ぷるるるる………



>>友人様ご到着につき



廊下の中に響いた電話をじっと見て、しっかりと「守衛室」と書かれた発信元に、「なんでゼブロさん?」と思わず顔をしかめながら、片手で洗濯物を支え、右肩と右耳へと、ぱっくりサンドイッチのように黒光りのする受話器を挟んだ。すかさずずり落ちそうになる荷物を、おいしょっと、と軽くジャンプしながら両手で持ち直す。

「はいはーい、ゾルディック家執事室。ゼブロさんどーしたんスか?」

明るく響いた自分の声を対象に、もごもごとした口調のゼブロさんは「ああ、いやねぇ、うん」と言葉を繰り返す。「そのね、キルア様のお友達がやってきてるみたいなんだけど、ああー、うん」

「ハァー? んで、通してくださいって?」

そうそう。電話越しに彼が頷く状況が、頭の中で思い描く。
んん、と暫く考え、俺は大声で「ゴトーさーん!」と喉を震わした。ちょっとちょっと! と慌てたようなゼブロさんの声が聞こえたが、流石に俺一人じゃあなんともできない。

曲がった角から、何事だと顔を出した彼は、右側へとがばっ、と首を折り、受話器を挟んだ俺の体勢を見て、少々不審そうな顔をしながら、俺の受話器を取り上げた。
「なんだ」と低く声を掛け、先ほどゼブロさんが伝えた言葉をもう一度いおうとして口を開いたら、電話越しにまた彼が説明をしているらしい。ちょいとつま先を立てて説明をしようとした体勢は、なんとなく行き場をなくし、彼の動向をじっと探る。

取りあえず彼は、「一体なんの為の守衛室だそんなくだらない事で電話を掛けるんじゃない」とドスをきかせ、くぐもったゼブロさんのへこへこする声が聞こえる。フン、とゴトーさんは鼻を鳴らし、「くだらねぇ」 ガチャリ。電話を置いた。

機嫌が悪そうに、廊下の向こうへと去ろうとしたゴトーさんを馬鹿にするように、もう一度大きく、電話の音がなる。手を伸ばそうとした俺を遮り、ゴトーさんは勢いよく振り返り、電話をとった。「はい、ゾルディック家執事室」

     あ、もしもし、僕キルアくんの友達でゴンといいます。あの、キルアくんいますか?

「キルア様に友達などおりません」
ガチャリ


手の中で少々湿った洗濯物を握りしめながら、「それじゃあゴトーさん、キル様友達いない寂しい子みたいじゃないですか」とこっそり思う。そんな俺へと気づいたのか、彼は「事実だ」とすっぱりいいきった。受話器に手を掛けたままの彼の、細いメガネをじいっと見詰めて。

「ゴトーさん顔こわーい」
「お前にいわれたくはない」

そう彼が反論する前に、三度目の電話が鳴り響いた。
俺の顔の傷は、すっかりと直り、顎から口元へとかけて、少し肉のえぐれた傷の跡が残った。
幸せなはずの感覚も、何故だろうか、ひっぱられた肉の感覚が、少しだけ痛い。
(………なんとなぁーく、そろそろ)
随分わかりやすい、終わりの合図だと、また顔の傷が痛む。



1000のお題 【566 招かれざる客】


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2008.10.04