重い。



>>カルト様なぐさめて



重い。
いや何が重いのかと訊かれれば、別に俺の愛が重いのではなく、洗濯物が重かった。屋敷の執事全員分をぐるぐる回る洗濯機の前で体育座りをして、カナリアに大丈夫ですかと訊かれたときは流石に凹んだ。そんなに怪しい人に見えますか。変ですか。
何個かに積んだカゴをひょいと持ち上げて、馬鹿力だと自慢出来る腕力でも、なにやら持ちにくい。いや腕力関係ない。根本的に腕が足りなかった。

けれども動き出したからには止まれず、ゾルディック家執事専用の物干しへとよろよろと移動する。体中のバランス感覚を駆使した。頑張った。
「ふへぇ」と妙な声を出しながらカゴを綺麗に地面に置き、もう一回深呼吸をする。土だらけの庭をざらざらと足の裏で遊びながら、嫌みなくらい、白のワイシャツしかない積まれた洗濯物を見詰めて、後はこっそりと主張するゴトーさんの青いストライプのトランクスに「あー」と指をさす。

「あーもー下着は各自でっていってるのに、ゴトーさんたら」

ちなみに俺はブリーフ派だ。あんな固定されるものよくはけるなとゴトーさんにいわれた言葉を思い出して、中腰の体勢で、彼のトランクスをひっつかんだ。これはちゃんと返しに行こう。

「………なんで?」

ふいに聞こえた、消え入りそうな可愛らしい声に、俺はきょろきょろと辺りを見回した。上か、と高くそびえる、キノコ型の木の枝に、小さな少女とも間違えてしまいそうな容貌の少年が、珍しい着付けの服ででゆらりと立つ。「あ、カルト様」と俺が呟くのと同時に、彼はすいっ、と俺の手元を指さした。

「なんで、パンツ掴んでるの。欲しいの?」
「え、いや、別に欲しいとかじゃなくてですね、つかいらないし!」

べしっ、と投げ捨てると、ストライプが微かに土で汚れる。ゴトーさんごめん。あとでちゃんと拾うから。

カルト様は不思議そうな顔をして、俺の顔辺りをじろじろと伺っているらしい。どうしたんだろう、と彼へとまた声をかけようとしたときに、ふと少年の口が開いた。

、なの?」
「え、はい、そうですけど。なんでカルト様知ってるんですか」
「兄さんが、」
「へっ、どの」
「兄さんが、っていう使用人には、危ないから近づくなって」

だからじゃあね、とカルト様は、歩きにくそうな靴で、器用にトントンと枝を飛び渡っていく。しなる枝を見詰めて、俺はガクリと膝をついた。

流石に微妙に凹みました。




1000のお題 【181 疑惑のまなざし】


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2008.09.28