「海堂くん、今日はいい天気だね!」
「…うん」

こんにちはです、海堂くんにお返事をもらっちゃいました!


第11話  そっくりさん




こんな感じでとことこ海堂くんの隣を闊歩しつつ、校内を探索。ちょいと昔までならギロンと睨まれてさようならだったってのに、この進歩は凄いです、最高です、わんだほー!
うふふ、とルンルン気分でスキップしながら、遠い目線の海堂くん。…うむ、ちょっとごめん。

(さっき海堂くんのクラスにいったら、クラスメートの人たちが「あ、海堂くん、友達が来たよ!」「ほらほらどうぞ!」なんて痛々しい目線を送ってた)(あ、いやでもこれで海堂くんもクラスの人との距離を縮める事ができるんじゃないカナ?)(うふ)

「あ」

そのとき海堂くんの声が聞こえた。むむ? と彼を見て、彼が見ている方へと目線をゴー。よく吹かれた窓がキラリと光りを反射してるのがよく分かる。
もうちょっと目をこらしてみた。ざわざわと音が聞こえてきそうな木の奥に、どどんとそびえるおっきな校舎。中等部だ。その中にぽつんと見える豆粒一個。

「あれ…」

今度は私が声を漏らした。なんか、今の、あれって…(海堂くんに、似てた、かも?)
ねぇねぇ海堂くん、と声を掛けようとしたら、「なんでもない」とぶちぎられ。
どっぺるさんかしら、とか思いつつ、海堂くんの後ろをひょろひょろと付いて歩く私なのでした。








きんこんかんこん、とチャイムを何回か聞いて、よっしゃこれで最後だぜ、と海堂くん一緒に帰ろー! といいたかったトコなのだけど、一学年の差は授業の差、授業の差といえば、終了の時間帯が違うのよベイベー。ああ、4時間で終了なんて夢のよう! とか思ってた頃が懐かしい。(…寂しいよう)(こないだの海堂くんと友達になろう事件で、みんな寄ってこないの)

「ようし」

久しぶりに。ゆーしを探しに行こうかしらと意気込んでみたりする。


まずここら辺の地理を把握しなければと思いついた。ぴっこーんと。ちょろちょろとしたお散歩程度にしか回った事のない私は、人通りの多い場所ってのすら分からない。クラスの子に訊けないし、おかーさん、おとーさんなんてもっての他。「小学生がそんなトコ行っちゃいけません!」…うおおう、想像で怒られちった。

とことことこ。丁度給食の時間残ったパンの事を思い出して、歩いた道に、迷子にならないようにパンでもまこうかしら、とか考えたけど、どっかの小鳥に食べられるか(…カラスかしら)、どっかのお子様に拾われるかで終了だな、と考えて止めた。しょうがないからもふもふ自分で食べてみた。…懐かしい味だよなぁ(最初給食を食べたとき、久しぶり過ぎて涙が出そうになったさ)(うちの中学はお弁当だったんだよ!)(でも牛乳は嫌いだ)

きょろきょろと視線を動かしながら移動してた所為か、足の裏でぎゅむっと何かを踏んづけた。こりこりっとした感触の後に、「ほあら!」と叫ぶ声。思わず「ひえっ」と声を上げて、足を上げて、下を見た。白い何かがふさふさとしている…ってギャア!

「う、うあ、ネコちゃんしっぽふんじゃった!?」
ごめんマジで折れてないよね大丈夫だよね!

必死にネコちゃんのしっぽをさすりさすりとして、ごめんよー、ごめんよー、といっていると、「ほあら」とちっちゃくにゃんこが鳴いた。…あれ、この奇天烈な鳴き方は、

「…かるぴす」
「ほあら」
「あ、ごめん、えーと、かる、かる、かる、カルピン」
だった気がする。

ほあら! ともっかい元気よく鳴いたと思ったら、私が右手へと持っていたコッペパンをふんふん、と鼻でかぎ始めた。…なんだ、欲しいのか、ほらやるぜ!(ネコにパンっていいのか?)
取り敢えずカルピンのお腹を存分に堪能して、今日はキミのご主人来ないね、なんていいつつ、日は暮れていく。

「うっはあ! ゆーし探しだったよばか!」
ついつい魅惑のお腹に翻弄されちゃった! 

もうやだチクショウ! と叫んで、ばいばいネコちゃん。また会う日まで。ほあらー、と鳴く声に、またなグッバイ! といってくれているようで、カルピンの可愛らしい声を背中に私はぐぐっと駆け抜けた(くっ…、気持ちいいお腹だった!)

たとえば、そのとき真っ直ぐ前を向いてなかった事が原因かもしれない。さっきにゃんこを踏んづけたばかりだったから、下ばっかり見てた所為だ。

どすんっと音がして。真っ黒い視界に包まれた私。まさか、人間にぶつかるなんて思いもよらなかったのに(あれ?)
……なんか、海堂くんとの出会いを思い出すな。


「ご、ごめんなさい!」
「…ああ」

思わず上げた顔の先に、真っ黒い学ランを着た人がいて、妙に聞き馴染んだ声の低さ(や、もうちょっと低いかも)に、んむ? ともうちょっと顔を上げてみる。
ギロリ。

思わず絶対零度なその視線に、え? なにこれ、マジで、えーと

「か、海堂くん…」
「…ん?」
(ちょ、返事されたよこれマジで!)

ぐるぐる回る思考に、頭一つ分どころか、それよりもおっきくなった彼に、え、ちょっと待ってよこれ! えーと、えーと、と何度か言葉を濁した後で、取り敢えず背中のランドセルを揺らして、

「お、おっきくなれてよかったね!」

ついでに全力疾走してみた。



取り敢えずお家に帰って深呼吸して、脳に酸素を行き届かせてからもう一回考えてみると、あれは絶対海堂くんの親戚か何かだろ、と改めて自分の馬鹿さ加減に嫌気がさした(…なんなんだ自分)

次の日学校で海堂くんに、海堂くんにそっくりで、おっきい人見たよ、というと、「ああそれ俺のドッペルゲンガー」「マジで!」なんて軽く騙された自分が情けない(あり得ないだろ)

…とにかく、軽いアメリカンジョークを口にするようになった海堂くんに乾杯。やったよ、お母さん、友達の道に一歩近づいた気がするよ。
(……ところでアメリカンジョークの基準っていったいなんだろうね)








  



2007.06.19