担任先生に、お昼休みのお呼び出しをくらった。
せんせい、愛のこくはくってヤツですか。いやん
といったら真面目にぶん殴られた。


第9話  委員会に入ってみる




「……担任先生、ひどい、おんなのこの、あたまを、こんな」
「……女の子だと自覚してるんなら、不用意な発言をするな」

冗談の通じねぇ野郎だ、とチッと舌打ちすると、今度は本気で首を絞められた。ロープロープ! じゃ、なんだ。成績不振ってやつか。この頃調子にとって一桁代を連発しちまったからか、とイスの上に、どっぷりと座りながら(態度が悪いのが小学生ってヤツだからね! いやいや若いていいな!)オラ、さっさといえよ的に、担任先生をチラリと見る。


「うん、、お前、図書委員に入れ」


初っぱなから強制だった。





紙の匂いなんて、久しぶりだ、と思った。事実そうだったし、このシーンとした空気は、何やら自分には合わないらしい。担任先生のバカヤロウ! と叫んでも、空きがある委員会がここにしかないんだ我慢しろ! の一言で、押し負けてしまった。う、うう。暴力だ、言葉の暴力だ!

色々と堪えかねて、「ううー」と小さく呻くと、目の前で、一生懸命図書委員の説明をしてくれていたお姉さん(委員長らしい)が、眼鏡の鼻の部分(なんて名前だっけ?)をくいっと上げた。……すみません、静かにします。しときます、これでいいですか!

「…ですから、図書委員の仕事は、週に一回の図書当番、図書カードチェック、新刊チェック、基本的にはこんなところだけど、色々とケースバイケースだから」
サボらないでね

お姉さんは眼鏡の鼻の部分をくいっと上げて、私を上から見下ろす。……なんだそのポーズ、クラスで流行りでもしたのか。

「いえっさー! さぼりません!」
「返事がいい子に限ってダメなのよね、この委員会」
「いいんちょーキビシイっす!」

まぁいいか、と委員長はふいっと私へ背中を向けて、何だいもう終わりかい、よっしゃ放課後の海へとダイブしてくるぜ!      と、方向転換したときだった。

「これ、よろしく」

くるり、と再びこっちを向いた委員長の手に、ぐわりとつまれた、本の山。彼女曰く、返却済みの本、よろしく、図書室の構造とか、この際覚えちゃってよ。
(ふふふふふふざけんじゃネェエエェエエ!!!)

か弱い中学年に何をさせるかこのおバカ!(委員長は、私はここで本読んどくから、ガンバってね)といった。(ちょ、この図書室、私の母校より広いっつーの!)

「う、うう、、いっきまーす……」
それはもう、ア○ロの如く(アフロじゃないよ!)

よいしょっとぉ! 本を持ち上げてみた。ずしっとした重さが、中々、オウ! 良い紙使ってマスネ! なんて場合じゃなく、微妙に、思い。なんだよ、小学生連中は絵本でも見とけよ、誰だよズッコケシリーズ借りまくったヤツ!(私も昔やったけどな!)

一瞬ふらつく足に、これ別けて持ってったら早いんじゃね? と、頭の中の冷静な部分は、とってもクールに判断してくれたのだが、私の中の情熱的な部分は、いやいや、ここは一片に持ってく事で、委員長に私は試されているんだよ! とホットに判断する。
ちなみに只今ホットが優勢です(でも委員長は手元の本を読むのに一生懸命で、私の事なんて見てないの知ってるけどさ)

「ファイトォー、」

いやでも重い。あれかな、一番上の本の番号札を見て、ファンタジー、よいしょ。二番目、乗り物大百科…乗り物って、さっき移動したばっかだよもうバカン!
(う、もう、いやん)

一歩歩いて、ふらふら、二歩歩いて、ふらふら。
よく酔っぱらいのおじちゃん達が、千鳥足でふらつくのを見つめて、何この足取りバッカみたいーゲラゲラ。なんて考えていた自分を思い出して、申し訳ありません、と土下座をしたい気分になった。今なら頭にネクタイ巻いてあげます。出血大サービス。

なんて、意識を微妙な方向に飛ばしてたのが悪かったのか(うん、多分悪かったんだろうね)

ぼすり、と音と共に、何か柔らかいものに、私の肘が当たった。ついでにいうと、その何か柔らかいものは「うぐっ」とちょっと痛そうな声を上げた。そんでもって、二重被害的に、その声にビックリした私は、手元の本をバラバラバラ! 落ちた本は、その軟らかいものの足下らしき所に見事に落下して、「うっ!」とまた痛そうな声。

痛そうだなぁ、この柔らかいもの。
一瞬意識を遠くに飛ばそうとしてみた。けど失敗した。

ちらり、と様子見。ぷるりとお腹を抱えて、震える黒髪少年。年は恐らく私よりも上だ。

「あ、あのー」

一応声かけ。放置ってのは、あまりにも、気分が悪い。ちなみに彼は未だにブルブル震えている。…よっぽど痛かったんだろう。可愛そうに。っていうかゴメン。
よいしょよいしょと本を集めつつ、彼の様子を見た。

彼はゆっくりと息を吐いて、吸って、そんで、ゆっくりと顔を上げる。
ゆっくりと見えるその瞳は、小学生にしちゃ中々、将来楽しみっぽい      や、なんかギロッていってんな。

「…(ヤベェこの目は殺される)」
人一人ぐらい殺ってそうだ。

「……ねぇ、」
「(しめられるな)」
「………ねぇ、」
「(フクロにされんな)」
「………おい!」
「うへぃ!」

ギロン、と目を光らせて、私を見つめて、彼は、

「……気をつけなよ」

相変わらず目つきは悪かったけれども、まとっている空気事態は、結構とっつきやすい(気がする)。そのまま彼は、散らばっている本数冊をひょいひょいっと取って、そのままくるりと方向転換。

「あの、ごめんなさい!」

聞こえるようにそういったら、彼は一瞬こっちを見た。その目つきは激しく悪かったけど、意外と柔らかい目をしているような気がして。ボケッと座って、委員長が「遅い!」と、私の私の頭にチョップを入れるまで、結構時間が経っている事に気づかなかった。

チョップされた頭をさすりつつ(今日は二回目の叩きだ)、む、と委員長へと質問してみた。

「目つきが悪くて、高学年っぽい人分かりますか」
………なんて微妙な説明

と、思ったのだけれど、委員長は自慢(と思われる)眼鏡をくいっと上げて、「ああ、」と軽く頷いた。なるほど、あの目つきの悪さは有名らしい。

「海堂葉末、五年の子でしょ」

それと一緒に、委員長は、あんまり近づかない方がいい、ともいっていた。
うむ。目つきが悪いだけで、人柄が悪そうには見えなかったんだけど。

そう言えば、ユーシ以外の人の事尋ねたの、初めてかもしんない、と思った。




  


2007.05.17