「とっもだっち100にんでっきるっかな!」

ステップをるんるんと踏みながら、
背中に乗せた赤いランドセルをバタバタ動かせながら。


第5話  猫ふんじゃった




この年になってよかった、と思うことは一つ。恥も外見もなく、好き勝手行動出来ること。
もし、前の年で、大声で歌を歌いながらスキップなんてしてたら、ちょっと奥さんあの人大丈夫? なんて言われそうだけど、今となっちゃそんなこと気にする必要もない。

「ひゃーくにーんでたっべたっいな!」

ちなみに、なんで私が、只今こんな状況でスキップ+歌だなんて最高カードを盛大に振る舞っているのかと言うと、理由は一つ。


もう一回、スキップをしてみた。がさり。ポケットの中身が大きく鳴る。

「うふ」

一つ、あめ玉。一つ、クッキー。一つ、チョコレート。
にやつく笑みをパシパシとほっぺを叩いて押さえつつ、るんるん、ともう一回駆け出す。

『お嬢ちゃん、可愛いね、飴あげようか』
『うわぁ! ありがとー』

いやぁ、人様よりも顔の出来がよくて良かったと、改めて思いました。ついでにいうと、お菓子を貰ってもその人についてっちゃいけません。これポイント。

「ちなみに! 私ひとりが食べるんじゃないからね。施設の子たちと、わけるんだからね!」

…いや、誰に訊かれた訳じゃないけれど、カメラ目線でいってみました。



ぽかぽかと日差しは眩しくて、周りにはキラキラと光が溢れている。時間は無限にやってくるし、まったく子どもってのは、なんでこんなに大人(前の私の年で大人といっていいかは疑問だけど)と違うんだろう。

なんて、アスファルトの道路にポテリと足を降ろしながら思った。

丁度、そのとき。


「ほあら」

どこからともなく、妙な声が聞こえてくる。ん? と耳をこらすと、もう一回、ほあら〜。きょろりと辺りを見回してみた。私の足下辺りに、ぴろりぴろりと振れる、一本の、真っ白で、ふわふわな、尻尾。

「ほあら」
「にゃんこ?」

ひょいと、手を出した。ゴロゴロと喉の奥から聞こえる声に、うっとりしてにゃんこの体を撫でくりまわしてみる。ふわふわで、ふさふさ。超可愛い。

「ほあら〜」
「にゃんこかわいー」


何度もうりうりしていると、ぴくり、とにゃんこの耳が震えて、ちょいとある一定の場所を見つめる。「カルピーン」遠くから聞こえる声にあわすように、にゃんこは鳴いた。

もう一回、カルピン、と少年の声が聞こえる。また、にゃんこ。
(カルピンって、名前?)
何だか飲み物にしたら美味しそうな名前だ。

「カルピン!」

ちょこっと遠くで、帽子の少年が叫ぶ。にゃんこはスルリと私の手の間から抜けて、その少年の元へと走り去る。……薄情なにゃんこめ。

「まあいっか」

よいしょ、と。いつものように、大通りにでて、ユーシ探しでもしようかな、なんて踵を返そうとしたとき、丁度。

ぱちり

少年と、目が合った。
何だかにゃんこみたいにツンッととがった目に、ちょっとちっさめな身長。帽子の中からポロリと溢れたほんの少し緑混じりな瞳。


ぴーん。
心の中で、何かが、鳴く。

「……まあいっか」

ぺこり、と一回お辞儀をして、私はその場を立ち去った。




  


2007.04.30