げる。近づけた唇からは、ほんの少し苦みのある味。

「たくみぃ」

は、庭へと足を放り出すような形で、寝っ転がっている。うとうとと、瞳を開けたり閉じたりを繰り返して、とろりとした声をすりだした。俺は眠いんなら、寝たら、と彼女の瞼へと手のひらをのせる。ごくり、とまた一口、お茶を飲み込んだ。

「あしたさー、たいいく、あるかなぁ………」

そういえば、明日は、が好きな鉄棒だった。運動全般は苦手らしい彼女が、唯一人並みに動ける競技で、失敗しても、誰にも迷惑がかからないから広々とした気分で出来るらしい。なんでも、くるりと逆上がりをして、上と下が逆さになる瞬間が楽しいんだそうだ。

どうだろう、と俺は口を動かしながら、くん、と鼻で匂いをかいだ。雨だったらどんな匂いがするのか、明日の天気は、どうなのか。嫌という程知識を思い返しながら、一つ一つ確認する。

「晴れだよ」

そう彼女へと伝えると、ほんと? と半分寝言のような、もにゃもにゃした声が聞こえた。むう、と幸せそうに唇をあげていて、この子が喜ぶんなら、天気予報を見れば事足りるに違いない、こんな意味のないと思っていた知識も、きっと十分意味があるんだろう、と青い空を眺めて、考えた。



1000のお題 【670  トロピカルモード】




  

2008.11.02