「あー、ありえねー」



>>こっそりこっそり



俺はゴトーさんに「ちょっと庭の草適当に抜いて掃除してこい」と命令され、イエッサーまかされた! と胸を張って、一人ちびちび草を引っこ抜いていた。
ところで教えてくださいゴトーさん。適当にってどれくらいでしょうか。既にこんもりと山盛りとなったみずみずしい草に、俺の周りだけ、ぐるりと地肌を見せる茶色い砂。取りあえず止められるまでと延々と草を引っこ抜き続け、十円ハゲのようなあとをどんどん大きくしていく。
あれだなぁ、俺がこれしてる間、ゴトーさんティータイムですとかしてたら、多分俺キレるなぁ。

もっそもっそぶっちぶっち。
手の先っちょに土がつまり、少し気持ちが悪い。親指で、カリカリと人差し指をさすっているとき、微かな音が聞こえ、思わず伏せた。
半分反射のように息を押さえ込み、足音の主を探る。がさり。

「あー、ありえねー」

響いた高い、少年の声に、俺は左の耳をゆっくりとなで上げ、ああキル様か、と大きな木が10本分ほど立ち並ぶ先の位置で、ぐーっと背伸びをするキルア様に声をかけようと、体を動かそうとした。けれどもその先に、また大きな声で、「ありえねー!」
何がだろうか。

「何がヒトゴロシの道だっつのー。自分の道くらい、自分で決めさせろよ!」


叫び木霊する声に、ああもしかしてこれって、王様の耳はロバの耳? こっそり聞いちゃった俺ってば、ちょっと最低?
キル様なんだ暗殺者家業が嫌なのか。すっげぇ似合ってるのに。残念ちょっと好奇心ちょっと、罪悪感かなりに、離れようにも離れられず、ふー、と殺しつつ吐いた息はふわふわと草花を揺らす。
………どうしようか。
もう一度、ありえねー! と叫んだキル様は、満足げにざっくざっくと俺へと離れていく。こっそり聞いていた状況がさっさと終わる事に両手を上げて、やっぱり、「あー、くそう」

キル様すみません、俺、「こっそり聞いちゃいましたごめんなさーい!」

力一杯叫んだ声は、おもいっきり森の中へと響いて、バサバサと鳥が数匹飛び立った。ごくりと唾を飲み込んで、そのまま真っ直ぐ仁王立ちをし、前へと進ませる足を止めた、キルア様の背中を、じっと見詰める。
ゆっくりと、彼は振り向いた。

「………知ってるっつーの、バーカ」



衝撃が、はしりました。


「ゴトーさーん! キル様がデレたー!」
「分かったちょっと暑苦しいから消えてくれ」



1000のお題 【182 アメと鞭】

BACK TOP NEXT

2008.09.09