「亮、この制服ありえねぇ!」
スカート超みじけー!
06
ガラガラガラ。いつもならペダルをこいで真っ直ぐ進む自転車は、今日はハンドルを握って、地面に足をつけて歩く。いつも通り空は青くて(別に真っ赤に染まる事もなく)いつも通りびゅんびゅん走る車に(別に空を飛ぶ事もなく)。ただ変わった事といったら、いつも通り「おはよう」と挨拶をかけてくる近所のおばさんのセリフが「あら隣の子、可愛いわね、彼女?」ってセリフが増えたぐらいだった(おおーい)
や、違うんで。と軽く手を振って、隣で愛想笑いか、へらりと笑うソイツを見る。(…聞こえて、ねぇよな)。朝、「なんでこんなスカートってみじけーのありえねーさむい、俺超さむい!」とかいって騒いでたのと大違いだ。「ぱんつみえるー!」「年頃の女がパンツいうな!」「前のガッコの制服でいいっつったのに!」「や、お前それ男子用だろ」
肩より上の、短めな髪の毛は、さらさらとしていてパッチリとした目は、案外かわいい。敢えていうならちょっと、まぁ、小さいよな(敢えてどことはいわない)
うつむきがちに鞄を握って、目を伏せっているソイツを見て、「ああ転校初日で緊張しているんだな」と思いたかった。凄く思いたかった。でもなんだ、暖かい陽気の中でぞわりと背筋に寒気がくる。「……なぁ、亮ぅー」「………なんだよ(嫌な予感)」
「氷帝学園って、イイオトコってやつ、いるのか?」
……………ほれみろ!!
昨夜の晩、俺が延々と彼氏ってのはなんなのか、という事を語ったときの事だ。はコクン、と首を横に倒してでっかい目で俺を見て、「イイオトコが、カレシ、ってヤツになって、それができたら叔母さんが安心して、俺家でれるだろ?」
なんていうかそれ違うくないっていうかもう全体的に違ってない何でそれそんな偏ってんだよその知識!(意味わっかんね!)思わず本能のままに「んな訳ねぇだろ!」「ち、ちがうのか!」「……いや、違うのか?」
なんかもう自分でも何をいってるのか分からなくなってきて、ああああ、と頭を抱えそうになった。っていうか抱えた。自分の部屋の自分の机に、頭をペタン、とはっつけてもう俺どうしようとか思っていたとき、「……違う、のか」 なんか微妙に語尾が震えたのセリフが聞こえた(え、なにコイツ泣きそう!)「………ばあちゃんが、教えてくれたのに、」(ま、マジで!)「お、俺まちがって、」
「違うんだ、イイオトコってヤツは簡単にはいないんだ!」
昨日の俺のセリフを思い返した。もう何をいっていいのか自分でもわからなくなっていたんだな、と思わず何処かあらぬ方向を見つめて、「ふっ」と鼻で自分を笑ってしまう(余談だけど丁度そのタイミングに母さんが部屋に入ってきた)(敢えてその先いわなくてもいいよな?)
取りあえず、隣で「イイオトコいるかな!」と目をランランと輝かせたを見て。「ああそうだ、イイオトコは滅多にいないから、彼氏は簡単に作れないんだ(訳・お願いだから変な事しないでくれよ)」
そっか! 障害があるほど俺燃える! 手をパタパタと振りながら嬉しそうにするを見て、もうなんていうか……なんだろう? 背中の方で、俺の日常って文字が、がらがらと崩れていく音が聞こえた(せめてと同じクラスになりますように…!)
俺のはかない望みはどこかへと消えて、俺は1組、は3組。星の数ほどある氷帝のクラス別けから考えたら奇跡的な気もするが、この微妙な距離に、一体俺はどうしたらいいんだろう、と一人机に頭を抱えた(後で気づいたが、イトコって同じクラスになれねぇじゃん)
風の噂で、二つとなりのクラスの転校生は中々に可愛いが、「イイオトコを探しに来た」といいのけた変態だと聞いた。
(…………なんだろう、俺の崩れた日常が、細かくちぎられて灰になって、ついでに風が吹いてどっかに飛んでいったような気分!)
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2007.11.15