ああ俺今なんかいわれた。え、なんだって?



03


「だって俺、昨日まで、自分の事、男だと思ってたもん」

するするっとから、なんの違和感もなく、なんつーの? 「今日の晩ご飯は魚だってさ!」っていわれたぐらいの勢いでするするっと。思わず「あ?」といった後に、何コイツバカな事いってんだ。と思ってを見るとほんの少し泣きそうな顔で(や、やっべ)「……嘘じゃ、ねぇよ」

一瞬、何いってんだ、と思った俺の考えを言い当てられたのかとビビッたら、はまた、さっきみたいに、綺麗な綺麗な笑みを浮かべて、「ごめん自分でも何いってるかわかんね」
繋いだ手を、ぎゅ、と力強く握ったのに、するりと抜けて、は俺ににっこり笑って両手を自分の胸もとへと持っていた。

「俺さ、ずっとこれ、変なとこに肉ついてんなー、って思ってた」
「は?」
「むねむね」
「…………」
「亮なんで顔あけーの?」
「……なんでも、ねぇ(一瞬、今朝方の事を思い出したなんていえねぇよ……っ!)」

(つか一瞬反応しかけたっつの)
だから、おまえ、何。とちらりと見ると、は情けなさ気に、へらりと笑って、「オンナって、こんなんついてんだな」とぼそりといった。
お前そんな事もしらねぇの、とまた俺は一瞬いらない事をいいそうになって、取りあえず眉間にぐ、と皺を寄せる事で、妙な事をいわないように自制する。「あのさぁ、」なんだよ「なんつーかさぁ」だからなんだっての。


「亮、さわってみるか?」
そしたら、夢じゃないって、分かるかも


「………お、おれは」        プルルルルルル、ピッ!

『あ、亮悪いけどね、散歩に出たついでに、ちゃんの日用品、買ってきてくれない?』
「………かあさん………」
『お金なら、後で渡すからじゃーね! ぷちっ』


ツー、ツー、となる電子音を耳にして、一瞬意識が遠くなりかけた。母さんの無駄にでっかい声のせいか、はぼそりと「……にちようひん」とだけ呟いて、じっと俺をみる(つか俺、今何いおうとした?)
またにこっと笑って、ポケットにつっこんでいた俺の手をひっぱって、「亮、行こうか」「…お、おお」

ずるりとひっぱられながら、俺さっきまで、こいつと何話してたんだっけ、と一瞬考えた。オンナで、ムネで、なんだっけ?(そしたら、夢じゃないって、分かるかも) 小さく、ほんの少し笑みを曇らせながら呟いた言葉を思い出して、ぎゅ、と唇を噛む。……なんだ、それ。
(なんで俺、こいつにイライラしてんだろ)

「おい、
「……ん?」

きゅ、と力を入れてひっぱってみた。するとは、くるりと振り返ってまたにこり(笑顔の多いヤツだと思う)
コイツってなんだ、と考えて、一、初めて会ったヤツ、二、変な事を言い出す、変なヤツ、三。イトコ。
(……まぁ取りあえず、今のトコ、三でいいんじゃ、ねぇの)(よく、わかんねぇけど)


「……、お前ここら辺しらねぇだろ」
「何が?」
「うっせ。こっちのが近道なんだよ」

ぐいっと、引っ張ってみた。そのままぐるりと反対方向へと進む。小さく後ろで、「亮、はやい」
その声が、ほんの少し、嬉しそうに聞こえたのは、俺の気のせいだろうか(気のせいじゃなかったらいい)
ぐるぐる回る景色と、アスファルトの道に咲く、小さな花が、くすりと笑ったように、揺れたのだ。




「……つか、俺金足りるかな」
「あ、ダイジョーブ! 俺すぐ出てくから、んなたくさんいらねぇし!」
「(……コイツは、まだんな事いうのか)………この、バカイトコ」
「バカって、な、なにがだよ! って、あれ、イトコ?」
「そういう遠慮、反対に気持ちわりぃ」

ばーか、と。もう一回いってやった。


  


2007.10.24