どうやら俺は、色々としでかちしまったらしい。
08
フレンドリーかつ、目的をわかりやすいようにとした自己紹介は、中々に最悪な印象を植え付けてしまったらしい。「お前バッカじゃないかいやちゃんと説明しなかった俺が悪いのかでもなぁもうああもうとにかく駄目なんだよ!」
ぐっ、と拳を握りしめてありえねぇー、と力なく呟いていたイトコに、「イイオトコはこっそり探すもんなんだ!」と再び教えられた。そうなのか。きっと競争率か何かが激しいのかもしれない。
学校二日目が終了し、取りあえず誰か適当に話しかけるべきだろうなぁ、と今俺は女な訳で、女の子に話しかけるかぁ、とごそりと席を立ち、教室の中をぐるりと見渡す。
静かに席に座る女の子へターゲットをロックオンし、のそのそと移動した。
「あー、あのサァきみ」
「へっ!?」
不必要なまでに驚き、手に持った文庫をぱたんと閉じた彼女は、メガネの奥の瞳を白黒させ、なぜだかビクビクと震える小動物のように見えた。「あ、いや、んなびびんないでくれよ」「すすすすすすみません!」
なんだこれは。まるで俺がいじめてるみたいじゃないか。イイオトコにはイイオンナじゃなきゃダメなんだ! と叫ぶ亮の姿を思い出し、イイオンナってどんなんなんだと思いながら、右の拳を唇につけ、にこっと笑ってみた。すごい、俺きもい。
目の前の女の子も同じ感覚を抱いてしまったようで、ふっと目線をそらしながら、額に青すじが入っていることを発見してしまった。ごめん、なんかほんとごめん。
(イイオトコはこっそり探すもの………)
だったら、と俺は彼女の耳へ、こっそりと耳打ちするように、小さく声を吐き出した。
「………きみ、イイオトコ、探してる?」
「え」
「探してる?」
「…………いえ、別に」
「よかった!」
彼女の口元が激しくひきつったのが見えた。なぜだ。どうした。気分でも悪いのか。
とりあえず俺は彼女の返答に安心しながらも、「あのさ、きみから見て、イイオトコってどこにいると思う?」 何故だか泣きそうなほどに顔をゆがめた彼女に、そんなに難しい質問なのだろうかと俺は首をかしげた。
「あの、本気で聞いてます?」
「本気? うん本気」
「…………っ」
「うお!?(何故机にふせる!?)」
「そ、そんなに難しい?」ともう一度首をかしげる前に、彼女はものすごく、微妙な顔つきをして、「…………テニス部、かな」
テニス部!
そんな彼女の声に、ありがとう! と俺は手を握り締めた。ものすごくひいたような目で見られてしまったので、「あ、ごめん」といそいそと自分の席へ戻りつつ、俺の心は、すっかりとテニス部に羽ばたいていたのだった。(テニス部!)
その夜、「お前変なことしてないだろうな」と顔をしかめる亮に、「別になにも。それより聞いてくれよ、イイオトコがいる場所ってのを聞いたんだ。俺テニス部に入部届け出したよ!」 と報告するおれに、「もう嫌です」と小さく体育座りする亮がなんだか可哀想だった。ほんとどうしたのお前。
← ■ →
2009/01/25