「ってほんとウザイしキモイよな」 >>正直うざきも 執事室の一角、大きなソファーを一人陣取り、ぶつぶつと小さな声を開けながら、・は座り込んでいた。その光景を一瞬見た瞬間、オレは見なかった事にしようと一歩後ろへ下がると、「ゴトーさんちょっと聞いてください」と地を這うようなの声に、しょうながいな、かなりイヤだがといそいそと正面のイスへと座り込んだ。 「なんだお前はまた」 「………いや、それがっすねゴトーさん」 「ああ」 「キル様に、俺きもいっていわれちゃったんです」 それは、と口を挟もうとして、やめた。「その上」続くの言葉に耳を寄せる「うざいともいわれちゃいました」 俺ってうざいしきもいですかね? と顔を伏せるに、ここは正直に頷いておいた方がいいのだろうかと考えたが、敢えてゴホン、と咳で誤魔化し、彼の沈んでいる顔を、正面から眺めてみた。 ・は人受けのいい顔をしている。にっこり笑えばそこらの女は寄ってくるだろうし、本人自身も社交的で、まったくもって問題ない。敢えていうなら左の耳が少しかけていることと、服を脱げば目立つ傷跡がそこらについているが、それは髪と服で隠せば問題ない。ついでにいうなら何本か差し歯もあるらしいが、目立ってはいないので、これも問題ないだろう。 昔この執事室へと入ってきたときはとても問題のある(ように見えた)人間だったが、今ではそんなところも陰を潜めて、「ああそんなときもあったよなぁ」と酒のつまみで話せる話題へと変わってしまった。 唯一の問題があるとすれば、キルア様へと異常までの愛だ。寧ろそれは愛といえるのかはなはだ疑問ではあるのだが、そこは少し置いておこう。 いくら自分が「雇用主への特別な感情はうんぬん」といって聞かせても、何いってんスか! とケラケラと笑ってかわしてしまう。 「………きもいとか、うざいとか、一つだけならまだ落ち込まないス。きもくてうざいって俺救いようがないじゃないですか………」 本当に救いようのない独り言に、本気で耳を塞いでしまいたくなった。キルア様はきっとお年頃というやつなのだ。この頃特に反抗的で、なにかにつけて奥様に反抗する。………反抗期だ、きっと(イルミ様にはなかった気がするが)(ミルキ様は年中いろんな意味で反抗期だ) そんな多感なお年頃に、ちょろちょろ後ろをつきまとうちょっとおかしな人間がいれば、ぽろりと本音が零れてしまうのも理解できる。そもそもキルア様は正直なお方だ。素晴らしい。 「俺、ホント、どうしたらいいんでしょう……」 「少し、キルア様と距離を置いたらどうだ。つきまとうから鬱陶しがられる」 押してだめならひいてみろ。我ながら中々の名案に、は軽く首を振る。 「…………そんな事したらキルア様、本気でどうでもいいとか俺のこと割り切られちゃいそうで…」 それってお前、と口に出そうとした台詞を、彼は必死で飲み込んだ。 自分の後輩の事を考えると、本気で頭が痛くなるので、いい加減にして欲しいと考えるゴトーだった。 1000のお題 【697 今、ちょっといいですか】 BACK TOP NEXT 2008.08.11 |