学校の授業は親子丼だった。ちっちゃい三つ葉をたくさん並べて、へたくそなりにみんなで頑張って、「おいしいね」と班の子で笑い合ったとき、先生がパチパチ拍手をしながら、口を開いた。


「お家の人にも作ってあげてくださいね。お母さんはきっと喜びますよ」


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「佐助くん佐助くん今日は私がご飯作ってあげるよ」
「ええ、が? 俺様超心配なんだけど」
「今日はね、学校で調理実習があったの」
「そうかなるほど」

それだけの言葉で、佐助くんはうん、と頷いて、手に持ったスーパーの袋の中身をてきぱきと冷蔵庫の中に入れて、「じゃあこれは明日だね」と呟いた。
材料チェックは問題ないし、エプロン装備も万端だ。よしよし佐助くんそこで待っててね! テーブルを指さすと、佐助くんはしゅるしゅると慣れた手つきで自分もエプロンを着けだした。

「佐助くんは待ってってば」
「だめだめ、って包丁の持ち方が危なっかしいもん」
「だって私が作らなきゃ喜んでくれないじゃない」
「俺様一緒に作れて十分嬉しいよ」
「それじゃ駄目なんだってば」
「なんでさ」

おかあさんがはきっとよろこびますよ。そういった先生の言葉を、喉もとあたりにうっと詰まらせて、やばいこれは怒られる、と口元をもごもごさせた後、無言でまな板の前へと立たせてもらった。
なんだっけ、最初は何するんだっけ。包丁を握りしめてじいっと見詰めていると、佐助くんがすかさずまな板の上に、「はいこれ」と鶏肉をのせた。
ひんやりとした鶏肉の感覚を手で味わっていると、「こうやって切るの」と佐助くんが私の肩口上からがばりと覆い被さって、私の手の上から器用にトントントン、とお肉を切る。

「こ、これじゃ意味ないでしょー!?」
「なんでさ。適材適所っていうでしょ。にいきなり一人は無理だって」
「無理じゃないよ、今日みんなと一緒に作ったもん」
「だからみんなと、俺様と作ろうっていってんじゃん」

意外と筋が通っているような言い分に、うっ、と言葉を詰まらせると、「いいじゃん、今日は一緒に作ろうぜ」と押し切られてしまった。
だいたい、私が一人で作ったところで、あんまり美味しくない、ぱさぱさした親子丼が出来る事くらい、分かっていたのだ。
ちくしょうちくしょう、小さな頃から佐助くんに頼らずに、一人でもっと作っていたら、もっと上手になってたろうになぁ、と今更ながらに悔しい気分になってしまう。ちくしょう。

そういうと佐助くんは、「だからさ、俺様が料理上手で、が洗濯上手、片付け上手なんだから丁度いいでしょ、予行練習だよ」とにっこりと笑ったので、
一体何の予行練習だと暫く考えて、「あ、わかった佐助くんがお嫁に行く予行練習だ!」と元気いっぱいに手をあげると、「なんでそこで佐助くんが、なんですか」と額をぺっちりと叩かれてしまった。


「やぁが作ってくれると美味しいなぁ」とどこのお父さんだというような感想に、「私は三つ葉を並べてダシをくるくる混ぜただけですが」といいたい台詞を、必死に飲み込んだ。

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1000のお題 【988 専属料理人、兼〜】
2008.08.10

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