うわぁ、超恥ずかしい名前ですね。


第7話  恥ずかしい名前の学校に行く




私はもちろんのこと転校というものを体験する事になった。
何故かというと、新しいおかーさんアンドおとーさんが出来たので、そのお家にお引っ越しする事になり、必然的に学校も変わるって事になった訳だ。(おかーさんが、ガッコはそのままでもいいのよ、といっていたけど、流石にそこまで迷惑はかけられない)

バイバイ、級友どもよ、と手を振りつつ、心の中ではこれでまた「ユーシ」を探すエリアが広がったと喜ぶ私は何だかなぁ、と思った。


取り敢えず、ヘロー! 新しい学校!




(…なんて、意気込みも寂しく)

目の前に立てられた校門。中々でかい。うん、合格。着させられた制服。うん、まぁまぁ。いや、そうじゃなくて。

「………せーしゅん、がくえん、しょとーぶ…?」
何その恥ずかしい名前。しかもちょっと舌がまわんないし。しょとーぶって何だ。初等部だ。

ちなみに駅は青春台というらしい。なんて恐ろしい名前だ。
え? しかも何、初等部があるって事は、中等部もある訳で、もしかしたら高等部もあって、大学まであったり、あったり、……するのかな(何ソレ、学歴は全部青春ですってか)

「ぶふっ」

やべ、女の子らしくない笑い方しちゃった。



それで、問題なんだけ、ど。

くるり、と見渡してみた。木が生えてる。道がある。建物がそびえ立っている。
何がいいたいかというと、そう、お約束の如く、私は、

「まよっちゃったー。キャハ!」
いや笑ってる場合じゃないし。

転校初日。ちなみにおとーさんとおかーさんが付いてこようっていってたけど、私は子どもじゃないのだ(あれ? 今子ども?)大丈夫です。といって、胸を張って意気揚々と来てみたはいいものの。

(あーれー。ここどこー)

学校に、遅刻してはいけないと思って、早めに来たのが裏目に出たらしい。人っ子一人いない校舎で、人に聞きたくても聞くことが出来ない。
……うーん、他の人が登校してくるまで、待っといた方がいいのかな?

(朝練とか……小学校でする訳ないか)

うー、とまた頭を捻って、目を瞑ってみた。「ユーシ」の声を聞こうとして鍛え上げたこの耳。他の人の声を、聞き逃す事のないヘルズイヤー!(悪魔の耳)

「……むー。ぱかーん、ぱかーん、って、きこえる」

何だ、この音は。
ぱかーん、ぱかーん。うむ、どっかで聞いた事のある音だ、と思った。取り敢えず、何かの音がする。の方向を見極める為に、また目を瞑る。

(初等部、からじゃないな)
初等部の隣に見える、中等部の建物。
多分、あそこからだ、と思った。

「となりには、人がいるのかー」

でも、校舎は緑色で、ちょこっと錆びたフェンスで、ガシャン、と道は閉ざされていて。むー、と一回唸ってみる。フェンスに、ガシャンと、手を掛けてみた。うりゃ。力をかけてみる。……揺れない、案外、丈夫。

足を掛けてみた。ガシャン。揺れない。大丈夫。二歩目。ガシャン。
何度も、何度もそれを繰り返してみる。
気づいたら、もう天辺で。

(ビルの上から落ちた時と比べたら、たいしたことないね!)

その上に、ぴしっと立ってみて、勢いよく飛び降りてみる。その時ついでにくるり、と一回転してみた。スタンッと地面に足がつく。うん、10点満点。

「………何をしている」

ぴしっとはった胸の前には、青と白のジャージを着て、眼鏡をした、ちょこっと若めの先生が立っていた。あれ、もしかして、コレヤバイ?

「………しんたいそう」

その瞬間、眼鏡の先生は、くわっと目を怒らせて、額にグワグワと皺が出来た。うわ、すごい。ぶいん。体が宙に浮いた。首が服に圧迫されて苦しい。…あれ、もしかして私、今首根っこ掴まれてる?

先生は、小学生が危ない事をするんじゃない、とふう、とため息をついて、そのままてくてくと歩き出した。え? なにこれ、この格好のまま、初等部の校舎に強制連行ですか。
地面に向かいそうな視線を名一杯、上を向いて、先生に、いった。

「せんせい! くるしい!」

その瞬間、先生の眉間が、恐ろしい事に。
え、何? 私変な事いいましたか。


取り敢えず、それから首根っこは止めて貰って、手を引っ張って貰ったけど、先生はずっと眉間に皺が寄ったままだった。職員室に行ったら、もう何人か先生はいて、その眼鏡の先生は、私をすっと差し出す。その時、

「ああ、ありがとう、手塚君」

と誰かが言っていたので、あの先生は手塚先生というらしい。
む、後でお礼をいわねば、と心の中で、決めたのだった。




  



2007,05,05