ざわっと聞こえる人混みに


第19話  動物ってかわいいねの巻




「うああああー、かーわーいーいー」

ぽっと、思わず頬をそめて、ガラスケースにびたっ。え、なにしてんの? そんなこと訊かれても、「にゃーん」「うあああああ! きゅーん!」
微かに聞こえてくる声に、思わず身を悶えてもそもそっいやだなに、このこかわいい、この白黒にゃんこー!

がんがんがんっ、とケースをぶったたきそうになった所で、はっとした。

「……………わたしは、なにをしてるんだ…………」
(時間差ボケにもほどがあるよ)

はじめは。いつもの如く、ゆーしを探すつもりで、街に繰り出したはずだったのに、気づけばあらら。わんこやらにゃんこやらのわんわんにゃんにゃん、なんて魅惑的な声に、思わずふらふらっと移動してしまった自分の足がなさけない。情けない!! がーっと開いた自動ドアに、即座に駆け込んで、ガラスケースに、びたっと。
…………な、なにを、わたし、は(こんなバカ、他にいないよ)


がーっ
びたっ
「うにゃー、かわいいー!」



あ、いた。






「…………なにを、してるんですか、にゃんこ先輩」
思わず。思わず声をかけてしまった。きらきらっと目を輝かせながら、ケースの中の犬猫に目を向ける先輩を見て、思った。…………ここは無視をするポイントだった。
そんな事を思うのも時既に遅し。耳ざとく私の声を一発で拾い上げたにゃんこ先輩は、ほっぺたにはった白いちっちゃな絆創膏の方向に、くるっと振り向いて、「にゃにゃ?」………にゃにゃって。「えっと、ちゃんだったかにゃ?」だったかにゃって。

取りあえずそうですって頷いておいた。そしたらにゃんこ先輩が、「俺菊丸っていうんだよ」「へぇ面白い名前ですねにゃんこ先輩」「あれスルー?」

なんか色々どうでもよくなってきたので、べたっと私もケースに再び。
くるん、と小さくうごく、子猫がとってもかわいくて、「「かわいー!」」あ、かぶった。
ちらっと、にゃんこ先輩に視線を送ってみると、同じに、にゃんこ先輩も、ちらっ。

「先輩って、にゃんこ、すきそうですよ、ね」
「え、なんでわかったのォ!」
「え、
なんでわからないの

にゃんこ先輩が、「にゃにゃ?」といって首をかしげたので「なんでもにゃにゃ? でごまかせると思うなよ!!」と叫ぼうとしてやめた。うん、ちゃんすっごくえらい。えらすぎる。
にゃんこ先輩は、にこっと笑った。なぁに、と思ったら、「ちゃんってかわいいなぁ。なんか猫みたい」へぇ、ありがとうございます「おチビと似てるね」へぇ、それはききずてならねぇな!

「私の、どこが、リョーマと、にてると!」
「あれ、リョーマって呼んでたっけ。仲良くだったんだね。えらいえらい」
「えへっそれほどでもー! ってちがう! 頭を、なでるんにゃない!(ちょ、興奮しすぎて舌まわんねぇ)」
「どーどーにゃー、どーどーにゃー」
「間ににゃーをはさむな
うざいんじゃにゃー!
「ごらんしんにゃー!」
「むっきー!」


にゃんにゃんわんわん吠えるかわいこちゃん達を尻目ににゃんこ先輩へパンチを繰り出しながら、取りあえずもうテニス部とは一生かかわらねぇ、と心に決めた。


「うわわっ乱暴はよくないようっ」
「だまらっしゃい!」



  


2007.12.14