重い鞄を背負って、よっこらしょっ、と道を歩いた。


story04




休みの日だって、部活がある。いつもより、ちょっぴり軽い。けれどもやっぱり重い鞄は、私の肩口にぐいぐいと食い込む。むむ、痛い。けれども後はお家に帰って、洗濯物をとりこんで、と頭の中でスケジュールとトントンと立てていくと、隣で大きな男の人の声がした。

「どどどどどこにいるでござるかー!」

もう半分泣き出しそうな、私よりもずっと背の高い男の人は、長い茶色い髪を、後ろできゅっ、とくくって、バサバサとそれを振り乱している。「ぬぬう、見つからないでござるぅ!」
なんとなく気になって、彼の動きを目で追ってみると、あっちをウロウロ、こっちをウロウロ(………迷子さん?) 多分。や、絶対。

どうしようかなぁ、とじっと見詰めていると、とうとう男の人が、足をすべらせてしまったらしく、べったりと地面にくっついてしまった。こけるとき、「ぬう!」と叫んでいた言葉がとっても印象的だ。

「………あのう、大丈夫ですか?」

どこかこけて、血でも出ていないか、とハンカチを彼へと差し出すと、ゆるゆると顔を見上げながら、切った口元がとっても痛々しかった。あーあ、と思って佐助くんがしてくれるみたいに、「お兄さんこっちこっち」と近くのベンチまで引きずって、ちょんちょんと唇の端っこをハンカチでつっつく。お水があればいいんだけれど、残念ながら見つからなかった。

「す、すまぬ! 布が汚れてしまったではないか!」
「え、いや、ハンカチって汚す為にありますし」
「………そうか?」

たぶん。頷くと、そうか、そうかと彼は何度も呟いて「しかし、ぬぬぬ!」と腕を組みながら、顔をこっくんこっくんと動かす。
それよりもお兄さん、誰かを捜してたんじゃないだろうか。

「あのう、お兄さん」
「ぬ、お兄さんとは某のことか」
「はい。誰か探してたんじゃないですか?」
「そうであった!」

突如立ち上がって、「どこにおるのだぁあ!」と語尾を揺らしながら叫ぶ彼は、まるでお母さんを捜してる、大きな子どもみたいだ。くすくすと笑ってしまうと、「何故笑うのだ?」と心底不思議そうに、彼は首を傾げた。なんだかとっても可愛らしい。
いい方はとっても悪いけれど、こんなに騒がしい彼なら、すぐに探し人も見つかるんじゃないだろうか。

お兄さん、一緒に探してあげましょうか、と声を掛けようとしたとき、先に声を掛けられてしまった。「もー、旦那ったらすーぐどっか行っちゃうんだから!」

いつの間にか、茶色い尻尾のお兄さんの後ろに立って、びしん、とチョップを繰り出す彼が見えた。

「あ、佐助くん」

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1000のお題 【323 転んでもただでは起きません】
2008.09.07

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