今日も一枚、紙が入っていた。
第23話 オリキャラ登場! その名も、
ご丁寧にも小さな便せんに意外にも綺麗な文字で、でかでかと。ぶーす! ………ちびならまだしもいうことかいてブスとは。ブスとは! それが色んな意味で禁句ワードだと知らんのかあの銀髪ちみっこ!
どす、どす、どす。歩く足音が妙に響いて、のし、のし、のし!
「ていやんでいべらぼーめ!」
「どうしたのちゃん、恐竜みたい」
下駄箱から真っ直ぐと校門へと向かっていたらしい私の後ろで、気のせいか微妙に嬉しそうな音程で、振り向かなくてもその糸目がニヤニヤしてんだろーなーこのばっか! みたいな気持ちになってくる。「………先輩」 呆れたようなちっちゃな声は、リョーマだ。
ぐるーん! と振り返って、「うるさいなこの細目ー!」
「細目だって、越前」
「先輩のことッスよ」
いつの間にか手の中でぐしゃぐしゃになった便せんを、バタバタ右手で振り回していると、糸目のヤロウが、「なにそれラブレ、」「ちがわい!」 海堂くんとおんなじ事いうな!
ビシッと見せた紙を、んんん? とサイズが違う二人は首を傾げながら、ぽつり。「ちゃん、自虐的な発言はどうかと思うよ」そんな事ないって、よしよし。
「ちがうっつーの!」
ちゃぶだいがっしゃーん!
「下駄箱に! はいって! た!」
それだけいって、ビシッ! と人差し指。ああ、なるほど、と首もとをポリポリと掻いた糸目もとい不二は、隣で未だに首を傾げたままのリョーマに、「陰険な、嫌がらせだよ」と、ぽんと小さく肩を叩く。それで、「ああなるほど」と手を叩いたリョーマがちょっと可愛いなこんちくしょうとか思ったのは秘密だ。
ふうん、と何処か興味なさ気な顔をしたまま、不二は紙をじーっと見て、「心当たりとかは?」 超ある。アイツが犯人って。「違うよ、なんでこんな事するのかって心当たりは?」 んん?
パタパタ。パタパタ。不二が便せんを風にゆらせる音が響いて、ぐるぐると頭の中で考えてみる。鳳柚太。年上。銀髪。ナマイキ。ちび。
『ばーかこのちーび!』なんて毎回のように同じ台詞を言ってくるおーとりの姿しか頭の中でイメージできないし、大体私はアイツに何かした覚えなんてない。それなのに毎日毎日人の下駄箱をあさるだなんて非常識きわまりない行動だ と、おもう。
「………むかつくから、とか?」
「まぁそれもあるかもしれないね」
はい、これ返す。とぽん、と手の中に包まれた便せんを見詰めて、いやいや返されてもいりませんからとかいいたいけれども、ここでコレを不二に渡しても微妙な感じだ。
「先生にちゃんといった?」
「べつに。そんなみょーな事されてないし」
「じゃあいいけど。ちゃんが気になるようなら、一度ハッキリ話し合いした方がいいよ。それくらいの年頃の男の子って、何するか分かんないから。ねぇ越前」
「何で俺にふるんスか」
ぐい、とリョーマは帽子のつばで顔を押しつけて、見えない目で、不二を睨んだ。たぶん。帽子といえば、よくよく見てみると白と青のジャージ姿なままの二人に、「あれ、部活は?」「ああ、越前が、この頃ちゃんが部室に来ないからって無理矢理」「違うでしょ、アンタが無理矢理俺を連れて来たんでしょ」
にーっと口元に笑みを浮かべたまま、不二はリョーマの頭をぐーっと押す。ちょっとやめてくださいよとバタバタと、リョーマが手を振ったその瞬間だった。銀色の、髪の毛が見えたのだ。
ばっしゃーん!
ぽとぽとぽと。地面に丸い滴が黒く写る。つめたい。髪の毛にべとついた感覚がして、流石の不二とリョーマも、目を大きく、見開いて、「ばーかこのちーび!」 頭の中で流れたボイスが、見事にかぶる。
「うわなつかしい、水風船」
「みずふうせん? 何スか、それ」
「あれ越前知らないんだ」
リョーマと不二の間を綺麗に狙って、私にクリティカルさせたその肩は褒めてやろう、ああ褒めてやろう。ぽとぽとぽと。その間にもどんどん地面に染みる滴を見て、ふつふつと、ふつふつと、
「チビが調子こいてんじゃねーよ!」
「このやろふざけんな、おーとりゆずたー!」
多分同時に響いた声に、うおりゃと私は駆けだしたのだった。
「元気だねぇ」
ぽつりと呟いた不二の声に、ふうと小さく越前がため息を投げ返す。「どうしたの、妬いてるの?」 正直返事を返すこともめんどくさい、と思いつつも、越前は違います、と小さく声を上げた。
「先輩が思ってるよーなのとは、違うッスから」
「思ってるようなって」
「妹がいたら、あんな感じかなって思うだけッス」
ああ確かに。右手を顎の下へと持って行き、うんと頷きながら、「なんとなく、ソレ分かるかな」
ちらりとが去っていった方向へと視線をとばした越前を、不二はくっくと声を漏らして、大丈夫だと思うよ、とぽんと小さく肩を叩く。
赤いランドセルを背負ったままの小さな女の子達数人が、「あ、青学レギュラーのひと!」と指をさした。
「さ、帰ろう、手塚がうるさいからね」
本当に、予想もつかない事をする。
「鳳柚太、おもしろいね」
「先輩そんなだから細目っていわれるんスよ」

2008.04.27
|